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気づいたら、OLの格好で宣材写真を撮っていました。

かさむ携帯代の足しにと、母親の友人が経営するスナックでアルバイトをしたことがある。
ワインレッドのベルベットのソファが並んで、こじんまりとした昭和の雰囲気漂うお店だ。
酔ったおじいさんに無理やりキスをせがまれて全力で振り払いトイレで吐き散らかした。
ママからこっぴどく叱られた。

夜のお店といえばそのくらいで、その後の騙され借金地獄の生活でも水商売や風俗がチラつくことなくこれまで生きてきた。

元々水商売にも風俗にも偏見などなかった私だ。過去に携わったという人との関わりもあってか自分自身の「性の大冒険」を経てかなり理解出来るまでに成長してきたと言える。

相手に誘われるがままにアングラな場にいっていたころには、承認欲求を満たすため数をこなせとせっせと。
満たされない何かを感じながら飽きていたそんな時、職業になったらどうだろう。とふと思うのだった。

気づくと、ソープランドのサイトを眺めている。
年齢だけでだいぶ選択肢が狭まってしまっていた事で、これまでなぜこの仕事をしなかったか悔やむ。
そしてそして私は面接のアポをとっていた。

とち狂っている。
そう遠くもない過去の私はだいぶイカれていた。

その道で長く親しまれる店を経営してきた社長さんの話には疑うことの無い真っ当な人の、筋の通った経営学を感じた。
「サービス業はお客様あってこそだから」

「あまりね、考えないことです。深く考えちゃダメ。」

気づくと黒い高級車に揺られて小さな公園でポージングをしていた。

その後は水中に潜っている時みたいなモヤモヤとした音声が頭に響くだけで、確かスケジュール調整が出来たら連絡します。という会話をして店を後にした気がする。
とぼとぼと家路をたどりながらふと店のサイトを開くと、既に私のBioがアップされていた。
 
恐らくフォトショップで私は9頭身になっていた。
顔こそモザイク加工されていたけれど、私じゃないみたいだ。

そして29歳という申し訳ないくらいのサバ読みにすぅーっと冷めていくのを感じた。

サバを読んでは私ではなくなる。
名前も気に食わない。
違う私になっては意味が無いのだと思った。

最後にどうか笑っていただきたい。
こんなバカもいるのだと。

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