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宮沢りえ主演『月』を初日に観た

高校時代から、宮沢りえが僕のナンバー1女優だった。
もちろんヘアヌード写真集『サンタフェ』は、学校を遅刻して、梅田の紀伊國屋に買いに行った。生徒指導室で取り上げられるピンチだったが、能書講釈の限りを尽くして、教室に持ち込んだ。
そうずっとずーっと、僕の一番は宮沢りえだった。
『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)では、東スポ映画祭の主演女優賞を受賞。無理にお願いして参加させてもらった。
だから、芝居も観に行くし、映画『月』も初日に行ってきた。

★ストーリー
17万円の給料で、彼女と暮らし、絵が描け、ハーモニカを吹ける。クラブでとことんまで愚痴り酔いつぶれ、コンビニで立ち食いして談笑する、そんな普通の暮らしを出来ていることの有り難さの分からない若者と、たった5万円に「すごい」と涙で喜べる中年夫婦の物語。とはいっても、その中年夫婦をギリギリ支えているのも、17万円だ。

もっともっと重くて、深い映画だけど、命の尊さと生きる意味が、とても分かりやすく描かれていたのが、17万円だった。

でも、僕には中年夫婦が立ち直りゆく、恋愛映画とも観れた。とても素敵な師弟と名乗る夫婦の話だけど、もう一度観るには…17万円の物語が重すぎる。

★女優
宮沢りえと二階堂ふみ。
宮沢りえは原色の人。二階堂ふみは派生色の人。例えば長澤まさみや広瀬すずは原色で、高畑充希や門脇麦なんかは派生色だと思っている。
二階堂ふみは、芝居の上手い下手だけでなら、宮沢りえとがっぷり四つで芝居をしていた。そら恐ろしい29歳だ。

その宮沢りえは、決して強い女性を演じているわけではない。心も折れて、ギリギリのところで踏ん張っている。
でも、高畑淳子とほんのわずかな場面だけど、スクリーンで並んだときに、そのか弱さと小さな喜びの表現のなかで、高畑淳子を圧倒する迫力があった。
すげぇー。
思わず劇場で声を発してしまった。

オダギリジョーとの夫婦関係では「師匠」と呼ばれているが、その関係性に、素敵な恋物語が潜んでいる。

★長澤まさみ研究
長澤まさみが芝居を志したのは、宮沢りえの助言のおかげだという。
芝居だけなら、長澤は、この役もまた違った個性で演じただろう。宮沢りえにも負けてはいない。そう、だから僕は、ここまで長澤まさみに魅了されているのだ。宮沢りえには、芝居へのストイックさが感じるけど、長澤まさみにはストイックさは良い意味で薄い。いや、僕はないようにさえ感じる。そこは芝居に対して、謙虚なのではないか、と最近は考えている。
とはいえ、こと迫力という点においては、それは年齢やキャリアもあるだろうけど、まだ少し宮沢りえに敵わない気がした。
それほど、宮沢りえの迫力が印象的だった。

★パンフレット


普通に本です。
写真に期待はしない方がいい。
ただ、製作、出演者、この映画に携わった人の覚悟が滲むパンフレットです。
宮沢りえをはじめ出演者のインタビューも長編で、読み応えがすごい。
1300円となかなかお高い設定ですが、買った方がええパンフレットです。

★まとめ
観るべき映画と強く推せるほど、簡単な映画ではない。
例えば似たテーマを扱った長澤まさみ主演『ロストケア』より数倍重い。ロストケアはそれでもエンターテインメント映画だったけど、この『月』はドキュメント的側面がある。
観るなら覚悟がいる。

出てくる役者、みんなが素晴らしい。
物語も5万円の夫婦の物語をメインにして観れれば、重さの緩和にはなるけど、これは、僕のような熟練の宮沢りえファン、もしくはオダギリジョーファンでないと無理だと思う。

重い映画こそ映画館で集中して観てほしいけど、これは重いぞ。

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