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芝居『いつぞやは』を観た

夏帆の透き通るようは存在感は、今の演劇界では希少な個性だと思う。
ドラマ『silent』の夏帆は、間違いなくハマり役だったし、何色にも染まる透明ではなく、何色であろうと透明にしてしまうのが、夏帆の他にはない凄さだろう。
そんな透き通る〝生夏帆〟を観たくて、チケットを取った。当初は窪田正孝が主演の予定で、それも楽しみにしていたが、残念ながら休演となって、平原テツが代演となった。

★ストーリー
死を迎える友と、死を見守る友の物語。

★女優
プロローグは何も喋ることなく、夏帆は三角座りをしたまんまだったが、清楚で繊細な舞台芸術のような存在感を発していた。
僕がこれまで見た三角座りで最も美しかった。
演技は夏帆にはもったいないくらい普通の役ではあったが、それを普通に魅せてしまうのが夏帆が夏帆たる所以。
普通、役者って、芝居も存在も我が強いものなのに、それを発しない。
例えば共演した鈴木杏は、ちゃんと我があって、台詞や所作に芝居の痕跡が素人目にも分かる。鈴木杏というオーラが放たれている。
でも夏帆はそうした物を放たない。いや、ないのではなく、まとっている感じがある。
『海街diary』の綾瀬はるか、長澤まさみ、広瀬すずや、『silent』の川口春奈とも、全く違う雰囲気で存在感を示していたが、生夏帆も、やはりそうだった。

★長澤まさみ研究
夏帆 今32歳。
長澤まさみは本格的に舞台に取組はじめて、『キャバレー』(2017)、『メタルマクベス』(2018)と3年連続の出演となる『神の子』(2019)の歳。
神の子は残念ながら、チケットを取れなかったが、もう化けちゃったあとで、長澤まさみという強烈な存在感は、舞台上でも目が眩むほどのオーラを放つが、ただ近年、舞台に限らず、映像の芝居でも、その強弱を自在に操れるようになった。
それは舞台での経験が生きているのではないだろうか。

★まとめ
これまで観てきた芝居で、テーマも演出も最も普通だったように感じる。非日常を楽しむのではなく、誰の日常のなかにもある現実を、軽くも重くもなく、普通に観れた。その普通のなかでも、特別、夏帆が普通だったことが、やっぱり凄い。
主演は代演となった平原テツ。上手い。芝居は窪田正孝より上手いのかもしれない。
でも、それこそ放つものが薄かった。
夏帆は三角座りすらが舞台芸術になるのだから、存在で惹きつけるというのは特別なものなのだろう。
そこに窪田正孝がいれば…芝居だけではなく、存在に目を奪われたのだと思う。
それが〝スター〟の証なのだ。

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