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民主的な決め方は過酷だよね、という話

こんにちは。とあるデジタルエージェンシーのディレクターをしています。

昨今〇〇を民主化する、という言い回しで訴求するビジョンなどを目にする事が多くなって久しいですが、民主化してますか?

突然民主化されてますか?とか言われてもワケワカメだと思いますが、私はこの民主化っていうのがどうもバズワードっぽい感じに使われることがあってちょっと危ないなーと感じています。

特に政治思想とかイデオロギー的な話を言及したいわけではないのと、自分がそういったところにこだわりがあるかというと違うのですが、最近特にとても違和感を感じることがあるのは事実です。

あれ、意見あわなくない?

とある会議でこんなことがありました。
基本戦略はあるので、今後伸ばしていきたい方向性をそれぞれのチームで出し合おう、というテーマで各チームのリードが今後数年で進んでいきたい方向性を持ち寄ったのですが、蓋を開けてみると、基幹事業は全員一致するものの、見事にそれぞれが伸ばしていきたいベクトルが違うのでした。

これは根幹の戦略自体をある意味民主的に考えるきっかけになるわけなのですが、やっぱり人の考えってそれぞれ個の思いが環境や状況でその時々で違うし、変化していくものなので、とても不安定なんですよね。

様々な意見をテーブルにあげて、相対的に多数決で決める。これはある意味少数派の意見は切り捨てる事を意味します。
一方で多数派が多数たる所以といえば全部の意見の中だったら比較的こっちのがマシか、という自分の意見が強くない人が、強い意思を持つ意見の中で倫理的な観点だったり、その時代の価値観や合理性を鑑みた結果として一票を投じるわけなのですが、要するに腹の底からやりたいと思える事に票を投じられるのって、かなり自分の強い意志のものにしか無理なので、最後の合議タイミングで必ず折れる人がいるということになることが大半です。

こっちのが効率いいか、となる

そのような消極的合意をする人が取る行動といえばなにか。
おそらく徐々にそこから離れていくか、虎視眈々と時代の流れが変わるのを待つか、根回しして賛成票を集めていくか、といった行動に出る事になります。
ただこれはよっぽど強い意志を持っている人に限ります。
大半の人は、ま、いっか、しばらくこの方針に従ってみるか、となって、いつしか自分の意思を掲げる事をやめてしまう人たちが一般的です。
年齢を重ねると対抗していくエネルギーも落ちていくので、もう何も言わず従うスタンスを自動的に取ったり、それでもまだ元気が残ってる人は心機一転環境を変え、部署や会社、属している組織を辞めて別の生きやすい場所に移るでしょう。
結果残っていくのは強い意見に従うことがこの環境でやってくのには省エネだよね、という人たちや、心底賛同している人たちが残っていくのでアイディアも当然その範疇の中で出し合うことになり、無難に収まっていく流れができます。たとえ敗れた案が最もイノベーティブでそのチームを違う次元に連れていってくれるものだったとしても。

民主的にやるにはやはりビジョンって大事。あれ最近はパーパスだっけ。

民主的にやっていくのというのはこういうことになるので、より進歩した民主化というのはもうあんまり束の意見をまとめようとするとこはやめて、小さくても同じ思いの人たちでチームを作って好きなようにやるとこなのかなという一方で、この少数の形は大きく物事を動かしにくいジレンマがあるんだよなと思うわけです。

そんな時に必要なのはやっぱりわかりやすく賛同させるための組織のビジョンなんだよな、と思うのです。最近ビジョンっていうよりパーパスっていうように取り上げられることが多いですかね。

パーパスとはその組織体の『存在意義』ですが、これって意外と語られていないことが多くて、おそらくあるのは老舗の企業か情熱にあふれているスタートアップ企業かのどちらかだと思いまして、一般的な中小企業や業態が安定してきている中堅企業などはすごく薄い価値観だと思います。そのくらいの企業のタイミングでの組織感覚は、こういったパーパスなどを考えるのは、ちょっと気恥ずかしいのではないでしょうか。

パーパスを組織のミッションに組み込むには改革型と保全型の2種類がある

この記事の中で紹介されているのが、株式会社BIOTOPE代表の佐宗氏のアイディアで、企業の『存在意義』として定義づけられるパーパスを体現するためのミッションに組み込むには2つの方向性があるということが参考になるとしています。
一つは『こうあるべき』を提唱する社会改革型。
攻めの姿勢の若いスタートアップ企業に多い。
そしてもう一つが『こうあり続けるべき』を提唱する文化創造や保全を追求する形で、伝統やスタイルを守る老舗系の大手企業に多い方向性です。
そして中堅の企業にはその中でももう一度ブーストかけて前者で行くのか、いやいやそろそろ成熟期なので後者で行くのかと決めるタイミングが来ます。
企業は全て最初はスタートアップだったのです。
最初は社会改革的なモチベーションで起業をした経営者も多いでしょう。それが徐々に成熟し、企業として大人になってくる頃には自分たちが最初に社会貢献できた事業を軸に考えるわけですから、その文化を作り続けて行くことや守る思想になることは何ら不思議ではありません。

民主的に決めるのにはしっかりしたパーパスの共有・共感が必要だけど多分コアな部分では合わない。

はい、話を戻しました。
冒頭の意見が「あれ、なんか合わないな」っていう話なのですが、これまでの話を振り返るとパーパスが大事であり、それをメンバー全員で理解すること、そして共感できるようになっていないと、おそらくどこかで微妙なズレが生じて辛いことになるのですが、実は人間がそれぞれに考えがある以上、根っこの部分でピッタリ考えることが一緒ってほぼほぼ難しいんだろうなと思っています。なので結果としてはその微妙なズレを許せる、寛容であることが大事なんだろうなと。全員が寛容な心を持っていれば民主的な決め事もある程度うまく行くのだろうと思いつつ、割り切るといった気持ちの方が正しいんだろうな。

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