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元バイトが立て直し戦略を本気で考えてみた(前編)#markething trace

しがないマーケターのtaigaです!
僕は好きな企業やサービスの勝手にマーケティングトレースの題材にして、僕なりにマーケティング戦略を考えて書いています。

マーケティングトレースとはなんぞや?と言う人は下の記事をご覧ください。簡単にいうとマーケティング思考力を鍛えるトレーニングです。

いきなりステーキを選んだ理由

記念すべき第1回目は大手外食チェーンのいきなりステーキさん(株式会社ペッパーフードサービス)をマーケティングトレースしていこうと思います。
「え?なんでいきなり経営傾いてる企業やるの?」「もっとイケイケなベンチャー企業あるでしょ!」と思う人もいると思います。その通りですw

僕自身もSaaS系の企業で働いているので、全く外食には詳しくありません。でも僕が知る中でこんなにも急成長、急降下をしている企業はいきなりステーキさんしかない。そして経営が傾いている企業こそ、なぜ上手くいかなくなったのか分析することで多くの学びがあるはず。と言うことで今回いきなりステーキさんを題材にしようと思います。

そしてもう一ついきなりステーキさんを題材にする理由があります。それは昔僕がバイトをした経験があり、内情もある程度しっている。なのでかなり深ぼって話すことができるのではないかというシンプルな理由。(むしろこっちの方が本当の理由・・w)

では早速やっていこう!

いきなりステーキさんの基本情報

〜会社概要〜
まずは簡単にいきなりステーキさんの基本情報をまとめてみる。

会社名:株式会社ペッパーフードサービス
業界:外食(レストランチェーン)
代表取締役:一瀬 邦夫
ビジョン・理念:お客さんの笑顔、お取引先の笑顔、皆が喜ぶ私の仕事地域社会も豊にします。
売上高:184億6300万(2020年12月期第二四半期決算)
営業利益:▲25億2000万(2020年12月期第二四半期決算)
会社概要はこちら   IR資料はこちら

※営業利益=売上高から営業するにあたってかかったコスト(人件費や広告宣伝費など)を引いたもの。=どのくらい儲かっているか!

いきなりステーキを運営するのは、株式会社ペッパーフードサービス。外食レストランチェーンの中でも肉に特化して今まで事業を広めてきた。ペッパーフードサービスは大きく分けて3つの事業があった。

・いきなりステーキ事業
・ペッパーランチ事業
・その他レストラン事業

ここでは詳しく触れないが、いきなりステーキ以外でも複数の事業を行っている。その中で、いきなりステーキとペッパーランチは二大事業と言っても良い。ペッパーランチについてはこちらをご覧ください。

2013年から始まったいきなりステーキは、立ち食いでクオリティーが高いステーキが食べられるという斬新なスタイルで、外食業界に話題を呼んだ。

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※Twitter抜粋(小池百合子さんがいきなりステーキを食べている写真)

ちなみに僕がバイトをしていた時は、2016年頃。いきなりステーキがちょうど100店舗くらいで一番勢いがあった時だ。当時はひっきりなしにお客さんが入ってきていたのを今でも覚えている。時給が以上に高かったので辞めなかったが、いつも「やめたい」と思って働いていた。それだけ忙しかったので、売上がメキメキ上がっていることはバイトでもわかった。

〜店舗数拡大による売上低迷〜

では現状はどうか。知っている方も多いと思うが改めて見てみよう。

IR資料を僕もあまり詳しく見れるわけではない。ただ概要見るだけで、いきなりステーキがかなりやばいことがわかる。売上高が150億を超えているのに25億円赤字を出しているということは、言ってしまえば営業したら赤字が出る。飲食店でいうと最悪な状態にある。

後ほど低迷した原因を深ぼっていければと思うが、一番の原因とされているのが、急激な店舗数の増加だ。すごい時は、一年間で100店舗以上も増やすこともあった。そのおかげで近隣の店舗のお客さんがバッティングし、店舗同士でお客さんの取り合いをしたことが大きな原因とされている。

去年は約500店舗中103店舗の閉店を決意。さらにコロナの影響で、営業自粛を余儀なくされ、閉店店舗以外でも休業する店舗が相継いだ。

「もっと店舗を減らさないと!」となって店舗数を減らそうとしたが、今度は「店舗を潰すお金がない!」。ということで、9月に売上が安定していたペッパーランチの事業を売って今はなんとか会社を維持している状態と言っていいだろう。(正式には子会社を作り、ペッパーランチ事業だけを子会社でやるという名目にし、子会社ごと売却した)

つまりいきなりステーキはコロナが来る前から経営不振は続いてた。そこにコロナが追い風となって押し寄せ、経営状態はさらに難航しているというのが現状だ。

PEST分析

現状をなんとなく把握してもらったところで、どんな外部環境がいきなりステーキに影響を与えているか分析していく。

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〜PEST分析からの考察〜

なんと言っても飲食業界に大きく影響を与えたのはコロナだろう。コロナにより、外食業界は大きな変化が必要とされている。その一つがテイクアウトなどの非接触方の提供スタイルだ。幸いな事に、Uber-eatsなどのフードデリバリーサービスが普及した事で多くの飲食店が多様な提供スタイルを展開できるようになった。フードデリバリーサービスの普及は外食業界にとって神の手と言っていいだろう。

それだけではなく、年々アメリカや中国の肉の関税は安くなっている。この影響で競合他社も増えていることは間違いない。しかしいきなりステーキとしても関税が安くなったことはプラスと考えてよい。

コロナの影響は甚大ではあるが、競合増えている=まだ市場として価値があるということ。いきなりステーキはまだチャンスが残されていると言っていいだろう。

3C分析

次にいきなりステーキが提供するサービス価値を明確にするために、3C分析でまとめてみる。

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先に書いておくが、これは以前のいきなりステーキの強みである。現在は自社の強みであった立ち食いスタイルや定量カットをやめている。またターゲットも地方などの出店により、迷走しているように見える。

以前のいきなりステーキの強みは、なんと言っても回転率の速さだ。ステーキといえば高級な店で、座って食べるのが一般的だった。そのため回転率は意識せず、顧客単価は高くすることが重要とされていた。

これを裏切ったのが、いきなりステーキだった。回転率をあげることで原価の高いステーキを格安で提供したのだ。

なぜそこまでいきなりステーキにとって、回転率が重要なのかという話をもう少ししよう。一つは、店舗が狭いからだ。当時は都心の駅前に店舗を出店するために、店内を一般的な店に比べて狭く作った。そのため回転率が悪いと単純に売り上げを伸ばすことはできない仕組みになっている。そこでいきなりステーキは立ち食い席やカウンター席のみで店舗を作った。レストランのようなくつろげるスペースをあえて作らないことで、「食べる」という本来の目的に顧客を集中させたのだ。

もう一つの要因は原価率が高いからだ。当時は原価率60%とうたっていたが、実際は40〜50%くらいだった。ただ、40%でも一般的な飲食店よりも原価率は高い。(飲食店の平均原価率は30%)1人あたりの利益率は低いので、回転率が悪くなると利益は米粒くらいしか残らないのだ。

この二つの理由からいきなりステーキのビジネスにおいて、回転率はもっとも重要な指標になる。

この回転率重視のスタイルと価格設定は「ご褒美に美味しいステーキを食べたい」ではなく、「お腹いっぱいにステーキを食べたい」という新たな顧客を産んだ。今までステーキではターゲティングできなかった層にリーチできたのだ。

実際にバイトをしていると20代〜50代くらいの人々は、このちょうどいい価格帯に満足していたように思える。高級すぎず、安すぎず、お腹いっぱいにステーキを食べれる。これは明らかにいきなりステーキが新たに開拓した市場だった。

STP分析

3C分析でなんとなくいきなりステーキの立ち位置はわかったと思うが、改めてSTP分析で基本的な戦略をまとめてみる

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他社と比較したポジショニングマップで見るとこんな感じになる。
(高級価格帯に食べに行かないので、よい比較対象があまり思いつかなかった)

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比較対象が悪いのはさておき、いきなりステーキの強みであった滞在時間(回転率)と価格の2軸のマトリックスで分けてみた。

「やっぱりステーキ」「ステーキやるじゃん」など最近売上を伸ばしている店舗は軒並み回転率重視型だ。新たな市場を開拓したいきなりステーキだったが今では、自分たちで開拓した市場を競合に取られている。ただ逆をいえばまだまだこの市場にニーズはあるのかもしれない。

考えてみると「お腹いっぱいステーキを食べたい人」は「美味しいステーキを食べたい人」に比べて圧倒的に来店頻度が高い。つまり、ステーキなのにリピートする顧客を作りやすいということだ。

ステーキを食べに行こうとなると、誕生日や何かの記念日など特別な日に食べに行くことが一般的だった。しかしいきなりステーキは早くから自社のアプリつくり、会員特典を充実させることで、ステーキをリピートさせるという戦略をとった。ちょうどライザップなどのダイエットブームと合間ってこの戦略は大成功。週に2回、3回と来るお客さんは僕の店だけでも数えられないほどいた。

ここまで読み解くといきなりステーキが流行した理由がよくわかる。逆にいうと崩壊している理由もよくわかる。「今回転率とか、ターゲットとか意識してなくない?」とみんなが言いたくなる。

崩壊している原因の一つは、生命線であった回転率とターゲットを意識することなく、地方に大型店舗を続々と出店。地方では手が出し辛い値段から、リピーター作りにも失敗。家族用に設置した座り席は逆に回転率を悪くした。間違いなくこれだろう。

自分たちの強みを尽く潰してしまったのだ。一ノ瀬さんがマーケティングトレースやって、自社の強みがわかっていたらこんなことはなかったのかもw

長くなってしまったので、この続きは次回に書こうと思う。次回の構成はこんな感じ!次回もお楽しみに♪

「元バイトが立て直し戦略を本気で考えてみた(後編)」

・どのようなマーケティングミックスを構成しているのか。
・いきなりステーキが崩壊したもう一つの理由
・僕がCMOになったら
・まとめ


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