文字列to視野

昨日の読本、クリスマスの恋人にもらった池澤夏樹『スティル・ライフ』のち、積まれてあった中上健次『岬』。

岬、でてくるひとでてくるひと生命体をつくりだす穴としての女/生命をつくりだすもととなる精子としての男への憎悪を持っており、しんどい。わたしだって生まれさせることへの恐れを抱いてはいるがじぶんに向けたものだからなんてことないです、じぶんが死んだら終わること。増殖させず減退させず平行線上の死を待てばよいこと。

しかし憎しみは他人〈ヒト〉に向かっていて、自分〈おれ〉の平常心をむしばみながら思い通りになるまで増殖しつづけ。もちろんそんなかんたんに思い通りにならんから平常心をなくしたあげく狂ったおれはヒトを殺めねば終わらんこともあり、しんどい、しんどいなあ。

けれど文字列として表現されているそれは「在る」感情なのですよ。フィクションではないのですよ、だれひとり感じたことのない感情は文字列にされないのだから。

嫌あなきぶんになるからと本を閉じるのは楽、けど視ようと視まいとそこに在る感情。在ることを知りながら中身をひらかないことは、視野からの仲間はずれではないですか。

わたし、平和ぼけの日、やさしい日に、なにひとつ仲間はずれにしたくないと思います。

なにひとつ仲間はずれにしたくないんならなにひとつ目を逸らすなよ。やさしいものだけ視ようとするなよ。そうして直視をつづければ滅入ってくるこのひよわな神経をきたえようとなお送りつづける文字列to視野



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