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5分で分かる9つのキャリア理論

キャリアコンサルタントの試験でも大事になってくる、キャリアの理論。みなさんはどのくらいご存知でしょうか。

私が所属する大学のゼミでも、キャリア理論の論文をよく読むのですが、それぞれの理論の特徴を完結に答えられる人は少ないのではと感じています。

そこで、今回は「5分で分かる」というチャレンジングなタイトルで、それぞれの理論のエッセンスを凝縮。みなさんに分かりやすくお伝えしたいと思います。

(ちょっと盛りすぎたかもしれません、10分かかったらごめんなさい笑)

1. ドナルド・スーパー

キャリア理論家 (1)

キャリアの理論家で最も影響力があるのは誰かと聞かれた場合、スーパーを挙げればまず間違いないでしょう。最重要の理論家です。

スーパーのすごいところは、これまで「静的」に見られていたキャリアの見方を「動的」に変えたところにあります。

どういうことかと言うと、スーパー以前のキャリア論はある一時点における人と仕事のマッチングを考えることに終始していました。そこへ「キャリアは一生かけて発達し変化し続けるものだ」という視点を持ち込んだのです。

現代では多くの人が「キャリア=人生」と考えていますが、これもスーパーの考え方が基盤になっていると言っていいでしょう。スーパーの代表的な理論モデルであるライフキャリア・レインボーを見れば、人生が様々な役割の連続であることが理解できます。

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2. ジョン・ホランド

キャリア理論家 (5)

ホランドは、より良い職業選択とは何かを探究した理論家です。

その結果行き着いたのが「人と環境のフィット」(P – E fit)という考え方。人にはそれぞれ性格があり、職場環境にもそれぞれ性格があるのだから、その性格が合うようにすれば、良い職業選択ができるということです。

ここまでは誰でも思いつきそうなことですが、すごいのはここから。ホランドは心理学をベースに人を6つの性格に分類し、そのうちの上位3つで個人の職業興味が理解できるようにしました。

一方それぞれの仕事が持つ性質も人と同じ6つの性格に分類可能なので、「私」に合った「仕事」が見つけやすくなるのです。

3. マーク・サビカス

キャリア理論家 (2)

サビカスは、21世紀に入って大きな注目を集めている理論家で、個人的にも最も好みの理論家であります。

スーパー(1.で説明)の時代からキャリアには自己概念やアイデンティティの深い理解が必要だ、と言われてきましたが、ではどうすれば自分自身について深い理解ができるのかという問いに確かな答えを与えてくれる理論家は見当たりませんでした。

そんな中、サビカスのキャリア構築理論は5つの質問に基づくキャリア・カウンセリングで悩める人の人生の方向性を明確にするための方法論を確立しました。

4. ハリィ・ジェラット

キャリア理論家 (7)

ジェラットと、この後紹介するクランボルツは、研究を進めていく過程で大きく方向性を変えているため、前期理論と後期理論が存在しますが、どちらもキャリア論として重要なため理解しておいて損はないでしょう。

ジェラットの前期理論(連続的意思決定プロセス)は、人がたくさんの情報を収集して合理的な意思決定を行うための枠組みを示しました。日本のキャリア教育では、意思決定の方法や仕組みについて教えてもらう機会はほぼありませんが、アメリカではそういったガイダンスが行われています。

ジェラットの後期理論(積極的不確実性)では、前期理論のような「完全に合理的な意思決定」に疑問を投げかけ、主観的で直感的な要素をキャリア選択に取り入れていく必要性を示唆しています。

5. ジョン・クランボルツ

キャリア理論家 (4)

心理学の世界に大きな影響を与えた理論に、バンデューラの社会学習理論というものがあります。それまでの心理学では、学習とは自分が経験したことで行動を変化させることを言いましたが、社会学習理論では、他者(ロールモデル)を観察することでも人は学習するということを明らかにしました。

クランボルツの前期理論は、このバンデューラの理論をキャリア・カウンセリングに応用した「キャリア意思決定における社会学習理論」です。

一方、クランボルツの後期理論は日本でも有名な計画された偶発性理論というものです。この理論では「未決定」の状態をマイナスに考えず、偶然起きた出来事を積極的に活用することでキャリアを成功に導くという視点が重視されます。

6. エドガー・シャイン

キャリア理論家 (9)

シャインは、経営学の分野でも注目を集める学者ですが、キャリア論として重要なのはキャリア・アンカーという考え方です。

転職を繰り返す人であっても、自分のキャリアに何か拠り所があるのではないか。それは何かを調べ、8つのキャリア・アンカーを特定しました。アンカーとは船のいかりのことで、それによって船が流されるのを防いでくれます。

7. ダグラス・ホール

キャリア理論家 (6)

ホールは、組織が主導するキャリア形成の終焉をいち早く察知し、個人が主導するキャリア形成への移行を示しました。

変化し続ける環境の中で自分の欲求を実現できるように、その都度方向転換をしながら変幻自在にキャリアを形成していくことを、ホールはプロティアン・キャリアと呼びます。

プロティアン・キャリアの実現には、自分らしさを保つこと(アイデンティティ)と変化に柔軟に対応すること(アダプタビリティ)の双方が重要です。

8. ナンシィ・シュロスバーグ

キャリア理論家 (8)

シュロスバーグは転機の理論家として有名です。一般的に、キャリア・カウンセリングが行われるときは、就職活動や転職活動など人生上重要な転機であることが多いですが、この転機を上手く乗り越えるための方法を示したのが、シュロスバーグになります。

具体的には4つのSと呼ばれるSituation(状況)、Self(自己)、Support(周囲の援助)、Strategies(戦略)を資源として、足りないところを補うことで転機を乗り越えることが可能になります。

9. サニィ・ハンセン

キャリア理論家 (3)

ハンセンは統合的人生設計(Integrative Life Planning)という理論を発表して、個人の充足と社会の向上が結びついた意味のあるキャリアを開発していくことを提唱しています。

統合的とは、仕事だけの人生ではなく、仕事(Labor)、学習(Learning)、余暇(Leisure)、愛(Love)という4つのLのバランスが取れた人生のことを意味しています。


10. おわりに

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

ここで紹介したことは、キャリア理論の濃厚なエッセンスですが、ほんの一部分でしかありません。この文章を読んで興味を持っていただいたら、ぜひさまざまな本を読んで学びを深めてみてください。

また、さらに詳しい解説記事や勉強会、おすすめ本の紹介などもできますので、これを読んでもっと知りたくなった部分があれば、チャットやSNSでぜひコメントください!

みなさまがキャリア理論への興味を深める一助になれたのであれば、幸いです。

参考資料
宮城まり子(2002)『キャリアカウンセリング』
渡辺三枝子(編)(2018)『新版 キャリアの心理学【第2版】』

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