セカンドハーフ通信 第2話 会社を辞めて思うこと

第2話 会社を辞めて思うこと

60歳を前に、勤めていた会社を退職した。今後のことを考えたいという気持ちがどんどん強くなり、今までのルーチンをやめて、一度立ち止まる必要があった。同僚たちからは「なぜ?」という反応が多かったが、自分ではこうしなければならないと思った。

グローバル企業のビジネスマンとしての生活は、次から次へとものすごいスピードでものごとが進み、私にゆっくり考える余裕を与えてくれなかった。大学を卒業してからの36年間、ほとんど休まずに働いてきた。つねに目前の課題を解決すべく働き続けてきた。

会社を辞めることは父のこともきっかけになった。老人ホームで暮らしている父は、日々自分の体の不調と格闘している。年をとると、どんどんと自分の思い通りにならないことが増えてくる。会うたびに、体の不調に対する嘆きや思い通りにいかない周囲への不満ばかりがでてくる。かつての溌剌とした父の面影はなく、完全に弱者の立場になっていた。

私が幼いころ、父は絶対の存在だった。家でもえばっていたし、仕事でも主義主張の強い人だったように思う。その父が、体調について弱音を吐いたり、日々のことで弱弱しい態度をみせるのを、同じ人物としてその変わり様に驚くばかりだ。

人生ははかないといわれるが、そのことを目の当たりにしたように思う。確かに強者はあっという間に弱者に変わる。そして老いや病気はいつの間にかやってくる。やりたいことがあるなら、できるうちにやらなくてはいけないと思った。将来に先延ばしにせず、一瞬一瞬を大事に生きることがいかに大切なことか。

では自分は何をしたいのか?これからの後半人生をじっくり考えて一歩踏み出したいと思う。会社を去って1ヶ月、今はまだ明確な路線がみえてこない。

一方、考える時間を持つことで、過去、その場その場の状況対応に奔走していた自分とはあきらかに異なる自分がいる。いまも働いている仲間を見て、少し路線から外れてしまったような焦りと、これでよかったという想いがない交ぜな日々をすごしている。

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