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【戦う相手が違う】インディペンデントとメジャーが両輪だという証明

インディペンデントはいま、メジャーを支える時代だ。このトピックでは、「業界を俯瞰して自立する方法」を、知ることができる。不安を怒りに転化して生きる虚しさに気付いた大人なアーティストの、ために書く。

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『 大人なアーティストの時代 』

仮想敵を描いて主張を展開するのは古典的な掌握術だが、もう通用しない。それは「コミュニティの進化」がためだ。元々は依存性の高い自律していない人々を囲うことがコミュニティ形成のテクニックだったわけだが当然、そのコミュニティの意識は低く、発展は無い。

だが現在、広義でのインフルエンサーを核とした小規模のクラスターを統合する形の、「自立型コミュニティ」が力を発揮している。マーケティングをリードし、規範を示しているのも企業ではなく、“強いコミュニティ”だ。

現代は、メジャーがインディペンデントに学ぶ時代、だといえる。

一方で、インディペンデントの視野は狭く中長期的なビジョンを持たないことから業界維持の資質に欠けており、メジャーといわれる企業によるコングロマリットにとっての被害となっている。だがそもそもに、“業界”の存続価値が問われている、という面もある。

すべてを征しているのはいつの時代にも、“バランス”。
その中心にいるのはいつも、大人なアーティストだ。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:VARIETY誌の共同編集長クラウディア エラー、タランティーノ監督に公開苦言

クエンティン タランティーノ監督は先週、歴史的な単館「VISTA THEATER」を買収して再建を発表。その席でこう発言している。「閉館して当然の映画館もある。“大型チェーンTHEATER”だ。映画の中でずっとコマーシャルを流し照明も落とさずスタジアム席で、プラスチック製のクソみたいなものだ」

VARIETY誌共同編集長のクラウディア エラーが、問う。「本気? タランティーノ。」タランティーノ監督がこのようなメジャー批判の暴言をいつまで続ける気なのか、と言い放つ。

「タランティーノは長い間、映画業界における企業の侵害を批判してきました。特にメジャー規模の劇場やスタジオ、フランチャイズの大ヒット作が、インディーズの劇場や映画製作者のための市場のシェアを食い物にしている、と。インディペンデントや小規模の文化的な価値が繁栄することは非常に重要です。でもなぜそれが、メジャーへの“雷のような攻撃”に? とても厄介だわ」

タランティーノ監督は2019年の映画「ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド」で、メジャースタジオであるSONY Picturesから出資を得て、メジャーチェーンTHEATERで世界公開し、400億円を売り上げている。

「一緒に“映画鑑賞”を祝いましょう。素敵な単館だけじゃなく、映画経済を活性化することに貢献しましょう、大型チェーンTHEATERでもね」  
- JULY 15, 2021 VARIETY -

『 ニュースのよみかた: 』

VARIETY誌のトップがタランティーノ監督に「インディペンデントと同じように、メジャーも大切」と釘を刺した、という記事。

アーティストなタランティーノの無謀さは称賛に値するし、大人なVARIETY誌が世界の頂点に君臨するエンターテインメント情報誌だと納得できる、すてきな応酬だ。

『 メジャーとインディペンデントの存在価値 』

メジャーとインディペンデント、どちらも必要である。
ただし時代に則してその立ち位置と意義は変化し続けてこそであり、膠着したならそれは不均衡だ。1980年代から40年間は完全に「メジャーの時代」であった。現在は、違う。しかし残念ながらまだ「インディペンデントの時代」ではないのだ。まるで不均衡である。

メジャーには、経済的な強さとマーケットを構築する力がある。一方で“安定”に弱く、力業の投資を続けることで持続的な価値観を維持する。それは広告であったりスターの育成であったり、コミュニティへの刺激であったり。しかしすべては“一過性の養分”であり、本質的な価値にはなり得ない。

インディペンデントには、アーティストとファンを紐付けるコミュニティ形成力が在る。一方で経済力に弱く、情熱ばかりの尽力を続けることで持続的な価値観を維持する。それは新作であったり新たな活動であったり、コミュニティとの共闘であったり。しかしすべては“世代依存”であり、永続的な価値にはなり得ない。

『 現在主導は、メジャー? インディペンデント? 』

現代はといえば、メジャーの衰退とインディペンデントの未成長による、“価値の谷”にあると言える。世界一時停止による悪影響だ、などと吹聴するメディアや著名人もいるが、嘘だ。NETFLIXら大手ストリーマーの台頭を加味してもなお逃げ場のない現在の“疲弊”は、コロナ禍の以前から始まっている。

今は、メジャーの衰退期にして、インディペンデントが再起すべきタイミングである。私意や情熱など、まったく関係が無い。これは、周期ごとに繰り返されてきた文化に息づく、方程式である。

『 業界ピラミッドの解像度を上げてみる 』

どんな業界も、誰かが創った。
どんな業界のメジャーにも、生みの親がいる。

すべては、インディペンデントからはじまっている。
インディペンデント無くして業界はなく、インディペンデント無くしてメジャーは存在しない。

証明してみよう。

ピラミッド型の図形を、想像して欲しい。
底辺を支える膨大なインディペンデントが、上部のメジャーを支えている図だ。それこそが一般的な“業界図式”だろう。だが、もっと解像度を上げてみるといい。どんな業界にも共通している、もうひとつのルールがある。

頂点はまた、インディペンデントなのだ。

インディペンデントはメジャーを支え、メジャーは業界を支え、人々を魅了する価値ある存在へと昇華せねばならない。その指揮を執るのは、メジャーを従える精鋭、選ばれしインディペンデントだ。

業界とメジャーを俯瞰する方法はただひとつ、
業界とメジャーから出て、高みに登ることそこは当然、他業界だ。
あなたがインディペンデントなら、その資格がある。

『 編集後記:』

脳ドックを受信する。現代の最高医学による徹底ドックは、大きなプロジェクトを牽引する人間に必須な、準備作業の一環だ。

あぁ、人間なのだ。

人工知能を生む物理学博士と話していると、人間とシステムの違いは曖昧になる。「A.i.に“嘘”をつかれたら、完成かもしれない。シンギュラリティですかね」などと。

シンギュラリティ:科学技術が発達し、現在の理論が通用しなくなる時。特に、人工知能が人間の知的能力を超える時点をいう。技術的特異点。

戦う相手では、ないようだ。

昨日の自分を否定して明日に託す、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

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