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「ドキュメント宇宙飛行士選抜試験」よりーその①【宇宙飛行士になるリスク】

先日、JAXAから新規の宇宙飛行士募集の案内が出たことを機に、宇宙飛行士を目指している人間の一人として、知っているようで知らない、宇宙飛行士について勉強していこうと思う。

その方法の1つとして、以下の「ドキュメント宇宙飛行士選抜試験」という前回2008年の選抜試験について綿密に取材し、丁寧にまとめられた書籍を元にして、宇宙飛行士選抜試験についてnoteでアウトプットを図りたい。
私がこの書籍を読んだのは2年前?とかなので、振り返りとしてもいい!

当然のことだが、このnoteに書いているよりも詳しいことが本書には書いてあるので、宇宙飛行士を目指す人はもちろん、興味がある人は購入して読んでほしい。

”■”や”ー”に続くタイトルはほとんど書籍からの引用だ。

■第一章:選び抜かれた10人の”プロフェッショナル”たち

ー宇宙飛行士募集を待ち続けた963人

2008年2月27日。
JAXAからのある発表が日本中の人たちの心を躍らせた。

なんと、「ISS(International Space Station;国際宇宙ステーション)長期滞在に対応可能な日本人宇宙飛行士の候補者を新規に募集・選抜する」というのだ!!!

宇宙飛行士候補者募集2008

2008年の募集時に使用された実際のポスターⒸJAXA


言わずと知れた、宇宙開発の最先端NASAでは、毎年のように宇宙飛行士の採用試験が行われており、その数は330人(ファンファンJAXAによると、2016年11月時点で、338人とのこと)を超える。
一方でJAXAはというと、25年で5回しか募集を行っておらず、これまでに採用されたのは8人のみだ。(2008年時点)

前回の選抜試験から10年の月日が流れていて、並々ならぬ想いを抱えた人たちが大勢いたことは想像に難くない。
以下が前回の募集時の条件だが、この条件を見て、実際に応募書類を送ってきたのは963人だった(これまでで最多)。

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・応募した人の特徴

*年齢は20代~50代までと幅広く、特に多かったのは30,40代、その割合は全体の7割!
*職種は「会社員」が5割
*著名な研究機関の科学者、ロケット開発を行う技術者、ITベンチャー企業を経営する青年実業家、医師など、様々な環境で第一線として活躍する人たちが集まった
*応募動機も様々だったが、共通していたのは「宇宙に行きたいという幼いころからの夢をあきらめられない者たちだったということ


・963人の中にはこんな人も..

石油精製プラントの設計・開発に従事してきた福山さん。年齢は54歳。
志望動機には、

宇宙飛行士を目指し続けないと、自分が自分でなくなります

とあったという。

福山さんの宇宙への夢も、幼い頃から続いている。子どもの頃に、アポロ11号の月面着陸を見て、
”宇宙から青く輝く地球が見てみたい”と思うようになったそう。

しかし、現実は厳しいもので、学生時代はアメリカとロシアのみが宇宙へ行ける時代だったため、宇宙への夢をしまい技術者の道を選んだ。

転機が訪れたのは28歳のとき。日本で初めて、宇宙飛行士募集のニュースが流れた!
全身が震えるほどの衝撃を受け、選抜試験に挑戦した。
第二次選抜試験まで残ったものの、最終選抜までは進めなかった。

1984年に行われた第一回宇宙飛行士選抜試験では、以下の三名が選ばれた。

・北海道大学の助教授 毛利衛さん
・慶応義塾大学大学病院の医師 向井(内藤)千秋さん
・NASAルイス研究所(現グレン研究所)の研究者 土井隆雄さん


第二次選抜の面接試験終了時、福山さんは、ある一人の女性応募者と一緒に帰っていたのだが、試験がうまくいかなかったた福山さんはついダメかもしれないと、弱音を口に出してしまう。

すると、その女性は満面の笑みで
そんなことは絶対にないよ!一緒に宇宙に行こうよー!
と明るく励ました。

その女性こそ、実際に宇宙飛行士になって宇宙へ行った向井千秋さんだ。

自分の面接試験や二次選抜の結果が気になっていたはずなのに、競争相手を気遣う気持ち、励ます余裕。

その姿勢を見て、こういう人が宇宙へ行くのか、と感じたという。

向井さんの言葉が、その後も宇宙を目指し続ける原動力の一つになり、以降、宇宙飛行士選抜試験のすべてに受験してきた。

(宇宙兄弟に出てくる、福田さんを彷彿とさせる。彼も54歳の技術者で、福山さんと同じく、宇宙飛行士を目指し続け、ムッタと同じく宇宙飛行士選抜試験に挑む)

福山さんのように、人生を宇宙飛行士に捧げる人たちが何百人も集まり(応募資格がないため応募をあきらめた人やタイミングが合わなかった人も含めると1000人は超えるだろう)、その人生を賭け宇宙を目指す挑戦が宇宙飛行士選抜試験だ。

ー大きなリスクを負う覚悟

実際に宇宙飛行士に選ばれると、いくつもの大きすぎるリスクを背負い込むことになる。

人が宇宙へ行くことは当たり前のようになってきたが、それでも常に命を落とす危険と隣り合わせとなる。
1986年のチャレンジャー号の爆発事故、2003年のコロンビア号の空中分解事故。
それぞれ7人、合わせて14人が亡くなった。チャレンジャー号の事故は打ち上げてから73秒後のことであり、彼ら/彼女らは宇宙へ到着する前に還らぬ人となった。

チャレンジャー号爆発事故の様子


キャリア

宇宙飛行士になるには、それまで積み上げてきたキャリアを捨て、JAXA職員として迎えられることになる。
さらに、採用された段階では、あくまで「宇宙飛行士候補者」であり、実際に飛行士として認められるには最低でも2年間程度の訓練をする必要がある。その”最低”2年の訓練が終わると、さらに2年ほどの訓練が待っている。
しかし、他にも宇宙飛行士はいるので、せっかく訓練を終えたとしても宇宙飛行の機会は簡単には巡ってきてくれない。

例:山崎直子さん

山崎直子さんの場合は、「ISS搭乗宇宙飛行士」の候補者となったのが1999年
基礎訓練を終えて、正式に宇宙飛行士に認定されたのが、2年後の2001年。

その後も訓練を続け、地上からの、土井宇宙飛行士のサポートなどを経て、実際に宇宙へ行ったのが2010年だ。
宇宙飛行士の候補者となって実際に宇宙へ行くまで11年もかかっている!!
小学6年生が中学・高校を卒業し、大学も卒業してしまうくらいの年月だ。


生活

日本の宇宙飛行士は、自国で宇宙へ人を送るシステムがまだないため、主にNASAで訓練を受ける。
つまり、自ずと生活の主軸はアメリカになる。
家族も一緒なら、子どもの教育環境も一変する(※)。家を持っていれば、売却する必要もある。パートナーの普段の周りの人とのコミュニケーションも、一気に壁が高くなるだろう。
自分だけでなく、家族の人生も賭けて臨まなければならない。

※海外在住日本人の子どもの英語習得の困難さ(記事では”地獄”と表現されている)については以下の記事がわかりやすい。


収入

上述したように、宇宙飛行士として採用されると、JAXAの一職員として迎えられることになる。(非常に)簡単に言ってしまうと、選抜試験=JAXAの中途採用試験だと、本書では表現されている。

前回の応募時では、給与について

「採用時本給 大卒30歳:約30万円,大卒35歳:約36万円」

となっており、命をかけるほどのリスクがあるにも関わらず、給料は公務員とたいして変わらない。

これは、NASAや諸国の宇宙飛行士も同じようだ。
※2018年の給与表によると、NASA宇宙飛行士の年収は6万3600ドル(約680万円)から9万8317ドル(約1050万)の間
(https://www.businessinsider.jp/post-162458より引用)

宇宙飛行士に応募する人には、医師やパイロットなど、年収が数千万円を超える人も多い。生活が激変することを承知の上での挑戦なのだ。

命、キャリア、生活、収入、それらの人生の要素が賭けられることを承知の上で、
「宇宙へ行きたいか?」その自分への究極の問いにYESと答えられる人だけが、宇宙への切符を手にする。

次回は、そのリスクを知っていてもなお、挑戦する人たちが経験する選抜試験の流れについてまとめていきたい。

<参考>

・ドキュメント-宇宙飛行士選抜試験- 大鐘良一・小原 健右 著


・宇宙飛行士になる勉強法 山崎直子 著


・JAXA HP
https://iss.jaxa.jp/kids/astro/doi.html
https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/173.html

・NASA FAQ
https://www.nasa.gov/centers/kennedy/about/information/astronaut_faq.html

・ビジネスインサイダー 記事
https://www.businessinsider.jp/post-162458


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