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うつ病の治療と仕事が両立しやすかった「兼業主夫」という生き方

僕は、うつ病を発症し5年になります。

現在は専業のwebライターとして働いていますが、一時期、家事・育児のかたわら、お小遣い稼ぎ程度の仕事をこなすといった生活を送っていました。いわゆる、「兼業主夫」という生き方です。

兼業主夫とは?

兼業主夫とは、主に家事・育児をこなしつつ、仕事もしている男性のことです。専業主夫と違い、厳密な定義はありません。また、家事・育児と仕事の比率は人によりまちまちです。

いきなり「兼業主夫」と言われても、その存在や生活をイメージするのは難しいでしょう。というのも、兼業主夫は、日本人男性の人口に占める割合が圧倒的に低いからです。

総務省統計局は、5年ごとに「就業構造基本調査」をおこなっています。平成29年の調査によれば、働いている男性の人口が3,707万人であったのに対し、兼業主夫(働いている男性かつ家事が主な者)の人口は53万人となっています。

働いている男性のうち、家事を中心におこなう人口は約53万人
総務省統計局|平成29年 就業構造基本調査の結果に基づく

「兼業主夫」になってみた体験談

僕は5年前にうつ病を発症し、無職になりました。しばらく自宅で療養し、少しだけ働けるようになってからは、兼業主夫をしていたんです。

当時は、正社員の妻・小学校低学年の娘との3人暮らしで、僕が家事・育児のかたわら在宅ワークをして、妻がフルタイムで働くというスタイルでした。

兼業主夫としての生活

僕の朝は、妻と娘を見送るところから始まります。朝ご飯の仕度と娘の身支度は、ほとんど毎日妻にやってもらっていました。これは、意欲が湧かず朝から動くことができなかったからです。

僕は、妻と娘を送り出してから、ゆっくり時間をかけて朝ご飯の後片付け・洗濯・掃除をします。午前10~11時頃、ようやく頭が働き集中力も続くようになるため、リビングで仕事をするようにしていました。仕事をするのは1日1~3時間。この頃からwebライターの仕事を請け負っていたので、400字詰めの作文用紙1~5枚分の記事を自分の体調に合わせて書いていました。

「仕事をする」とは言っても、1時間くらいで疲れてしまうことも多かったです。そうした場合は休息が必要なタイミングと考え、呼吸法をやってみたり、瞑想をしてみたり、自分の体と気持ちを整えるのに良さそうなことを試行錯誤していました。

午後は、主に散歩や買い物・夕飯の仕度に時間を使います。

僕の場合は、何かにつけて気持ちが落ち込み、憂うつな気分に陥りやすいところがあったので、精神的な調子を整えるために散歩の時間を大事にしていました。例えば、近隣にある大型の都市公園で木々のなかを歩いてみたり、少し遠くのスーパーに徒歩で買物に行ったりと。家事や仕事が中途半端になっても、まずは自分の体調管理を優先できるように生活を工夫していたんです。

そうこうして夕方になると妻・娘が会社や遊びから帰ってくるので、あとは夕飯を食べさせたり片付けたりして、兼業主夫としての主な仕事が終わります。代表的な1日はこんな感じです。

もちろん、日により体調が悪く、1日を通して活動しにくいということも。そんな時には、仕事を休みにしたり、夕飯を惣菜で済ませたりなどして体への負担を減らすようにしていました。

家庭や社会に役割ができることで自信が湧く

兼業主夫が良かったのは、家庭や社会に自分の役割ができるところです。

これまで、夫・父親として一家を支えてきた男性にとって「お世話をしてもらっているだけの生活」というのは、家族に対する申し訳なさや社会からの孤立感を感じやすいものです。そうかと言って積極的に働きに出られるわけではないから、療養しているうちに、家庭や社会のなかで自分の居場所を見失いやすいのかもしれません。

実際に兼業主夫になってみると、家庭や社会に役割ができ、そこに自分の存在する価値を見出しやすかったです。また、家事・育児にしても仕事にしても、できることが増えるから療養している頃よりも自分に自信がつきました。

家事・育児を軸に、治療と仕事を両立していく

家事・育児は、決して楽ではありません。毎日夕飯のメニューを考えたり、家族が快適に暮らせるよう配慮したりなど、アイデアや気配りといったものが求められます。けれども、厳しいノルマや複雑な人間関係がないため、仕事がきっかけでうつ病を発症した人にとってストレスが少なく感じられるでしょう。

「しばらく回復に時間がかかりそう」「だけど生活のために働きたい」というのであれば、自分が中心となって家事・育児をおこない、妻やパートナーの働きを支えていくという生き方もあるのです。

まずは家事・育児を軸にして、体調の回復に合わせて仕事の割合を増やしていく。

そのほうが、いきなりフルタイムで働くよりも、心身の負担を抑えて自分の理想とする働き方を目指していきやすいのではないでしょうか。

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