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途上国の外部工房で思うこと

私がいま夢中になっている、インドの手しごとのひとつが、
ハンドペイント。

その名の通り、完全な手作業で、
キャンバスに絵を描くみたいに、生地にフリーハンドでペイントしていく。(どうしても自分の言葉で伝えたくて、vlogのような動画を作りました)

ハンドペイントは、自社工房でなく、
現地人オーナーのペイント専門工房に、生地を持参して、
オリジナルのデザインと配色で、描いてもらっている。

自社の工房でないということは、
稼働時間や仕事の進め方は、もちろんその工房のオーナーが決めることで、
彼らにとって、わたしたちはお客さん。

基本的に、他のお客さんよりも、私たちは要求がとても多い。
高い品質基準と管理体制、ホウレンソウ、新しい技術へのトライなど、
とにかく、彼らにとっては「めんどくさい」存在になりがちだ。

これまでにネパールでもインドでも、
その要求の高さと、口うるささにうんざりされて、
向こうからオーダーをストップされたことは、何度もある。

でも、私たちは世界に通用するレベルを求めているので、
「これでいいか」「こんなもんか」という妥協は、絶対したくないのだ。

管理のやり方が不十分だったら、一緒によりよい方法を考えるし、
日本から新しいアイデアや技術も、どんどん提案していく。

そんな私たちのことを、「面白い」と思ってくれて、
提案にもポジティブにこたえてくれるような、なによりも、
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という哲学に共感してくれているパートナー工房を探して、何度もトライを重ねて、各国の限られた工房と取引をしてきている。

このハンドペイント工房は、一緒にものづくりをし始めて、1年経ったぐらいなのだが、まだまだ、悪戦苦闘中。

前に話した品質基準が守られてなかったり、他のバイヤーのオーダーを優先されて、私たちのオーダーがなかなか対応してもらえなかったり(これは、私たちの規模がまだ小さいことが要因でもあるのだが)。

なんでこんなこともできないんだ、と途方にくれることもあるけれど、
大事なのは、彼らの立場にたつ視点を忘れずに、
今・目の前の生産だけでなく、5年後、10年後の長いスパンで、考えていくことだと思う。

正直、言ったことをスムーズにできる人たちは、途上国の生産現場において、なかなかいないし、あら捜しをしたら、きりがない。
「この工場はだめだ、別の工場を探そう」と、別の工場にいったとしても、
今度は、また別の問題が出てくる。
青い鳥みたいな、都合の良い工場は存在しないのだ。

だから、私はこの工房で、何度もキレそうになったり、心の中で絶望しながら、一方で、彼らの技術力に感動しながら、同じことを何度でも伝える。

「一緒に良いものを作ろう、もっと良くできる」

そして、言葉だけでは彼らは動かないから、一緒に行動する。

ペイントは(面白い仕事だけど)私がやったら彼らの仕事を奪ってしまうし、彼らのようにきれいにペイントできないので、白生地をテーブルにセットするとか、地味な仕事を手伝う。
釣り針のような細い針を生地にさしていくのは、実際にやってみると難しくて、指に針が刺さって大変。

そうやって、最初から最後の工程を彼らと一緒にやっていくと、
「ああ、ここで黒いシミができるリスクがあるんだな」
「これは彼らが言う通り、コントロールするのは難しいな。販売側できちんとお客様にお伝えすることで、個体差を理解してもらわなくては」
と、最終製品を見るだけではわからなった、生の情報が見えてくる。

ロックダウンで、なかなか外に行けなくて、外部の生産工房を訪れることが難しい状況だけど、やっぱり、現場にヒントも答えもあるんだって、久々に行けた工房で、心底実感した。

手を動かすことと、工房の収支管理や将来のビジョンを描くこと、まだまだ自分には足りない引き出しがいっぱいあるけれど、現場を見る気持ちは絶対忘れたくない。


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