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なぜ医者と教師は頑張れば頑張るほど辛くなるのか

1.  現在の医療と教育の本質的に共通する問題点

私は医師ですが、医療と教育には本質的な共通点があると思っています。

それは「他者をあるべき方向へ導く性質を持っている」というものです。

そしてこの本質に沿って考える時に、これまた両者に共通する根本的な問題があります。

それは「多くの相手を対象にしようとすればするほど提供するサービスの質が落ちる」というものです。

教育にも医療にも運営する学校や病院が安定的に経営できるようにするために、

なるべく多くの学生や患者を集めようとする動機が存在していると思います。

つまり、「良いサービスを提供するためにもより多くの顧客を集める必要があって、しかしながら多くの顧客を集めれば集めるほどサービスの質が落ちるというジレンマを抱えている」という特徴が医療と教育にはあるのです。


2. 本質的な問題点を解決するための2つの方策

この本質的な問題を解決するための大きな指針として、私が思いつくこととして2つ挙げられます。

一つは「医療・教育機関の完全公営化」、もう一つは「少数顧客でも経営が成立する医療・教育機関を設立し、その数を増やしていくこと」です。

前者の指針をすでにほぼ達成しているのが北欧の国々です。

例えばスウェーデンは国民からの税金を日本よりはるかに多く徴収する代わりに、

基礎学校(9年間)・高校・大学における授業料がすべて無償となっています。

また医療費は18歳未満は完全に無料ですし、18歳以上になってもその大部分を国が負担してくれます。

健康な人にとってはお金を取られるだけでデメリットが大きいと思われるかもしれませんが、

その結果として国として大きな安心が得られ秩序が保たれるのであれば悪くはない仕組みだと私は思います。

そして完全公営のメリットはそうした費用面のメリットにとどまらず、「学校や病院が無理に稼ごうとしなくて済む」という大きなメリットがあります。

たとえ病院の収益が少なくなったとしても、国の税金から最低限の賃金が保障されるのであれば、

無理な運営で質の低い教育や医療を提供しようという気持ちが生まれにくくなります。

ただこのような変革は政治が正しく機能してこそ起こすことができるものですが、

残念ながら今の日本の政治ではそのような変革など期待できないことは想像に難くありません。

そうなるともう一つの「少数顧客で成立する教育・医療機関の数を増やす」という戦略が鍵となってきます。


3. 質の高いサービスをオンラインで届ける仕組みを作る

実は今私がやっているオンライン診療がそのような医療機関を作る作業であったりするのです。

少数の顧客で医療経営を成立させるためには十分な価値を感じてもらうような質の高い医療サービスを提供しなければなりません。

しかし日本は国民皆保険制度によって、それに従う限りは提供する医療サービスと価格はすでに定められた内容で行わなければなりません。

ところがその仕組みの中で医療を提供しようとすれば自ずとたくさんの患者を集める必要に迫られます。

そうすると安定経営を目指せば目指すほど一人あたりの患者さんにかけられる時間が少なくなります。

その結果、3分診療、5分診療などと揶揄されるような質の低い医療を行わざるを得ない構造となってしまいます。

従って少数顧客で成立させるための仕組みを作るためにはまず保険診療ではない自由診療の中で仕組みを作らなければなりません。

教育の場合は、保険診療のような縛りに相当するのが学校教育法などによって定められる所定のカリキュラムということになるでしょうか。

言わばこれらは顧客に予め決められたサービスをいかに効率よく提供するかということに特化したシステムだと言えるかもしれません。

そうではなくて少数にアプローチして、しかも相手のニーズに合わせて自由自在に修正が効くようなサービスであれば、価値を提供することができるのではないでしょうか。

教育であれば、家庭教師を利用したり、様々な成人教育を織り交ぜて自分の学びたい内容にカスタマイズする行為によってその価値を生み出すことはできるかも知れませんが、

こと医療においてはなかなかその場がありません。家庭医であろうと、かかりつけ医であろうと、結局受ける医療はどこも同じです。

そうなると、自由診療で少数の患者さんに価値の高い医療を提供する場を作れば、

そしてそういう医師が次から次へと生まれてくれば、

患者はまるで自分好みの成人教育を作り上げていくかのごとく、

自分好みの医療を作り上げていける世界になるのではないかと思うのです。

そんな中で既存の医療が広まり過ぎていて、新しい自由診療クリニックをリアルに開くことは大変ですが、

オンライン上であればそのようなクリニックは存在しやすいのではないかと思うのです。

そして少数の患者で成り立つクリニック一つだけでは大勢の人を診ることはできませんが、

そうしたクリニックの数が増えていけばどんどん受け皿は広がっていくと思いますし、

医療全体の質が低下せざるを得ない歪みを是正することができるかもしれません。

オンラインに注目が集まる今は医療と教育の質を高める絶好のチャンスなのかもしれません。


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