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やっぱり、あげない

俳句が好きで、その筋40年。とってもゆったりした生き物、遠藤さん。

家に遊びに行ったら、私が好きだと言っていた俳人、西東三鬼の本を2冊持ってきて、
「この本ね、2冊あるから、1冊あなたにあげましょう」
と言ってから、2冊の本を目の前まで持ち上げ、
職人が鉋の刃を確認する様子で丁寧に2冊の見比べを開始した。

どうするのかなあ、と見ていると、1冊のほうの底に赤いインクが何箇所も染みているのを発見して、
「はい」
とインクのついたほうを私に差し出した。

面白くも思い、変な気持ちにも、なった。

私は、同じようなものが2つあるなら、良いほうを相手に渡すものだ、という教育を受けているし、

またそうするのが人間的に自制心があり、美しいことだと教わった。

しかし彼の様子はとても自然で、卑しくもなければ、私を見下した様子もなかった。

そして先日、再び家に遊びに行ったとき、
「あ、そうそう、あなたにプレゼントがあるんだよ、古本屋で見つけたんだ」
と遠藤さんが言った。
「なになに!」と待っていたら、
以前から私が探していた、文庫サイズの絶版の希少本、ふらんす堂の「HAIKUの鑑賞」を、古本屋のビニール袋から出してきた。
この本は、とても好きな本で、流通時には5冊くらいまとめて買って、友達に配っていたのです。
「わー!嬉しい!!!」
と言ったら、遠藤さんは前回と同じように、自分の本棚から同じ本を人差し指で出してきて、2冊をじっくり比べ出した。

2冊はどちらも遜色なく綺麗で、どちらも新品のようだった。

「うーん」
と遠藤さんは悩んでいる。
「遠藤さん、どちらも綺麗だから困ってるんでしょ」
と私がからかうと、そのうち、
「ふむ。・・・まあ、これは、あなたがまた読みたくなったら、貸してもいいし」
と言って、すました顔で2冊とも、彼の本棚にしまってしまった。

その様子に私は大爆笑してしまい、
「私にくれるんじゃなかったんですか!」
と畳み掛けると、
「まあ、欲しくなったら、また言ってください」
とかなんとか意味不明なことを言って、ゆったりしていた。

遠藤さん、自由すぎる。

子供を見ていてもそう感じるときがあるけど、

自由な人の、のびのびとした様子を目の当たりにすると、
私の教わってきた美しさから変な臭いがする。

私は、本当に相手のことを思って綺麗なほうを差し出してたんじゃなくて、

私を美しく見せたくて、それをしていたのではないか?そういう臭いだ。

そんな訳で、自由な人と話していると、

今まで最良だと思い込んでいたことが、実はそうでもないということに気づくことが多いのです。

遠藤さんに便乗して、割と重要な話。

皆様サロンでは、来店3回目くらいから、かなり自由にモノを言い出します。

私も含め、皆様の心の底は、それほど善良ではなく・・・・笑

すると、「善良」って意味が、そもそも何かのシステムに服従させるための限定的な定義ではないのか、と思う今日この頃なのです。
(ね、重要でしょ!)

という訳で、続きはサロンで。

サロンでお会いしましょうー!
https://www.iki-aoyama.com/
(2018年10月7日の記事)

言語化能力でなにかしら換金できたらと考えて投稿を公開しています。投げ銭のようにサポートいただけたら嬉しいです。