自分は本当に物づくりの世界でやっていくのか?|自分らしさと表現について
Yさんが回想プログラム(人生の振り返りワーク)を終えてから、数か月たちました。久しぶりにお会いしたYさんは、とても元気そうで、いつも通りの個性的な髪形と眼鏡でにっこり迎えてくれました。Yさんは、50代女性。彫金・ジュエリー作家さんです(数年前より、作家活動を本格化)。今回は、ワークの感想について取材でしたが、それを超えて、「自分らしさと表現について」のお話になりました。
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「面倒くさいことするの、止ーめた!」
ファミレスで、一息ついてから、インタビューを始めました。
ーその後、どうですか?
うーん。あれ以降、割り切りがすごく出来るようになったよ。ぐちゃぐちゃ考えていたことを削ぎ落すことが出来るようになった。それで、「面倒くさいことするの、止ーめた」って。だから、今はだいぶラクだね。そういえば、あの当時、ガラガラ変わっていった心境をスマホに残してるんだよ。
そのスマホのメモを少し見せてもらうと、こんなタイトルが、
「もう朝、あんな感情を持つのは嫌だ。」
ーあんな感情とは?
(ここからは、話して下さったことを箇条書きで記載していきます)
<朝のあんな感情のあらまし>
彫金のお客さんから注文を受けてるが、「やりたくないなー、でもやらなきゃー、面倒くせー」(ループ)。頭の中に完成図はある。しかし、それを現実に作るには、精密な計算や細かい作業が待っている。めんどくさい!
自分は本当に彫金が好きなのか?⇒ 本当にこの先、彫金をやっていくのか?⇒ 本当に、自分は物づくりの世界でやっていくのか?⇒ 本当か?本当か?(自問自答が永遠と続く)⇒ わー!!嫌だー!!(再度ループ)
そんな悩みを抱えつつ、人生の振り返りをしている内に、あらがう事の出来ない自分(らしさ)に直面する。
人生を振り返る⇒ 自分は、まめにコツコツやるタイプではない(ことが分かってきた)⇒ でも、コツコツやらねば(彫金作家の理想像)⇒ しかし、私はそうできない…(自分の現実)⇒ うーっ(どうしたらいいんだ!)⇒ ……!いいじゃないか。私なりの方法(表現)をしていけば⇒ だってそれしかないじゃないか!それが自分なんだから!
自分は自分でしかなり得ないと分かったら、彫金作家はこうあるべきと言う概念を、全部とっぱらうことが出来た。あるべき姿像は、母や世間の影響だったのだ。
自分の出来ること、出来ないことどちらも分かった。もう、自分の出来ることしかやらないと決めた。
注)出来ること・出来ないことは、作業についてのみではなく、作品の表現・広報・販売方法等、作家が行う全てのことを指します。
Yさんは、現在、イベント出店は休止しており、インスタに作品や作業風景をアップし、共感してくれたお客さんから、直接オーダーを受けて完全オリジナルで制作しているとのこと。また、友人やその知り合いから声がかかることも多いという。
流行りの型を作るより、毎回違うオリジナルを作る方が自分には向いていると思う。以前は、その様な作品も作っていたが、お客さんに対して申し訳ないモヤモヤした気持ちがあった。納得できないものをお渡ししている様な気がしていたのかもしれない。今は、堂々と納品できる。自分らしさを出した作品の方が評価も高まった。職人のような技術はないけれど、自分にしか作れない世界に一つのものを作っているのだから。
インスタを見せてもらうと、お客さんとデザイン工程を共有し一緒に作り上げているらしい。それは確かにお客さんにとってもきっとすばらしい体験で、世界に一つの大切な作品になるだろう!
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「世間から見て下手くそでも」
これも、Yさんのスマホメモのタイトル。
作ることは苦しいことばかりだけど、作り終わりが近づいた頃に、ニンヤリとすることがあるんだ。ほんの一瞬だけど。その時、思っていたこと。(以下)
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Yさんにとって創作の行き詰まりを乗り超える糸口は、自分らしさに気づきそれを受け入れたこと、無理のない自分だけの方法を見つけたことだったのだと思います。
人生の振り返りは、自分で自分を発見したい人に向いています。人から押し付けられることが苦手な人や、自分の内側から(腹の底から)実感したい人など。なぜなら、他人ではなく、それまでの自分の人生が、そう言っているのだから。
創作をする人はもともと感性がある方たち。ひとつ気づいたら、後は自分の力でどんどん理解していく。その力強さに驚きました。
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インタビューを終えて、Yさんの一歩踏み出した勇気に、私も背中を押されました。
Yさん、ご協力ありがとうございました!
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