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カジノは特に好きでなくてもIR施設開発に賛成する理由は観光資源創設による地域経済効果 I have seen enough regional developments by Casino projects in the USA.

Japan has been preparing for the introduction of IRs (Integrated Resorts - including casinos, hotels, convention facilities, entertainment venues, shopping areas and others) to the point that relevant legislations were enacted to award up to three locations in the first round of approvals.  The topic on IR has been sometimes controversial while the event in early 2020 prevented most, if not all, of the discussions.  I would state my support for the IR in Japan because of my firsthand experiences with studies on Indian casinos in the USA. 

「IR/カジノプロジェクトとのかかわり」

コーネル大学での博士課程在籍時代、コーネル大学修士課程時代の米国人クラスメイトから、「経済効果計算の手伝いをしてくれ」という依頼があり、それで、米国インデイアン自治区におけるカジノ開発、いわゆるインデイアンカジノ開発案件の収益性計算及び経済効果予想計算の下請けをするようになったのはもう20年近く前です。実際に何もない現地を視察し、数値を計算して、数年後の開業後には見違えるような経済・社会発展を自分の目で見てきたので、何もない場所に、強烈な集客能力のある観光施設を人工的に作り上げてしまう経済効果については、幸運な事に実例を複数見てきました。

カジノそのものの経験は自分にとって初めての海外勤務・在住であったエジプト時代にカイロのナイルヒルトンホテルで行ったのが初めてで、そこで基本的なルール等は知りましたが、いつも定額(低額)を持ち込んで、それが無くなったらさっとやめるという方針だったので、入り込むことも無く、まあ一通りは出来るという程度です。

日本のIRに関する意見等を見ての考察

日本の報道は全てウェブで見るだけですが若干言いたい点があります。メデイアと反対派は「カジノ」という印象操作でまるで、昨今の自宅待機要請時のパチンコ屋に並ぶ依存症の人達が押寄せるというイメージを煽っていますが、地方自治体への経済効果は本当に凄いものがあります。

米国でのインデイアンカジノ経済効果の実証:

当方は過去20年間で15件ほど、米国インデイアン居住区でのカジノ開発の経済効果計算を行っています。その関係で米国やカリブ海諸国の各地を実際に見ています。開発前と開発後でその地方の社会インフラ拡充度が本当に目に見えて改善します。

ルイジアナ州アレキサンドリアという人口4万人の田舎町、高校卒業しても地元で仕事は無く、若者がより大きな地方都市に去っていく、新たな設備投資も何もないという日本の地方にあるような、正に過疎化の町でした。そこで数年後にインデイアンカジノ(ジェナ・チョクトウカジノ:写真は当社ウエブページより)が開業すると、仕事が無かった町に、福利厚生までついた正社員職が280名発生し、家族の住む従業員寮だけでなく、関連業者の家族が住むアパートや、ウォルマートや託児所等が新規開業、増えた税収で道路もきれいになったという、経済効果を見ています。

高卒の地元学生が地元で就職出来る、福利厚生もしっかりした機会をもたらすことが如何に過疎化の町の雰囲気を変えるかを見る機会があったのは幸運でした。

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 労働集約型産業での輸出産業効果とは何を意味するのか

IRのようなホスピタリテイ産業は労働集約型産業ですが、それは悪い意味だけでなく、いい意味もあります。例えば横浜や大阪でIRで6千室のホテルを建設する場合は、建設時の経済効果だけでなく、開業後に従業員12,000名が新規雇用として発生します。また、うち1/4程度、3,000名の中間管理職需要が発生します。例えば横浜・大阪規模だと、建設費に1兆円程度、開業後の売上もその程度出るでしょう。その規模での建設ローンや長期融資、今の経済状況ではそう発生する話ではないので、銀行にとっては貴重な融資機会です。MM21が30年間ぐらいで2兆円の開発コストですが、横浜や大阪IRは3-5年で1兆円ですから、その規模とインパクトは凄いです。もっと凄いのは、労働集約型産業なので、開業後は地域の労働投入が継続して発生する=賃金が地方経済に落ちていく経済効果です。おおよそ、テーマパークで対売上高35-38%、ホテルで同32-35%の人件費が運営上の最大費用項目として発生します。売上1兆円ならば年間3500億円の賃金が地方経済の居住者に落ちていきます。これが何を意味するか? 

地域経済での雇用創出効果のイメージ

これだけの労働集約型産業がこの規模で開発されると地域経済に何が起こるか? 横浜市でも大阪市でも想像できます。「おもてなし」しか出来ない時間給労働者でも年収3百万円程度のポジションが数千人分、中間管理職ならば同5百万から、英語で仕事できれば10百万円プラスのポジションが合計三千人単位で発生します。現在日本平均と同じかそれ以上に衰退傾向の横浜にとって、英語が出来る人材に10百万円払うポジションが市内に現在どの程度あるのか? おそらく横浜市内にはそれを埋める人材が十分に居ない可能性が高いですね。こういう観点をぜひ、イメージだけで反対している人達にも考えて頂きたいと思います。

まずは市内の過疎化が進む地域(丘の上や傾斜地)にある空き家やアパートに新規需要が発生します。でも一万人規模の雇用創出ですので、横浜市内では全ての供給は不可、すると京浜急行や京浜東北線、東横線、相鉄線その他JR沿線の駅周辺のアパートが埋まり、居住人口が増えるという今時あり得ない現象が発生します。まるで昭和50年代の東西線や田園都市線沿線のようなイメージ。

大規模設備投資による観光集客施設開発が地域経済に及ぼす意味を正確に理解する事が大切

横浜市や大阪市にとっては、浦安市にとっての東京デイズニー並みに、自分の観光資源(自己の行政能力)ではありえないような経済効果を長期にもたらす観光資源開発の50年に一度ぐらいの機会で、それを利用して、市内居住者にどういう経済効果が発生し、それを活用してどういう市政や街作りをするか、それは居住者にとってはどういう恩恵があるのか(東京まで行かなくても、福利厚生もしっかりした正規雇用が発生して、各家庭のお子さんに東京並みの年収で地元で働くという就業機会のオプションが生まれますよ)、というビジョンをきっちり提案して提示しないとなりません。

それをきちんとしないと、一生に一度あるかないかの機会が理解できずに、「自宅待機時にパチンコ屋に並ぶギャンブル依存者みたいなおっさんが我が町に増えてほしくない」という程度の反対者を説得できずに、せっかくの機会を失うということになります。

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地域住民向け小会合の必要性

冒頭に申し上げたように、自分は個人的にはカジノが特に好きではないのです。統計学を教えている立場からすると、期待リターンが常に自分の投資額を下回る(企業側が勝たなくては業務が継続しない、つまりゲスト側は平均値で言うと損をする)点を理解しているので、冷めてしまっているのかもしれません。但し、会議場やエンターテインメント会場や大きな建物の雰囲気等は、酒を飲まない当方でも往訪する時には良いなあと感じます。

「カジノ~!」と言って思考停止反応で反対している人達は、おそらくIRやカジノの実際の財務諸表も経済効果計算も見たことない人達が大多数でしょうが、住民に対して「どういう恩恵が地域経済、そして貴方と貴方の子供達にあるのか」という小会合を何度も開いて説明することが必要だと思います。 米国インデイアンカジノ案件の小会合で使う資料を作成していた当方の立場からはそれが極めて重要だという点、強調したいと思います。横浜の場合は開港して160年程度で、かつての栄華からは現在はジワリ沈下傾向にあるが、今後の160年を再び繁栄の横浜、世界への玄関口のイメージに戻すためには、これ以上よい外的刺激は無いというビジョンをしっかり居住者に対して打ち出す機会です。 

貧富格差解消し、同時に再来訪するリピーターを生み出すビジネスモデル

インデイアンカジノを見ていると、連邦政府が国民に課税してその税収の一部を補助金としてインデイアン貧困層に分配する一般的な富の再分配モデルとカジノゲストたちが喜んで観光支出をし、その3割以上が賃金として地域居住者である従業員達に地域社会で再還元されていくモデルとの違いを感じます。もちろん、当期利益は内部留保されるか、株主に配当として還元されますから、投資家・株主がより富を増やすという結果も起きますが、損益計算書を見ると、営業費用項目の最大費用が従業員への賃金だという点が、労働集約型産業であるホテルやカジノ・IRの運営上の特徴なのです。この大量の労働賃金支払は地域の貧困解消にじわっと確実に効果があります。

税収により政府に課税された国民は、多くがそれ(課税される事)が楽しみではなく、「税務署さん、もっと課税してよ、富の再分配に」という発想はならないでしょう。しかし、カジノの場合は、平均してゲストが楽しんで負けてもらっても、少なくない人達が「楽しんだわ、また来るわよ」と、富の再配分が自主的にまた喜んで起こるという部分に当方はとても学術的・理論的に魅了されます。 富の再分配が当事者、特に富を差し出す人達がリピーターになるほど喜んで地域での富の再分配行為に自主的に参加してくれるって、凄い事だと感じます。冒頭のインデイアンカジノでジャックポットを当てた人達の勝利額と顔写真が載っています。こういう人達が喜んで楽しんで富の再分配に自主的に参加してくれるというのは凄い産業だと思うのです。そう思いませんか(笑)。

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日本の観光資源の多様性が少し増える(ポートフォリオに別の資源を足す経営)

IRが出来ると、日本のイメージが低下するという極端な論調も聞きますが、では、米国、エジプトと聞いて、カジノの国だという印象を持つ日本人はどの程度居られるのでしょうか? 両国にはカジノがありますが、それで両国のイメージがカジノがあるひどい国だ、という反応になるでしょうか? 観光客にはいろいろなセグメント(客層)が居り、それぞれに好きな行動や往訪地、時間の過ごし方があります。お互いに自分の関心のない事象には興味を示さず、自分の求める観光資源に行って観光消費をしてもらえる訳なので、将来の日本の観光資源の多様性が増えるという程度の理解がちょうどよいと思います。

以上、自分の趣味嗜好とIRの経済効果は別件であり、如何にインデイアンカジノが貧困層の国民に経済的恩恵と地元への誇りをもたらしたかを見ている立場上、当方はIR開発には賛成の立場です。

おまけ「米国セミノール族の大成功投資の話」

これは、そのうち映画化してほしいような爽快な話です。米国インデイアンは欧州人入植で米国の住処を奪われて多くの虐殺や戦争で人口も減ったのが米国史です。その後、米国連邦政府は残るインデイアンに各種援助を与えたりましたが、貧困率、肥満率、自殺率、高校中退率、死亡率等で米国人平均を上回る統計データは継続し、効果的な解決策が出ませんでした。ところが連邦政府が1987年にIndian Gaming Regulatory Act (IGRA) を施行し、インデイアン部族地でカジノ運営権を認めると、経済的に自立して警察・消防・教育等を自分の経済地域で運営出来る部族が多く発生し、連邦政府から見ても肩の荷が下りた状況となりました。 

インデイアン部族の中でも、有名な成功話はフロリダ州のセミノール族です。2006年にセミノール族はハードロック(カフェ、ホテル、カジノ等複合ビジネス)を$965百万ドルで買収しました。その後、この買収は成功裏に運営されて、現在では、セミノール族部族員全員に年間一人$128,000(1,350万円程度)の配当金が分配されています。未成年者は信託口座にそれが積み立てされ、各部族員の成人時に2億円程度が渡されています。欧州出身入植者には先祖が大変な目にあったが、その末裔たちはきちんと欧州出身者達が作った米国の資本主義のルールで見事な成功を収めているという話です。

OK, Bye for now.  終わり

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大変恐縮でございます。拙文、宜しくご笑納頂ければ幸甚です。原 忠之(はらただゆき)