安全衛生マガジン11月号

1.【日々安全】
「一発逆転!」のない世界
 私は、機械メーカーの製造工場で26年間現場を経験した後に、
平成12年4月に安全衛生担当にとなりました。
 当時の工場の安全成績は、先輩たちの努力もあって、結果的に
「災害“ゼロ”」を達成することはかないませんでしたが、発生災害は
軽微なものが年に4~5件程度にとどまっていました。それでも一定の
評価をされていたので、私も「まぁこんなもんか・・・」、「ここまで
やれていれば・・・」と、いつしか自分自身も納得をしていました。
ところが、平成18年、工場火災や休業災害が発生し、それまでの
活動が一気に崩れ落ちる様をみた思いでした。
 
 この時、私の頭をよぎった言葉が、あるプロ野球の監督の言葉です。
「“勝ち”に不思議な勝ちあり、“負け”に不思議な負けなし」という言葉
でした。「たまたまの無災害を安易に喜んでいるような活動では、災害
”ゼロ“に届かない! 狙って獲りにいく”無災害“でなければ!」と、
それまでの自分の妥協心を悔いたものでした。
 
 私は中学の時からテニスをやってきましたが、テニスの世界にも良い
言葉があります。早稲田大学出身の福田雅之助氏が後輩たちに贈った
言葉です。「この一球は絶対無二の一球なり。ならば、身心を挙げて
一打すべし・・」です。
 テニス競技は1ポイントずつ得点を重ねる競技であり、決して満塁
ホームランのような逆転打はありません。“エア・ケイ”であっても
“ダブルフォールト”であっても1ポイントは1ポイントなのです。
 そうであるからこそ、一球一打を大事に悔いなく打ち、たとえ地味な
プレーであってもポイントを積み上げた者のみが勝者となります。
それは決して派手なパフォーマンスで逆転できるものではありません。
そのことを心に刻み、日々精進せよ、という意味が込められた言葉です。
 
 この「庭球する心」は、私たちに、その瞬間にける“慎重さ”と“丁寧さ”、
そして、“飽くなき向上心”
を教えている言葉です。
 「一発逆転!」のない世界、安全衛生の世界も同じです。
例え当たり前の点検であっても、“慎重に”、“丁寧に”、着実に実践できる
“愚直な心”と“行動力”を磨きましょう。
 
(板橋 陸 氏 手記より)
 
2.【日々健康】
   【産業医が教える「気分を持ち上げる3ステップ」】
 (産業医・精神科医 井上智介著・・職場の「しんどい」を消え去る大全)より
 
 作業は「書くだけ」
 「会社や仕事のこともそうだけど、毎日、気持ちが沈んでいる」
 あなたがこのような状態がだとしたら、あなたは「心理的視野狭窄」に
陥っていると言えるのかも知れません。
 心理的視野狭窄とは、特に自分に自信を持てない人に多いのですが、
全体を俯瞰として物事を見ることができず、「できていない」「悪い状態」に
ばかりに注目してしまう様子を言います。
 そうなると、次のような漠然とした不安が強くなっていきます。
l  理由はわからないが、なんとなくつらい
l  何もかもうまくいっていない
l  自分が何に困っているかもわからない
l  心配なことがありすぎて、何をすればいいかわからない
 
 そんな状態の時こそ、ここでも「今の悩みや感情を紙に書きだす」という
方法をやってみましょう。
 ここではステップが3つあります。
 
Ø  ステップ1:不安や悩みを紙に書きだす
Ø  ステップ2:自分でどうしようもないことは無視する
Ø  ステップ3:今できることにチャレンジする
 
 前項と同様に、紙に書き出して「見える化」することで精神的にスッキリ
しますし、モヤモヤを頭の外に切り離すという意味合いもあります。
 さらに、そのモヤモヤに対して、第三者的に見下ろすこともできるのです。
 実際に書き出した内容を見てみると、意外と、自分ではどうしようもない
ことが多かったりします。
 具体例を挙げながら見ていきましょう。
 
ステップ1:不安や悩みを紙に書き出す

  1. 提出資料を作成したけれど、上司の機嫌が悪くてチェックが厳しいかも・・

  2. 来月の資格試験受かるかな・・・

  3. 来週末に実家に帰るが、また親から「結婚しないのか」と言われそう。

  4. 友達の会社が経営悪化して、給与が未払いらしいけど、うちは大丈夫かな。

  5. 最近、寝つきが悪くなってきた。

 
ステップ2:自分ではどうしようもないことは無視する
 次が最も重要です。
 ステップ1で挙げた5つの項目の中で、自分ではどうしようもないことは
無視してみましょう。思いっきり、鉛筆で×をつけてOKです。

 例えば、①の上司の機嫌はあなたの力ではどうしようもありません。
 ③の結婚に関する親の干渉に、数日ではどうしようもできないことですので、
悩む必要はありません。
 ④の会社の経営状況に関しては、今のあなたが心配して何かを大きく変える
ことができるか考えてみてください。もし、ポジション的に無理ならば、悩む
必要はありません。実際に給与の未払いなどがあった時に、どのように動くか
を考えたらいいのです。
ステップ3:今できることにチャレンジする
 今度は、ステップ2を経て残ったものを見ていきます。
 ②に関して、今できることは勉強するしかありません。合格するために、
実直にコツコツと勉強していくことが必要です。
⑤に関しては、生活習慣を改めることができますね。
  例えば、寝る直前までスマホでゲームをしているのであれば、それだけ脳が
興奮しています。その状態で布団に入ったとしても、急には寝つけません。寝る
2時間前にスマホのスイッチをOFFにして過ごす。等・・
 
  このように、自分がいかに努力をしても変えられないことは、どんどん切り捨て
て下さい。
  逆に、紙に書き出した項目の中で、自分でコントロールできることについては、
それこそが悩みや不安の種になっています。
 
  そして、Bを終わらせるために、今、具体的に何をやるべきかを考えて
いきましょう。資料集め、データ分析など、自分ができることに集中し、
1つずつこなしていきます。
  そして、Bが片付いたらAを・・というふうに、1つずつ「不安」を消して
いきましょう。
 
  書き出して「見える化」し、優先順位をつけていく。
  これで、会社や仕事に対するあなたの憂鬱な気分や不安を徐々に小さくする
ことができるでしょう。
3.【日々生活】
 【「叱られ上手」の模範を示す】
「叱り上手は叱られ上手」であり、指導者は双方の習得が大切です。
 
 ① 少なくなった「叱られ上手」
 家庭でも学校でも「上手に叱る」ことが少なくなったためか、叱られることの
上手な人も少なくなったようです。しかし、相手を立派に育てるためには「叱る」と
いう働きかけは不可避であり、同時に、大きく成長しようとする人は、「上手な叱られ方」
を学び、多くの叱責を自分の糧にしましょう。
 
 ② 「叱られ上手」三つの言葉
 出発点は「期待されているからこそ叱ってもらえる」と感謝し、叱責を受け入れる
姿勢を示すことです。そのうえで「よくわかりました」「これからは気をつけます」
「またご指導をお願いします」の三つの言葉と心を返すことです。
 このように具体的に教え続ければ「叱られ上手」の人材が育つことでしょう。
 
 ③ 感謝と謝罪の模範を示す。
 指導者は「叱られ上手」のありかたを説明するとともに、「叱られ上手」の模範を
示すことが必要です。具体的には叱責を素直に受け、心から謝り、言動を改めて見せる
事です。このような指導者の姿から、三つの言葉の底に「感謝」と「謝罪」の心が
流れていることを学び取ってくれるはずです。
 

 
 
このテーマはビジネスシーンだけではなく、家庭でも同じだと思います。
「叱るということは愛であり責任と心得ることができてこそ」です。
 その前提には、自分自身が「叱られ上手」の模範を言動で示しているかが
大切です。
 

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