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茶渓谷


あの谷の底には

お茶畑がある

一面の緑


肥沃な土に抱かれ

ささやかな風が

空から滴る雨粒が

彼らを育てている


でも時に

その愛は行きすぎる

風は谷を抉り

雨は水底に茶葉を隠す


すると何が起こるか

考えればわかること


谷に溜まった雨は

哀れな茶葉から

カテキンを吸い出して

玉露


緑色の水面が風に揺れる

人々は胸を打たれ

持ってきたお茶を谷に流す

敬意を表するように


あっ

誰かが

烏龍茶を流した

緑茶の谷だったのに

濁りのない

緑色の渓谷だったのに


でも

谷は責めない


私は気にしない

私は気にならない

却って

味に深みが出る

味に

深みが出る

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