見出し画像

砂人


遠く

サハラの

ゴビの

タクラマカンの

陽射しに灼けた

砂漠から


立ち上がりたるは

砂人


数え切れぬほどの砂粒が

彼を形作っている


今この時にも

その指先から

ぽろぽろと溺れ落ちる 彼だった砂

今はもう

砂漠に紛れた

ただの一粒


僕はそれを

大事に拾って

ポケットにしまった


そこに向き直ると

もう彼はいない

砂時計が落ちきるみたいに

さらさらと溢れて消えた


どこに彼が立っていたのかも

もうわからない

見渡す限り砂だから

彼という奇跡を証明するものも

もはやなにも無い


僕はポケットから

あの砂粒を握り出した

もう意味がないから

砂漠に蒔いた


さようなら

あなたを見て 僕は感動できたよ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?