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高田忠典 代表理事兼カンボジア事務局長にキズナの活動を聞いてみた

日本財団 海外事業部の野見山 瞳です。
昨年6月からキズナの担当になりましたが、コロナの影響で、
3月現在、未だカンボジアを1度も訪問できていません。

現地に駐在している高田事務局長に、キズナの活動について伺いました。
対談形式でご紹介いたします。

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■ 沿革 / 教師の育成に特化

野見山:
どのような背景で、キズナのカンボジアでの支援活動は始まったんですか?

高田:
日本財団は、1990年代後半に内戦で荒廃したカンボジアの僻地に100校の学校建設支援を行いましたが、深刻な教師数の不足に直面しました。そこで、2004年から地方出身の教員養成校学生への奨学金事業が開始され、その事業運営をする現地実施団体として、2008年に教育支援センターキズナ(現地名:国際NGO ESC-KIZUNA)は設立されました。

現在、奨学金を受給した2500名以上のアルムナイ教師たちが、地方の学校で活躍しています。2016年からは、その地方の教員たちが直面する地方の教育問題を、一緒に解決していく、新たなアルムナイ支援活動を進めています。

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■ 国定英語カリキュラムの開発

野見山:
キズナが作った教科書が、カンボジアの公立学校の国定教材として使われているんですよね。それも日本の団体が「英語」の教材というのには驚きました。

高田:
「教育の質の向上」を目標として活動していますが、カンボジアでは社会の復興と共に、都市と地方の教育格差が問題になっています。
英語事業が始まった2010年当時は、インターネットも普及していませんでしたから、地方でもアクセスできるラジオを使った手法が検討され、英国BBCの国際開発部門と共同で、非英語専門の教員でも授業のできる音声教材を開発しました。ちょうど日本のNHKラジオ英語講座を、先生がファシリテートするイメージで、先生たちも教えながら英語の習得できるという仕組みです。
この教材は、教育大臣の目に留めてもらい、その後制作した英語教科書と一緒に全国の公立中学校の教材にしてもらいました。その流れで、昨年完成した高校の英語教科書と、小学校の音声英語教材も全国の公立学校に配布される予定です。

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■ コロナ禍での支援事業

野見山:
世界的な新型コロナウイルスの拡大により、多くの尊い命が犠牲となり、教育機関も閉鎖される事態となりました。キズナの活動にも大きな影響があったんじゃないんですか?

高田:
幸いにもカンボジアでのコロナ感染による死者は僅かですが、全国の教育機関が一斉休校となりました。休校が長期化し、活動にも支障は起こりましたが、しかし暗い話ばかりだったかと言うと、それだけではなかったのではないかと、私は考えています。

教育機会が制限される一方、それらの危機的状況を乗り越えるため、オンラインを駆使したICTや様々な試みが、政府主導で奨励されました。学校関係者の間でも、オンラインによる授業や会合が定着しています。

そして、学校現場においては、オンライン授業の長期化に伴い、今度は対面授業によるライブ感の重要性が再確認されています。保健の授業用に日本の「紙芝居」教材を製作していますが、教師との掛け合いに、生徒たちにも大変好評です。
これらの経験は、地方の教育格差の解決に対しても、将来への明るい希望の発見があったと言えるのではないかと思っています。

野見山:
コロナで支援先の学校が閉鎖されている間、キズナでは、実際にどのような取り組みをされていたのですか?

高田:
カウンターパートである教員養成大学や、アルムナイ教員のいる地方の学校が休校となったため、もっぱらプノンペンの事務所で、新しい教育教材やシステムの開発に専念しました。コロナ対策としては、直ぐにアニメーションを使った感染予防啓蒙用の教育ビデオを製作しました。

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カンボジアの国定中学校英語教材になっている、英国BBCと共同制作した、非専門英語教員でも指導可能なデジタル英語教材の開発経験を生かして、製作した新高校英語教科書が普及されるために、対面の研修ができなくても研修が実施できるよう、教員用デジタル教材とシステムの開発。そして中学校アルムナイ英語教員たちとは、小学校英語音声教材の制作、アルムナイ校長たちとは、母校の教員養成大学の学生たちのために、読書リテラシー開発カリキュラムの開発を進めてきました。

■ 偶然のタイミング保健事業

野見山:
キズナでは、偶然にも新型コロナ感染拡大の年に「学校保健」普及のための、新規エコヘルスプロジェクトを開始しましたね。

高田:
はい。カンボジアの将来を担う青少年の心身の成長を支える教育支援として、3年前から準備を進めてきました。東京学芸大学や、現地日系のデザイン会社と、現地NGOといった、官民学のパートナーシップをとりながら、日本の紙芝居やアニメーション技術、そしてITを駆使して、学校保健授業の実施と、SDGsに沿ったコミュニティー参加型の保健室システムの普及を掲げています。

コロナ収束後には、保健の普及を必要としている各国に、カンボジア保健教育モデル事業として紹介していける事を目指しています。

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■ 今後の活動方向。。。

野見山:
コロナの影響で、今は活動に制限があると思いますが、今後はどのような展開を計画しているんですか?

高田:
コロナの影響で中断していますが、選抜したアルムナイ教師たちの日本研修が再開できます。また、地方のアルムナイ教師達と、教育省の担当部署と一緒に、地方の教育問題解決に取り組んでいる各種プログラムを、東南アジアの周辺国に紹介し、情報交換を行う機会も設けていきます。

野見山:
各国の先生同士の交流は、楽しみですね。日本研修も、お待ちしてます。

高田:
それから、コロナの自宅待機下で、日本でも広まっていたオンラインサロンに時々参加させてもらい、色々な年齢や業種の方々に、カンボジアの学校や支援活動について話させていただく機会があったのですが、思った以上に、他の団体が踏み込んでいないリアル地方の話に興味をもっていただける事に驚きました。また、日本の企業が、SDGsの取り組みとしてパートナー先を求めている状況も伺えましたので、もっと学校現場の状況を発進していく取り組みも進めていきます。

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そして、カンボジアの若い先生方の生き生きとした取り組みを、ICTを通じて、日本の学校の先生方にも見ていただき、元気になっていただきたいと願っています。
日本の先生方は、大変勤勉で、SNSの普及よる外部からの監視もある中で、オーバーワークに陥利、大変疲弊していると伺っています。日本からアジアの途上国の教育を支援するだけではなく、日本の教育現場にも裨益のある支援活動を目指しています。

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野見山:
キズナの活動は、私が担当している事業の中でもプロジェクトが多岐にわたっているので、話を伺っただけで全部を把握するのは大変ですが、奨学生アルムナイの先生たちのネットワークを活かした、これからの活動が楽しみです。

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