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とっさの判断

先週の土曜日出校日だったので、昨日は代休で学童クラブは一日預かりでした。
私は午前中の勤務で、来ている児童は十人程度なので私を含め三名のスタッフで対応していました。

昼前十時過ぎ、トイレから出てくると二人の先生の姿がなく、子どもたちが掃き出し窓のところに集まって、大騒ぎしていました。

先生、おばあさんが道にたおれてる。
頭からちが出てる。
早く、きゅうきゅう車をよんで!

なにごとかと窓外に目を向けると、学童の前の道を東に向かったT字路のところでスタッフが道に横たわっている老婦人を介抱しているのが見えました。
遠目からも、顔面二箇所から血が流れているのがわかります。

十人の子どもたちが、それでもしっかりしていると思ったのは、誰一人として自らも外に出ようとしなかったことです。

私は呑気にトイレに入っていたので、コトの起こりに立ち会っておらず、その時点では経緯も知らないわけですが、おそらく二人のスタッフは子どもたちに外に出ないよう、声をかけて出て行ったでしょう。

この文章を読んで、何も二人で出ていかなくても、とか、トイレの中の私に声をかけていくべき、とか、その時の判断を適当でないと思う人もあるかもしれません。

当事者としてそこに立ち会わなかった場合、後から話を聞いて、いくらでも「こうできたはず」って言えてしまいます。頭の回転が良い人にありがちですよね(笑)

報告によると、老婦人は散歩中目眩を起こし道端に倒れて起き上がれず助けを呼んでいたそうです。
その声は学童クラブ建物の中までは届きませんが、倒れているのがT字路の角で、車が曲がってくれば死角となる位置でした。
おばあさんは思いの外肉付きがよかったそうで、一人では抱き起こすことが困難だったそうです。
仮に引きずって移動させるにしても、角を曲がってくるかもしれない車の注意も必要で、とても一人では無理でした。

救急車を呼ばなかったのは、意識がしっかりしていて本人が望まなかったのだそう。

人命救助を第一に飛び出していったスタッフの思いに、大騒ぎをしながらもちゃんと留守番して応えた子どもたちは偉いなあと思いました。

流血騒ぎに「こわいこわい」と涙が出てしまった一年生の女児、
いつもはやんちゃな坊主頭が、かわいそうと呟いてみたり、意外な一面も垣間見れました。

掃き出し窓を開けて、
「おばあさん、がんばれ」と叫ぶ子もいました。
少し落ち着かせようと
「いつまでも見ていると、おばあさんも嫌だと思うよ、みんなだって転んだ時にみんなが寄ってきてジロジロ見られたら嫌でしょう?」
と言うと、
「ああ、オレも嫌だった。超ハズかった。」
と窓から離れる三年生もいれば
「オレは見られても平気」と最後まで具に見届けるつもりの一年生もいました。

けっきょく、自宅に送るスタッフの車に乗せられて姿が見えなくなるまで、騒ぎは続きました。
老婦人は午後からご主人を伴いお礼に訪れました。

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