かっこいい引き際
五年ぶりくらいだろうか、フラワーアレンジメントのレッスンに参加した。
テーマは初春、だけど紅白は使わない、先生のこだわりなのだ。
先生は私より三つくらい年上の男性で、地元の花の生産者でもある。
なんとか流の資格は持たず、自ら育てた花卉で表現するアレンジ教室を三十年間続けられた。
ところが、各所十あまりある教室を、今年度限りで辞めるとの発表が今日あった。
青天の霹靂である。
誰一人として知らされていなかったらしい。
私は日にちの都合でずっとレッスンに来られなかったが、これから通い続けようと思った矢先で、とてもとても残念だ。
花の生産の権利を譲渡するので、今後は好きな花を好きなように作ることはできなくなるそうだ。
常連の生徒さんが、花は別のところで用意して、アレンジ教室を続けてほしいと頼んだが、自分で育てた花でなくては望む表現できないのだそう。
花にそんな変わりがあるものだろうか?と思われるかもしれないが、花のことなどよくわからない私にも多少感じるところはあった。
私は宝石のような美しい、切り花にするために作られたような花を好まない。
花はできれば土に植えられていた方がいいに決まっているのだ。
先生の作る花は切り花用でも、そんな自然の光の似合う花のように思う。
七十を前に、余力のあるうちに引退する、今後について考える時間もなく日々忙しいから、何も決まっていないのだと言う。
先生、かっこよすぎです。
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