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二人の冷蔵庫

末っ子の結婚のお祝いに冷蔵庫をプレゼントした。

5月、彼女さん(すでに三男の妻だけど。呼称に困る…「嫁」は時代錯誤で使いづらいし、「パートナー」は気取り過ぎ、私にはね。「相方」じゃ漫才師みたいだし、「連れ合い」は中年夫婦みたいだ。名案があれば教えてください。しかし日本語は不自由だな。いや、私の日本語が不自由なのか…)の住んでいる2DKのアパートに、実家住まいの三男が転がり込んだ。
三ヶ月後に入籍して晴れて夫婦となったのがこの8月だった。

彼女さんの勤め先は地元ではちょっと知られた料亭で、三男は「ナカイさん」と言ってからかう。

入籍前に夫と三男と連れ立って、その料亭のバイキングプランを利用した。
女将に続いて、仕事の合間に挨拶に現れた彼女さんは、着物合わせの上物にタスキ掛けで、モンペのようなズボンを穿いていた。
サムイ、というのかな。
※作務衣、サムエ
よく鍛えて無駄のない身体つきをしている彼女さんに、とてもよく似合って可愛らしかった。

料亭に勤めているので昼はまかないで、夜もご馳走の余りを持ち帰ることが多いらしく、部屋には小さな冷蔵庫を置いているという。

二人は、そのうち子どもができて手狭になれば引っ越すだろうし、家を持つなら無駄な出費は抑えたいと、この部屋にある必要最小限の家財で結婚生活をスタートさせた。

けれども、冷蔵庫だけは二人所帯にこと足りなかった。
彼女さんの仕事は退けが遅いので、三男が先に帰宅して夕食を作る。

三男は料理好きで、魚を捌いて刺身に造り、アラも吸い物の出汁に使う。 
ネットのレシピを見ながらだが。

食材も作り置きも保存できないので不経済だとこぼしていた。
しかし大きな冷蔵庫は値が張るのだ。

というわけで、二人の暮らしにちょうど良い大きさの冷蔵庫をプレゼントすることにした。

二人で選んで取り寄せてもらい、あとから私が支払いを済ませた。
同行するには日時の調整がいるし、私がいない方が気楽だろう。

だから、どんな冷蔵庫なのか見ていなかった。

何日かして、二人からそれぞれに、冷蔵庫が届きました、と、画像付きのLINEが送られてきた。

三男には、
こうして一つずつ二人の財産が増えていくのは楽しいね。
と返信した。

私たち夫婦は結婚すると同時に義父から新居を与えてもらった。
それに見合う嫁入り道具を全て揃えて新婚生活をスタートさせた。 
バブル期、そういう時代だった。
とても文句を言えた筋合いのない幸せだが、家も家財も古びていくばかりだった。

今の若い人たちは
十年後、二十年後を見据えている。
小さな幸せを見つけるのがじょうずだ。

こんな時代で…
という人もいる。
それはどうかな、と思う。
物差しなんてどこにもない。

後日夫が三男と会って聞いたハナシ。

新しい冷蔵庫の野菜室に野菜を詰めて、パタンと引き出しを閉めてから、二人でパチパチパチと拍手した、って。

ごちそうさま!



※画像はTapia(タピア)MJI編集部さんよりお借りしました。
ありがとうございます♪



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