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心のバロメーター

昨日学童保育で使用している幼稚園の庭先で、なんの用事か訪れていた70代くらいの男性と立ち話をした。
知らない方だ。

男性は、園庭でドッジボールをしている児童の中にいる、ブラジル移民のお子さんを指して(指さしたわけではない)、彼は肌の色が白く可愛らしい顔立ちであると言った。

そうしてひとしきり、(どうした経緯かは説明せず)自分は幾組かのブラジルからの移民家族の世話をしたことがあって、彼らの肌の色は一様でないと述べた。

言葉の使い方に配慮が足りないので、内心ハラハラしながら聞いていたが、地雷を踏むことはなく、親切で意外にグローバルな視点を持っていることがうかがえたので、ほっとした。


相槌のうちかたは難しい。
言いたいことは理解するけれど、同意はしかねるというのをきちんと伝えないと、知らぬ間に仲間にされたり、それどころか何かのおりに「あの人が言った」ということになりかねない。

実際そういうやり方の巧みな人というのがいる。
結論(真に言いたいこと)を曖昧にし、それが気になった相手に代弁させる。
うっかり言ってしまった方は、その結論が自分のものであるように取り違え、背徳の念を持つ。
そうなれば相手の思うツボである。
そのうっかり発言を人質に味方に引き入れ仲間を増やしていく。
人間関係は政治だ。
人をたくさん集めたほうが強い力を持つ。

そんな場面に遭遇したら、笑顔を貼り付けた間抜けな表情で遠くを見る。
心ここにあらずといった風情だ。


男性は、ブラジルを訪れたこともあるという。

私は筒井康隆の『農協月へ行く』という短編を思い出した。
男性が灰色っぽいベージュの作業着に、野球帽を被っていたからだ。

男性の話は続く。
アメリカは入国審査が厳しいので、サンパウロに行くにはドイツを経由するのだと言った。
ブラジルだけでなく、アメリカやメキシコ、カナダ、北欧にもでかけたと言う。

私は、自分は国内を出たこともないくせに、人を見かけで判断しているのはどっちだろうと恥じた。
男性は一方的に話をして、スッキリとした表情で園庭を後にした。

昨夜夫が点けていたテレビ番組『鶴瓶の家族に乾杯!』軽井沢が舞台。

偶然(のはずないけど)訪問した、いかにも裕福な家の家長は、対話の中では明かしていなかったが実は皇室と深い交流があった…

番組ゲストが偶然道端で出会った若い母親は、子どもをスケート教室に連れていくところだというのでリンクに同行した。
母親自身は「滑れない」と笑っていた。

しかし実は彼女は有名なカーリングの選手の兄だか弟だかとチームを組んで活躍した、元カーリングの選手だった…

種明かしはさりげなく番組の最後にされた。
この番組がどこまでいきあたりばったりでどこまで作り話なのかわからないが、少なくとも”そのように編集された”のを視ているにすぎない。
それでも、間にこのエピソードを組み入れるより好印象を持たれるのだろう。

他人の”よかった話”をどんな面持ちで聞くのかは、自分の心のバロメーターにもなりそうだ。


※お酒の画像はうるしばたみかさんよりお借りしています。
ありがとうございます♪



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