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改造詩人肆拾壱号「薔薇とアンドロイド」

死んだ大地に 打ち捨てられたジオラマ

瓦礫の森に風が過ぎ 

冷たい骨は砂になる

白い部屋で 一人佇むアンドロイド

窓の向こうに 広がる墓場眺める

与えられた役目を終えても 

硝子のボディはなめらかだった

生臭い情動を受け止め続けて 

電子の心は 数字を記録し続けた

歴史が止まり 行き場なくしたプログラム

”自由”なんて

ワタシは求めてなかった


主を失ったアンドロイド

汚れることなく

命令を待つアンドロイド

何もできずに


死んだ街に また風が吹く

一粒の種がやってきて

乾いた土に捨てられた

黒い地表に 一人佇むアンドロイド

ブリキの如雨露で 冷たい水を注ぐ

種は芽吹いて 枝を伸ばし 

肉厚の葉が 世界に色をつけた

太陽と月が 空を周り続けて 

歯車が呻きを上げるようになっても

硝子のボディは水をやり続ける

何のために

誰のためともわからず


主を失ったアンドロイド

埃にまみれて

命令を待つアンドロイド

何かを探す


幾千の夜を繰り返して 硝子のボディは朽ちていく

小さな種は根を張って やがて薔薇を咲かせる

電子の心がざわめいて 歯車は崩れていく

棘が刺さって

細い指は血を流す


主を失ったアンドロイド

ひとりぼっちの アダムとイブ

命令を待つアンドロイド

永い眠りがやってくる


主を失ったアンドロイド

数え切れない薔薇の花

命令を待つアンドロイド

やがて地上を覆うだろう






model:平井早紀

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