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釣り (そのあとに 完結編)

今回も引っ張った
前回までの続き、完結編です。

小学生達に導かれ、
自分の最後になるやも知れぬ
現場に到着。

そして、修羅場を指差す子供達。


「あそこ!!!」


もうどうにでもなれ!
そう決心してその先を…

『ん…?』

もっと先かと思いきや
その指先をもとに照準を合わせると
意外にも近い…?

『え?真下?』

薄暗くてよくわからなかったので
目を凝らして見えてきた
その現場がコチラ 

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要救助者側からの目線はコチラ

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そうなんです!
もう沖まで流されかけてて
それを助けるのかと思い込んでいたら…

現場上空から見たの詳細はコチラ

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きっとふざけて船に飛び降りて
その勢いで海に落ちてしまい
船につかまったまま
上がれなくなったようです。

『な、なんや、楽勝やん…』

さっきまでの恐怖と不安は何処へやら

『二次災害』

の朝刊の見出しは一気に

『おてがらヒーロー』

に転換されたのです!


こうなればこっちのもの!
軽く腕まくりをして

『坊主!今ぁ助けてやるから

   その手、離すんじゃねぇぞ!』


と、
要救助者を安心させる声かけをし、
なるべく振動を抑えるようにして
船に飛び移りました。

ここまで来たら後はもう
ヒーローへカウントダウン!
少年を引きあげるだけ。

少年の手を掴み
せーの!とばかりに引っ張りました。


が、


引っ張っる勢いで船が傾く。
現状はさっきと変わらない。

あれ?!

と、
さらに力強くえい!と引っ張る。

すると同じ力で船が傾く。

いくらやっても事態は変わらない。

焦るヒーロー。

『これではダメだ…。』

ここは冷静に
頭の中のヒーロー大事典を
紐解きました。

そうだ!
ついこないだテレビで
こう言う場合は腕を持つのではなく
ズボンやベルトを、
つまり腰辺りを持って
引きあげると良いって
見たとこだった!
ここからヒーローへの図式は
出来てたんだ!

それを思い出して
少年のベルトを掴み一気に!


あ、


上がらない…、


な、なぜだ?!


セオリー通りなのに?!


当時音響で働いていたので
力には程々に自信がありました。
それなのになぜ?!

ええい!
悩んでる場合じゃない!
これしか方法はないんだ!
やるしかない!

渾身の力を込めて数回目に
ようやく引っ張りあげました!

やった!

自身も尻もちをつき
息を切らせながらも
ヒーロー誕生の瞬間に酔いしれました。

「わー!」

小学生達から歓喜の拍手が起こります!

その子達に
軽く右手を上げて応えるヒーロー。

そして、引きあげた子に
声を掛けようとその子を見ると

何ともまぁ、
そりゃ、あがらないわ💦

それもそのはず、その子は
みのる少年を彷彿させるくらいの
おデブちゃんだったのです💦

よそから見たら絵本の

『おおきなかぶ』

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やん😅

自分の少年時代を見てるようで
親近感をおぼえながら

兎にも角にも助かって良かった!

ようやく安堵の気持ちが溢れました。

さて!
あとはこの子を岸に上げてやれば
ヒーローの完成!

「そろそろ、上がるか?」

「うん」

「よっしゃ、手伝うから上がり」


船から岸まで
ほどほどの高さがあります。

子供では手が届かないので
背中から脇をかかえ
ヨイショ!と

上がりません。

『わ、忘れてた…』

ただでさえ足場が悪いし
荷重をかけると船が傾くし
そう!しかもおデブちゃんだし💦

でもこんなところで
ヒーローは諦められません。
また渾身の力を込めてえいや!と
持ち上げ、なんとか岸のへりを掴ませました。

「おーい!君らも引っ張ってやって!」

友達達にも協力を求めました。
まさにおおきなかぶのエンディング(笑)

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こっちは
下から肩車のようにして
頭で少年のお尻を持ち上げ
フォローする。

友達達は手を掴んで引っ張り上げる。

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そして、ようやく!
完全に救助成功を遂げたのです。

楽勝かと思いきや
こんなにも大変だなんて💦
まぁ、でも二次災害よりマシか。

と岸を見上げると


「おっちゃん!ありがとー!」


と、すぐさま走り去る少年…。


『お、おっちゃんて、

 ヒーローに向かって何ちゅう言い方…』


さっきは自分でおっちゃん言うたけど
大人の謙虚を踏みにじりやがって…。


『最近のガキ共は…』


まぁ、ありがとう言うだけマシか。


辺りはそろそろ真っ暗。
早く帰ろう、と
岸に手をかけ、
自分も上がろうとしました。


が…。


さっきの救助で
全体力と腕の力を使い切ってしまい
気付いたら手も膝も
ガクガクと震えてる😅

いくら踏ん張っても
まったく岸に上がれる状態じゃなく…。

まだ春先で日が落ちると寒くなって
さっきの汗が冷えてくる💦

『こんなの体力の回復を待ってられない!』

一か八か!
残った力を振り絞って…


『…!』


「ダメだー!

 くそガキどもー!助けて行かんかい!」


焦りがヒーローの純粋な心を曇らせる。

いくらがんばっても
どんどん体力を消耗していくばかり。

もう限界は見えています。

仕方なく、残った力で


「助けて〜、助けてくださ〜い」


そうか弱い心の叫びをあげるしか
ありませんでした。


そんな時、たまたま通りかかった
漁師さんと思しき男性が!

これがラストチャンス!

とばかりに、

「お願いします!助けてください」

そう懇願しました。


ボクに気が付いた漁師さん。
驚きながらも

「なにしとんねん?」

と、声をかけてくれました。

「いや、あの、小学生を助けようと…」

「小学生?そんなんどこにおる?」

「いや、さっきまでここに…」

「どこにもおらんがな」

「と、とにかく手を貸してもらえませんか?」

「しゃあないなぁ」

と、
漁師さんの力強い手で
引き上げてもらいました。

「あ、ありがとうございます💦」


「にぃちゃん、ええ歳こいて、

  ええ加減にしとかなあかんで。」


「ほんで、何しとってん?」

「事と次第によったら

   警察に突き出すとこやで」

「い、いや、それは…、」

「だ、だから小学せ…、」

「す、すみま、せん…」


と、ヒーローから一転。
危うく御用となりかけました。

なんとか漁師さんに説明して
情状酌量となり、


「ほんまに最近の若い奴は」


の捨て台詞を吐き去って行く

『ボクのヒーロー』

を見送って
家路につきました。


『おじさん、とんだゴカイです…』


おしまい

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