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CONCERT REPORT! (1) 2022年8月4日 『角野未来 ファーストリサイタル』

 2022年8月4日(木)、J:COM 浦安音楽ホール コンサートホールにて、『角野未来 ファーストリサイタル 〜IMPRESSIONNANT〜』を開催いたしました!

 現在東京藝術大学大学院音楽研究科で学びながら、すでにソロから伴奏まで多彩に演奏されている角野未来さんですが、リサイタルはなんと今回が初めて。
 記念すべきその舞台を弊社主催で開催いたしました。

 今回のリサイタルでは副題に "impressionnant" というフランス語を採用。角野さんがお得意とする、近代フランス音楽の『印象派 "Impressionnisme" 』に因みつつ、角野さん自身が「演奏を一度聴けばたちまち引き込まれて『印象的な存在(impressionnant)』になるピアニストであるという事も意味づけられています。

 プログラムは、角野さんが愛してやまない3名の作曲家、クロード・ドビュッシー、フレデリック・ショパン、そしてモーリス・ラヴェルの作品で構成されています。当日配布したプログラムの楽曲解説は角野さん自身にお書きいただきましたが、各作曲家への思いがたっぷりと詰まった素敵なものとなりました。

DESIGN: TKD DESIGN OFFICE

 最初のリサイタル、多くのお客様に駆けつけていただき、会場はほぼ満席となりました。開演時間。照明が落ちて静けさに満ちた中、角野さんが颯爽と登場。前半は鮮やかな水色の衣装です。

 最初はドビュッシーの作品『前奏曲集』より3曲を続けて演奏。
 明るく爽やかな空が広がるような「アナカプリの丘」で幕を明け、「音と香りは夕暮れの大気に漂う」では名の通り「夕暮れ」を思わせる気怠さと不思議な雰囲気に。そして最後は暗闇に壮大に上がる「花火」へ続きました。
 時間の流れを感じさせる構成を、風や水を感じさせるような滑らかな音の運びで演奏する角野さん。リサイタルの美しい雰囲気を一気に作り上げました。

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©︎ Yuri Takamiya

 そのままもう1曲、同じくドビュッシーの『喜びの島』
 『喜びの島』への巡礼の船を待つ、恋の成就を目論む男女たちの浮き立つような様子を描いた作品で、楽しさに溢れた曲想が次から次へと現れるこの曲。角野さんが「リサイタルで演奏したかった曲」と語る通り、メリハリを効かせながら生き生きとした表現で駆け抜けます。

 リサイタルは一旦ここで小休止。角野さんによるMCでは、ご来場いただいたお客様への感謝や各曲への思いを語られつつ、「コンサートという非日常・特別な空間での時間を、いろんな形で楽しんでいただきたい」と述べられていました。

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©︎ Yuri Takamiya

 前半最後は2人目の作曲家・ショパンに移り、『アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ』を演奏。アンダンテ・スピアナートでは、低音のアルペジオを流れるように奏でながら、美しい旋律を柔らかく聴かせます。一転、後半・ポロネーズはリズムをはっきりと出しながら前へ前へと進んでいく、颯爽たる演奏。リサイタルは前半ながら堂々たるクライマックスとなり、大喝采と共に休憩へと入りました。

©︎ Yuri Takamiya

 なお、角野未来さんは、11月9日(火)にすみだトリフォニーホール小ホールで開催する『角野未来 ショパン:ピアノ協奏曲[室内楽版]全曲演奏会』でも同曲を披露いたします。もともとはオーケストラとピアノのためのこの曲、次回・11月には若手実力派の揃う弦楽五重奏と共に、この曲の当初の形に近い姿で演奏いたします。

公演・チケット詳細はレポート最後に!

 リサイタル後半。ステージは照明が落ち、ピアノをスポットライトが照らします。暗い雰囲気の中に怪しい美しさを持つ後半の2曲に寄せた、角野さんのこだわりです。衣装もエレガントな紫色のドレスへチェンジ。
 前半のMCで語られた「演奏会をいろんな形で楽しんでいただきたい」というお気持ちが演出の様々な部分から感じられるリサイタルです。

 後半1曲目はショパンのバラード第2番
 素朴な曲想を優しく歌い上げる前半、そして対照的に、吹き荒れる嵐の様に激しく駆け抜ける中間部。角野さんは対比的な雰囲気をダイナミックに表現しつつも、その両者を表裏一体にまとめ上げて、妖しくも美しい雰囲気を見せます。前半の溌剌とした若さ溢れる雰囲気から一転、ショパンの内面性を感じるような演奏です。

©︎ Yuri Takamiya

 そしてプログラムの最後を飾るのは、この日3人目の作曲家、モーリス・ラヴェルの『夜のガスパール』。同時代の無名の詩人・アロイジウス・ベルトランによって書かれた同名の詩集から、3篇をもとに作曲された作品です。

 第1曲「オンディーヌ」では、水の精の姿を思わせるような流れるような響きが続きますが、その流麗な響きを柔らかいタッチでコントロール。同時に曲の色の移り変わりも見せて、劇的な展開を聴かせます。
 第2曲「絞首台」は、密やかな音楽ながら、絶えずなり続ける鐘の音と不穏な響きが落ち着かない恐怖感を生み出します。
 そして最後、第3曲「スカルボ」では、作曲家自身が「最も難しいピアノ曲」と語った、神出鬼没・悪戯好きの悪魔・スカルボが飛び回る様子を再現した超絶技巧の数々を、一気呵成、淀みない表現で見事に演奏。じっくりとしっかりと組み立てられていくクライマックスには自ずから心が高揚していき、圧巻のフィナーレとなりました。

©︎ Yuri Takamiya

大きな拍手に包まれる中、お客様へご挨拶ののち、アンコールを披露。

 1曲目・ドビュッシーの「夢想」では、ゆったりと美しい雰囲気で『夜のガスパール』から続く夜のイメージを穏やかに引き継ぎます。最後はショパンの練習曲 Op. 10-8。高音の煌びやかさと、低音の力強いリズムの鮮やかな演奏で、リサイタルを華やかに締めくくりました。

 自身のこだわりを詰め込んだプログラム、そしてリズム感と色彩感で曲の魅力に引き込んでいく、そのピアニストとしての魅力も存分に見せた演奏は、華々しいファーストリサイタルにふさわしい内容となりました。
 角野未来さんの今後のますますの活躍が期待されます!

(文:藤原 健太)

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©︎ Yuri Takamiya

角野未来
 Official Web Cite:  https://www.mirai-sumino.com
 YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCg6jdnnF_QuRkNsS_BROZbA

角野未来さん出演演奏会のご案内

『角野未来 ショパン:ピアノ協奏曲 [室内楽版]全曲演奏会』

日時:2022年11月9日(水)開場 18:00 開演 19:00
会場:すみだトリフォニーホール 小ホール
   (JR・東京メトロ「錦糸町駅」より徒歩5分)

出演:角野未来(ピアノ)
   レグルス・クァルテット
   (Vn. 吉江美桜、東條大河 Va. 山本周 Vc. 矢部優典)
   森田麻友美(コントラバス)

チケットぴあ にて販売中
   一般:4,000円 学生:3,000円
   URL:http://ticket.pia.jp/pia/event.ds?eventCd=2207955


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