「得点王=最も優れているFW」は本当か?Case:プレミアリーグ [ストライカーをデータで比較]
今回は、試合の分析ではなく、データ分析です。タイトルの通り、データ分析の題材は、「ストライカー」です。得点王が、チームの勝ち点に、勝利にとって一番貢献しているストライカーなのかを2つのデータから解き明かしていきます。
今回は、イングランド1部、プレミアリーグです。(この記事に書かれている試合数、得点数などは、2019年3月のインターナショナルマッチウィークによる中断前、31節時点のものになります)
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まず、皆様、「サッカーデータ革命 ロングボールは時代遅れか」という本はご存知ですか。この本の中で、ストライカー個人ではなく、個人のゴール数ではなく、チームという視点で見た時、チームが勝利、勝ち点を得るにあたって、一番重要なゴールは、2点目である、という研究結果が書かれています。(その次が1点目、3点目、4点目、5点目と順に続く)ということは、3点目や4点目ばかり取っている20ゴールのストライカーより、1点目、2点目を多くとっている15ゴールのストライカーの方が、チームの勝利、勝ち点にとっては(ブランド価値などは置いておいて)価値が高い選手だということです。
そこで僕は、このデータを今シーズン(18-19シーズン)の欧州4大リーグに当てはめ、さらにどれだけコンスタントにゴールを取っているか、というデータも加えることで、得点ランキング上位者から、チームの勝利、勝ち点にとって最も優れたストライカーを選出しよう、と考えました。その結果が、下記にあります。
ぜひこの本に興味がある方は、読んでみて下さい。自分のサッカー観を変える、さらに深い物にするデータがたくさん詰まっています。
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得点ランキング上位7人の概要
まずこれからデータ分析をするセリエA得点ランキング上位7人の概要から。
得点ランキング1位 アグエロ 28試合18得点(2PK)
マンチェスター・シティ 30歳 プレー時間:1979分
得点ランキング2位タイ オバメヤン 29試合17得点(3PK)
アーセナル 29歳 プレー時間:2312分
得点ランキング2位タイ マネ 29試合17得点
リバプール 26歳 プレー時間:2547分
得点ランキング2位タイ サラー 31試合17得点(3PK)
リバプール 26歳 プレー時間:2758分
得点ランキング2位タイ ケイン 26試合17得点(4PK)
トッテナム 25歳 プレー時間:2364分
得点ランキング6位 スターリング 24試合15得点
マンチェスター・シティ 24歳 プレー時間:2245分
得点ランキング7位 アザール 26試合13得点(4PK)
チェルシー 28歳 プレー時間:2454分
これら7選手でデータ分析を行っていきます。
最も多く価値の高いゴールを挙げている選手は?
最初は、紹介した「サッカーデータ革命」に書かれているデータである、「2点目が一番重要なゴール」という結果をもとに、プレミアリーグリ得点ランキング上位7人を、ランク付けしていきます。では、それぞれのゴールのポイント換算基準はこちら。
この画像のようにポイント換算を行い、7人をランク付けしました。結果の前に、7人の得点内訳をご覧ください。
グラフを見ると、1点目のゴール数は、サラー(得点ランキング2位タイ)が一番多く、2点目はオバメヤンが8ゴールで最多。
また、1点目のゴール数が一番多いサラーですが、「最も価値の高い」2点目は、2ゴールだけ、と最も少ないことが分かります。プレミアリーグの優勝争いを演じているリバプールの「エース」と認識されているサラーですが、実はエースではないのかもしれません。その「サラーがエースは本当か?」の結果も書いていますので、どうぞ最後までお楽しみください。
では、この内訳をポイントに換算してランク付けしたものがこちらです。
結果としては、全く順位の変動はありませんでした。2位タイの4人に順位がついたのみ(しかも僅差)。得点ランキング通り、多くゴールを取っている選手は重要なゴールも多い、という結果です。なので、プレミアリーグは「得点王=最も価値の高いゴールを多く挙げるFW」があてはまるリーグだということです。
そして、下の表は、他5人とのポイント差を「計」で表しています。このデータ分析では、その他5人とのポイント差で、最終的なランク付けを行います。(得点差は、正の数が他5人よりも上回っていることを示しています)
得点の勝ち点換算ランキング 結果
得点ランキング1位のアグエロがそのまま1位になっただけでなく、2位タイの4人に順位が就いただけで、得点ランキングの順位がそのまま反映された。プレミアリーグは、「得点王=最も価値の高いゴールを多く挙げるFW」が当てはまるリーグである。
最も一番コンスタントにゴールを取っている選手は?
では2つ目のデータです。2つ目は、ゴールを取っている頻度、「コンスタント度」が高いのはどのストライカーか、というものです。このデータは、その選手の総プレー時間/ゴール数で、1ゴール当たりにかかった時間を算出しました。では、結果をご覧ください。
こちらも、得点ランキングとほとんど順位変動はなし。サラーとスターリングが入れ替わったのみです。この結果は、「得点王=最もコンスタントなFW」もプレミアリーグは当てはまるということになります。
また、ここまでの2つのデータで、擁護の余地があります。スターリング、アザールが最下位になっているわけですが、2人共WGの選手なので、まぁそれは仕方ないでしょう。ストライカーではないので。
得点のコンスタント度ランキング 結果
このデータもサラーとスターリングの入れ替えのみで、ほとんど得点ランキングの順位と変わっていないので、プレミアリーグは「得点王=最もコンスタントなFW」が本当で、当てはまる。
2つのデータを合算 ~「得点王=最も優れたFW」は本当か?~
ではここまで紹介した2つのデータの結果を合算し、重要なゴールの多さと、コンスタント度の合計の数値を出すことで、「得点王=最も優れたFW」は事実なのかを検証しましょう。その答えが、下の画像にあります。
ここまで紹介した「得点の勝ち点換算ランキング」「ゴールのコンスタント度ランキング」の2つ共がほとんど得点ランキングからの順位変動がなかったので、得点ランキングと同じような順位になりました。アグエロが圧倒的1位で、最も優れたストライカーという結果です。得点ランキングからは、サラーとスターリングが入れ替わりました。
ここで一つ気になるのが、サラーです。サラーは6位で、ポイントは-101。同じ2位タイのマネ、ケイン、オバメヤンとはかけ離れています。つまり、サラーのゴールはチーム(リバプール)の勝利にとってあまり重要ではなく、同じ2位タイの選手と比べてコンスタント度が低いということはもっとゴールを取っているべき、ということです。
もう一つ気になるのが、マネです。サラーとマネはリバプールという同じチームでプレーしていて、ゴール数も同じ。この2人で、どちらがリバプールのエースかと言われると、メディアはサラーという認識だと思いますし、多くのファンもそう答えるでしょう。
ですが、この2つのデータでは、マネのポイントが大きく上回っており、マネがエースだと言うに十分な結果を示しています。昨シーズン(17-18シーズン)はサラー32ゴール、マネ10ゴールですので、サラーがエースという評価は当然ですが、今シーズンは、サラーではなくマネがエース、という評価が正しい、という理論が成立します。
結果・総括
2つのデータ分析を読んで頂いたように、プレミアリーグでは、得点ランキングと「得点の勝ち点換算ランキング」「得点のコンスタント度ランキング」には完全にではないですが相関が見られ、アグエロが最も優れたストライカーです。プレミアリーグの場合「得点王=最も優れたFW」は本当だ、という分析結果でした。
個人賞
得点の勝ち点換算ランキング1位:セルヒオ・アグエロ 2位:ピエール=エメリク・オバメヤン 3位:サディオ・マネ
得点のコンスタント度ランキング1位:セルヒオ・アグエロ 2位:ピエール=エメリク・オバメヤン 3位:ハリー・ケイン
1ゴール目数1位:モハメド・サラー
2ゴール目数1位:ピエール=エメリク・オバメヤン
最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!
他の3本もどうぞ↓
case:ブンデスリーガ
case:セリエA
case:ラ・リーガ
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