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大事なのは、補い合うこと。『タリーと私の秘密の時間』

前回書いたシフト制映画鑑賞で妻が最初に観た映画は『タリーと私の秘密の時間』でした(もう上映は終わっているはず)。

今思えば、なんだか運命的な気さえします。

「わたし、ひとに頼れないの」──仕事に家事に育児と、何ごとも完璧にこなしてきたマーロだが、3人目の子供が生まれて、ついに心が折れてしまう。そんな彼女のもとに、夜だけのベビーシッターがやって来る。
(公式サイトより)

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『アトミック・ブロンド』で強靱な“闘う女”を演じたシャーリーズ・セロンが18キロも増量し、やり過ぎなほど体型を崩して“疲れきった母”マーロに扮します。圧巻。

彼女の名前はタリー、年上のマーロにタメグチで、ファッションやメイクもイマドキ女子だが、仕事ぶりはパーフェクト。荒れ放題だった家はたちまち片付き、何よりマーロが笑顔と元気を取り戻し、夫のドリューも大満足だ。
(公式サイトより)

アメリカではベビーシッターを雇うことはさほど特別なことではないのかもしれません。ですがマーロは見知らぬ他人に赤ん坊を預けることに抵抗を示すので、日本人の僕らが観ても違和感ありません。

さらにタリーは、マーロが一人で抱え続けてきた悩みの相談にのり、見事に解決してくれる。だが、タリーは何があっても夜明け前に姿を消し、自分の身の上は決して語らない。果たして彼女は、昼間は何をしているのか? マーロの前に現れた本当の目的とは──?
(公式サイトより)

妻から一週遅れで観て真っ先に思ったのは、マーロはうちの奥さんだ!ということ。育児あるあるのリアリティは、万国共通なのね。映画序盤の主人公がどんどん疲れていくさまは、こどもがいない時期に観ていればやや過剰演出かな?と思ったかもしれません。とんでもない。

自分はベッドでゲームに夢中の夫です。ごめん。

マーロは何でも自分でやってのけようとする女性だから夫には助けを求めません。夫はヘッドフォンつけてゲームに興じていて何も気づかない。ばかやろう。

だけどこの夫も決して育児に無関心だったわけではないのです。正確に言えば、妻に無関心だったということ。

家族というシステムを問題なくキープし続けるために、まず目をやるべきはその中でいちばん疲れている人に対してであるべきで、夫はマーロの顔を見て、マーロの言葉に耳をかたむけるべきなんです。ヘッドフォンを外して!



なんだか育児あるある映画みたいに紹介してしまいましたが、物語は後半にむかって予想外の展開を見せます。

僕の大好きな映画『○○○○・○○○』に構成が似ていて、クルマのシーンなんかも符合するような気がするのですが、それについて書くとネタバレなので伏せておきます。観た人、語り合いましょう。

でもでも。この映画の真の価値、と言ったら大げさですが、素晴らしいのは、昼も夜もない赤子のお世話と情緒不安定な長男たち2人のこどもの面倒も同時に「完璧に」看ようとする母親の姿を、完膚なきまでに克明に描いたところ。「なにもかも完璧でなくていいんだよ」と主人公に言ってあげたくなると同時に、その言葉はあなたにも返ってくるのです。



娘の誕生の前後でハッキリとものの感じ方が変わったことを実感した映画でした。『タリーと私の秘密の時間』、とくにパパママになりたての人に観てほしい映画です。

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