見出し画像

〈30〉大失敗のブルーベリージャム/一瞬で成功に変えた魔法の言葉

毎年、毎年、庭のブルベーリーが豊作だ。去年に続き今年も4キロ収穫した。およそ1ヶ月にわたり、熟した実から摘んでは洗って冷凍庫に入れていく。ブルーベリーで満杯になった冷凍庫の引き出しを開けるたび、幸せな気持ちになった。よーし、今年もジャムを作るぞぉ。

実が熟すのは夏の暑い盛りだから、涼しくなるのを待ってジャムにする。大鍋で煮たり、保存用のガラス瓶を煮沸消毒したりするので、暑い時期には向かない作業なのだ。今年はいつまでも暑さがだらだら続いたが、10月中旬、涼しい風が吹いてきた。よしよし、一気に作って、近所に配ろう!

画像4

と、意気込んだが、なぜか失敗した…。プルンとしたジャムをつくるつもりが、できたのは固まってないトロッとしたソースだった。

ブルーベリーには、もともと他の果物よりペクチンという固まる成分が少ないらしい。たとえばリンゴだったら、リンゴ自身がペクチンをたっぷり含んでいるので、砂糖とレモンを加えて煮るだけで簡単にジャムになる。そのペクチンが少ない果物の代表格がブルーベリーだ。だから市販の製菓用のペクチン(パウダー状)を買って加える。

じつは一昨年も同じ失敗をした。だから去年は「ペクチン」を買ってきて、大成功したのだ。まるで市販品のように果汁部分がプルンとしたジャムになった。もちろん今年もちゃんとペクチンを用意して、ちゃんと加えた。だけど、固まらなかった。

原因はわからない。冷凍ブルーベリーの量が多すぎて、鍋の中で自然解凍状態になっのがいけなかったのかも。せめて半量のブルーベリーでつくればよかったのかも。一度に作ろうなんて横着したのでバチが当たったのかも。それよりペクチンの量が少なかったのかも。レモンをもっと増やせばよかったかも。後悔はいっぱいある。大鍋いっぱいのブルーベリー“ソース”ができてしまった。

ボーゼン自失。

でも、そのままでは台所が片付かない。用意した大ぶりのガラス瓶を煮沸し、ブルーベリーソースを入れて蓋をしっかり閉めていった。見事に12本の瓶詰めが出来上がった。失敗作を近所に配る気はしない。瓶が冷えたそばから、再び冷凍庫に並べていった。

帰宅したNさん(オット)に「ブルーベリージャム、失敗した」と告げた。「残念だったね。何が悪かったのかねぇ?」と聞かれて、思いつく限りの原因を並べていたら、腹が立ってきた。こっちが聞きたいよぉ、何が悪かったのか。その日、かなり落ち込んでしまい、早々にフテ寝した。

画像4

翌日、市販のヨーグルトに、失敗したブルーベリーソースをたっぷりかけて2人で食べた。「美味しいけどなぁ」ポツリとNさん。「そうなのよ。味はいいのよ。きび糖の量もちょうどよくて。美味しいのはオイシイんだけどねぇ。固まっててくれたら…」

「でも、すごく美味しいよ」と再びNさん。

その一言で私は目が覚めた。そう、ヨーグルトと一緒に食べればとーっても美味しい!ベリーの実の残り具合いもいいし、甘さもほど良くて。2人とも美味しいんだったら、みんなも美味しいに違いない。何も市販品と同じものをつくる必要はない。私は、冷凍した瓶を取り出し、ご近所の4軒に配った。「失敗してジャムにはならなかったけど、味はいいんです。ヨーグルトにかけて食べると美味しいです!」と説明しながら配ると、みんな嬉しそうだった(そう見えた)。ああ、良かった。喜んでもらえて。

ふと、アンデルセン童話の「くさったリンゴ」を思い出した。

農家の旦那さんが、飼ってる馬で何か良いものを得ようと出かけ、馬を牛に、牛を羊に、羊をガチョウにという具合に交換していって、最後にくさったリンゴに取り替えて帰宅する。普通なら怒られそうだ。でもおかみさんは「父さんのすることはいつも良し」と褒めてチュッとしてくれたってお話。すごくポジティブなおかみさんが、旦那さんの失敗を大成功に変えてくれるのだ。Nさんの「すごく美味しいよ」は、そのおかみさんのセリフくらいポジティブだった。ありがとう、Nさん!

画像4

てなわけで、落ち込んで泣いたのも忘れ、私は毎日、ヨーグルトにたっぷりブルーベリーソースをかけて楽しんでいる。あんなにたくさん作ったけど、一年持つか心配なくらいの勢いで消費している。来年こそは、きっと思い通りのプルンとしたジャムをつくってみせる!

ブルーベリーの木はそろそろ紅葉してきた。冬には葉を落とす。来年も豊作だといいな。Nさんに頼んで、たんと肥料をやっといてもらおうっと。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?