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【登山記】龍は天に爪を向く 双耳峰竜爪山と縁起の良い欅立山へ

竜爪山へ

 静岡県の形を思い浮かべていただきたい。その角に当たる場所を奥静と言う。安倍川の上流域、そこには梅ヶ島温泉や井川ダム、南アルプスなど自然が豊富に残っており、静岡茶やワサビの栽培、ウイスキーの製造も盛んだ。 
 オクシズ地域は、こうした自然が豊かに残る美しい場所であり、今注目の地域だ。旨いものも多い。自然を生かしたアクティビティも近年充実している。
 静岡の少し開けた場所から北側の山々、つまりオクシズを見ると、天に爪を向いたような特徴的な形の山がある。それが竜爪山だ。
 竜爪山は、薬師岳と文殊岳という二つのピークがある双耳峰とも呼ばれる山である。国道一号の静清バイパスを降り、和田島方面へひたすら上っていく。途中にも立ち寄りたい山々があるが、それを越えた山奥に穂積神社がある。ここがマイカーで行ける、もっとも竜爪山に近いハイキングのスタート地点だ。
 ここに至る途中にも穂積神社への参道=登山道があり、そこから楽しむコースもあるようだ。だが、今回は竜爪山がメイン。
 穂積神社は、道路からぐぐっと下に降ったところにあり、駐車スペースもそこそこある。登山の無事を祈ってから登ろう。

オクシズにひっそりとある穂積神社

 この穂積神社には、山の民の信仰があった。その神威を頼り、静岡県東部には、ここから勧請された神社がいくつかあるそうだ。
 穂積神社に至るまでに、すでに何かしらの力を感じられる。やはり龍の名を持つ山だからだろうか。

竜爪山の由来はこのほかにもあるようだ

夫婦杉を越えて、階段地獄へ

 竜爪山への登山口は、穂積神社の拝殿の裏にある夫婦杉をくぐった先にある。すっくと立つ杉の古木が、圧倒的なパワーを浴びさせてくれる。自然と元気になる。
 その力をいただきながら、一つ目のピーク薬師岳へと向かう。

すっくと立つ夫婦杉

 道は、木の根っこが荒々しく露出しているが歩きやすい道だった。地元の方なのだろうか、人の手がしっかりとは入り、歩きやすく整備されていると思った。
 途中からは鉄製の階段が登場する。ずっとこの階段を昇って行ってもよいのだが、なにか味気ない。
 登山ガイドを見ると、この階段を昇らずとも、山裾を巻いていく登山道もあるとのこと。せっかくのハイキング。山道を登りたいところだが、階段地獄を上るのもまた一興。人それぞれの楽しみがあっていいと思う。
 もしかしたら崩れやすい地質故に、山を守るために鉄製の階段が出来たのかもしれない。

山裾を巻く道もある そちらもお薦め

薬師と文殊のピークへ 見晴らしの良い場所で一服

 ハイカーとすれ違った。「山頂はすいていますよ」と声をかけてくださった。何度も登っている人のようだ。ねじり鉢巻きに、ラフな服装で、こなれた風体だった。この日は、真夏の平日だったが、他にも多くのハイカーとすれ違った。改めて人気の山だと思う。
 穂積神社から三十分ほど登り、汗が大量に噴き出てくる辺りで、山頂まで四十分の標識があった。勾配がきつく、初心者向けの山とは言うが意外ときつい。
 休み休み登っていくと、やがてなんとなく山頂が近づいた空気が漂ってきた。とりわけ急で、長い階段が現れ、それを登りきると分岐点があった。
 ここは東海遊歩道の一部ということもあり、いろいろな山への連絡があるようである。

幾つかの分岐がある

 竜爪山の他に、時間があればもう一つの山を目指しているため、浮気したい気分を堪え、薬師岳へ向かう。
 しばらく歩くと眺望の効かない頂上(薬師岳)へ出る。山頂に祀られた地蔵堂に手を合わせ、写真だけ撮ると、次のピークの文殊岳に足を向けた。

薬師岳の山頂 小さな社がある

 薬師岳の次は文殊岳だが、いったんかなりの高さを下る。よく整備されているので危険はない。そしてすぐに緩やかな登りが始まる。
 薬師岳手前のつらい坂を思い出し、この後急坂があると覚悟していたのだが、思ったよりも急勾配ではなかったため、あっけなく文殊岳に着いた。

文殊岳山頂 食事がとれるテーブルなどもある
清水の町並みと清水港が見える

 文殊岳の山頂には、既に何組かのグループがおり、ちょうどお昼ごろだったこともあり、思い思いの食事をとっていた。
 眺望の開けた南側に清水港が見えた。靄が晴れれば、遠くの島まで見通せただろう。良い眺望が拝める場所だと思った。
 頂上には一等三角点があった。

 余談だが、この時私はかなりハードなダイエット中だったため、おにぎりなどの炭水化物ではなく、バームという脂肪燃焼効果があるという飲み物を飲んだ。これは不思議なもので、実際に体の中で脂肪が燃えて、エネルギーに代わるのが分かるような気がする。
 私は登山やハイキングには必ず携帯している。

けやき立山へ

 ここまでの登頂時間は、思いのほか早く、可能であれば登ろうと思っていたもう一つの山、欅(けやき)立山を目指すことにした。
 けやき立山とも、ブナ立山とも読むらしい。どうやら明確な名称が決まっていないところのようだ。一抹の不安を覚えながらもと来た道を下る。歳をとると下山がきついというが、下りの階段が意外と膝に来た。
 夫婦杉まで戻り、穂積神社に無事の登山のお礼をした。しばし自分の車の中で涼んだ。

穂積神社へ下る道

縁起の良い パワースポットとして人気 末広がりの八八八

 欅立山は、最近人気が出てきた山らしい。その理由は後に述べる。しかし、私が登った2021年では、あまり情報がなかった。登山道入り口の写真が載っているが、場所がよく分からなかった。どうやら穂積神社から道路に戻ったその反対側であることらしいと見当をつけた。
 道を渡ると確かに小さな看板があった。分かりにくいので写真を載せておく。看板には高山・帆掛山と書いてある。 

穂積神社に下る道の反対側
欅立山はこの途中にある

 登山道は、あまり踏まれている道ではないようである。少し寂しい荒れた道をぐいぐいと登っていく。
 登山ガイドには、涼しげな木陰とあったが、言い換えれば単調な林道が続く。途中迷うほどではないが、標識も少なく不安に思う場所もあった。
 基本的には一本道であり、黙々と四十分ほど歩くと、少し開けた広場に出た。
 そこが欅立山のピークだった。
 眺望が効かない、あまり達成感のない場所だったが、ここの売りはそれではない。標識をよく見てほしい。
そうここの標高は八八八.八
 末広がりの八が並ぶのである。そういう意味でパワースポットだ(笑)

縁起の良い山だ
ケヤキ立山のピーク付近の大きな木 すこし不思議な感じがある

 今回の山行では、龍にまつわる伝説のある2つのピークを踏むことが出来た。また夫婦杉のすっくとした気持ちの良い姿を拝むこともできた。
 そして、縁起の良いパワースポット(笑)。
 龍伝説のある竜爪山と末広がりのめでたい欅立山。登山初心者向けの山なので、手軽なパワースポットとしてチャレンジしてみてはどうだろうか。

この記事は、以前公開したものを再編集したものです。

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