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【紀行文】高層ビル群に浮かぶ江戸の空間 旧芝離宮恩賜庭園

 新橋で降りることはあったが、浜松町で降りたのは初めてだったかもしれない。高層ビルが立ち並ぶなか、どことなくぽっかりとした感じがあるのは、ここが海だったからかもしれぬと思った。
 江戸の地図を見ると、増上寺の周辺には大名屋敷が並んでおり、交通の要衝ではあったようだ。
 私がよく見ている海面上昇シミュレーターでこのあたりをみてみると、意外と高く、増上寺の近くの芝公園内に縄文時代の古墳があることなどから、古くから人々が暮らした土地であったようだ。

蒼空と新緑の対比が美しい。奥に見えるビルがSFの世界のようだ

 浜松町には、劇団四季の劇場があり、その公演のために来た。せっかくなので有名な一度浜離宮に寄ってみたいと思っていた。
 しかし、時間の都合が合わず浜松町駅と劇場の間にあったこの旧芝離宮恩賜公園を散策することにした。

古めかしい門構え

 前知識はほぼなく案内看板を読むと、徳川家に所縁のある庭園であったようだ。明治期に宮内省が買い上げ「芝離宮」となったと書いてあった。現在名勝指定されている文化財であるが、高層ビル群の中にぽかりと浮かぶ異空間のようで、写真を撮ると奇妙な感じだった。

旧芝離宮恩賜公園の由来看板
都会のビルに囲まれながらも、庭園の姿を今に残している
広々とした庭園内には、くつろいだ様子で散歩する住民と思われる気楽な人たちが大勢いた
池に映る逆さ高層ビル

 庭園内は広々としており、整った樹木の形、自然地形を生かしたであろう小山などが、目を楽しませてくれる。
 池の水は、回遊性がないためだろうか、若干の臭気を感じるが致し方なかろう。金沢の兼六園のような隅々まで行き届いた手入れの様子はなく、蜘蛛の巣がみえる植え込みなど、ほどよく手抜きというか、気が抜けているのが逆に好感が持てた。

園内で見どころと思われる場所の写真をいくつかご紹介

九尺台とある高台。昔は波打ち際にあったそうな。
わざわざ小田原から運んだ?石柱
中島への石橋 中国の水墨画にあるような庭園を意識して作られたのだろう

 江戸のかなり初期からある庭園のようで、中国の水墨画や仙境を意識した作庭の跡が見える。当時は、海水を引き込んだ回遊式の池だったようだが、高層ビル群が立ち始めたころから、工場汚水が混じり始め、海水の引き込みは停止された。今でも引き込み口は存在しており、見ることが出来る。
 往時は、波打ち際にあり、小高い丘からは、のんびりとした漁師の網引きなどが風物としてあったのだろう。その雰囲気はわずかながらに歴史の残香として残っているように思える。
 滞在時間は、わずかだったが江戸の気配を残す庭園で時を過ごすことが出来てよかった。

おまけ:劇団四季のミュージカル「ゴースト&レディ」を鑑賞

浜松町の四季劇場で公演中!

 劇団四季の劇場での鑑賞は初めてだったが、圧巻の舞台であった。原作はさらっと読んだ程度であったが、読まなくても十分楽しめる。店舗の良い脚本、レベルの高い歌唱と演技、そして最高の舞台演出! 
 これはまた、はまりそうだ。

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