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【紀行文】アースダイバーは縄文を幻視して歩く その3~西永福大宮遺跡 

 アースダイバーとなり、縄文の雰囲気を感じながら、東京の神田川沿いを井の頭線の明大駅前から吉祥寺駅まで遡った。吉祥寺で調べた、同じ井の頭線沿いにある西永福の大宮八幡宮を目指すことにした。 

市街地に突然現れる古代の杜

 大宮八幡宮の近くに大宮古墳があり、方形周溝墓もあったらしい。方形周溝墓とは、弥生時代の方形・長方形の墓だ。そこを今回最後の目的地とすることとした。
 西永福の駅に降りると、大宮八幡宮への案内が丁寧に記されており、迷わず向かうことが出来た。近くには高千穂大学がある。日本の古代を探る旅なので、何やら符号めいたものを感じる。
 西永福から約10分ぐらい歩いて、大宮八幡宮に着いた。そこまではフラットな街並みが続いており、歩きながら本当に神社があるのだろうとおもっていた。
 突如として古代の杜が現れる。一気に雰囲気が変わった。

市街地に現れた杜

 かなり大きな神社のようだ。車のお祓いが有名なのか、車両が結構乗り入れられていた。私が入った鳥居から本殿に向かって歩いていく。ここへは様々な方角から入ってくることが出来るようだった。
 広い境内には、摂社末社があり、大宮稲荷や天満宮といったものがあった。「東京のへそ」という呼ばれ方もされているようで、調べるとどうやら東京の地形の重心にあたる場所に位置しているらしい。 

落ち着いた雰囲気であるが、参拝客は多い

 参拝を済ませ、一応集めている御朱印をいただいた。その後何とはなしに境内を散策していると、下の写真のような「力石」を見つけた。

力比べが娯楽だった時代の名残か。山梨の丸石信仰とのつながりはないだろうか。

縄文神社でもある大宮八幡宮

 境内を歩き回るうちに、なぜか北側が妙に気になった。吸い寄せられるように北の鳥居から出ると、そこには川があった。善福川という名前で、神田川の北を並行して流れている。
 川辺に立ち、私を吸い寄せる気配は何だろうと思っていると、少し涼しげな空間が見えた。そこへ向かって歩いていくと、「大宮遺跡」との石碑があった。ここが方形周溝墓があったと言う弥生の遺跡だ。
 ここでは、私のアースダイバーとしてのセンサーが働いたようだ。

東京都指定史跡 大宮遺跡

 方形周溝墓は縄文時代ではないが、ここでは縄文時代の遺物も見つかっている。古代の土地の記憶に吸い寄せられるように、私は歩いてきたということだ。方形周溝墓は、善福川を見下ろすような場所にあった。

方形周溝墓のあった場所から、善福川を見下ろす。
右手の柵のあたりが今は公園で、その昔は集落があったようだ。

 善福川沿いには、集落があり人々が暮らす生活圏であったようで、そこを高台から見守るように、この墓はある。
 ここは古層の神がいるような雰囲気のある神社のようだ。縄文神社の一つといえるのではないか。

 ここ大宮八幡宮・大宮遺跡は、アースダイバーとしての今日の旅を締めくくるに、ふさわしい場所だと思った。
 程よく疲れた私を、気持ちの良い神域からの風が包んでくれた。
 古地図を手に現代の街を巡る旅の面白さもあると思うが、さらにその奥、縄文時代にまでその感覚を延ばし、土地の記憶をたどりながら、神々の存在を感じながら、歩いてみるのは楽しいことだった。

大宮遺跡は、都内初の方形周溝墓が見つかった場所。祭祀が行われた形跡があるため、古代から信仰が続いている聖なる場所である。

どこでもアースダイビングできる最強のツール

 今回の旅は、中沢新一氏のアースダイバーの地図を使ったが、縄文海進によりどこまで海が侵食していたかを簡易的に調べることが出来るツールがこちらだ。これを使えば、どこでもアースダイバーとなり、縄文時代の土地を幻視しながら街を歩くことが出来る。
 今度わたしの地元でもやってみようと思っている。

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