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【紀行文】本の聖地で本に溺れる ~神田神保町BookHotelその1~

古書街に飛び込む

 東京神田神保町は、本の聖地である。
 格安の百円均一本のほか、掘り出し物、あるいは目的の古書・稀覯本・専門書を探しに多くの人々が訪れる。その本の町の雰囲気が好きで、私も学生時代、足繁く通ったものだ。
 東京を離れたとは言え、神田神保町の空気感は忘れがたく、いつしか、こうしてゆるゆると引き寄せられてしまう。
 今年の夏、家族で旅行先を探していた時、この神保町のBookHotelと言うのを見つけた。ここでは、一晩本に溺れることが出来るらしい。

 様々なサービスがあり、最も惹かれたのは、予め自分の好きな本の傾向入力すると、マッチングサービスによりコンシェルジュがお勧めの本を紹介してくれるサービス。
 ワインのソムリエになぞらえた仕立てで、どのようなスペシャルな夜がもたらされるのか、とてもわくわくしていた。

この町の名店 喫茶さぼうるへ

路地裏に人がたむろう
このエキゾチックな雰囲気が魔界のようだ

 まずは、この古書街神保町の魅力を先に伝えたい。
 今回、神田神保町の駅に降り立ちまず向かったのは喫茶「さぼうる」。神田神保町に古くから存在する名店だ。そのどこかエキゾチックな雰囲気と雑多な店内の雰囲気が、古書を愛する人々の人いきれと混じって独特の空気感を備えている。
 神保町周辺は有名出版社から無数の編集プロダクションもある。そういえば私も学生のころ、ここで短期間バイトしたことがある。
 店内に入り、半地下のような場所に案内される。周りには、学生と思しき姿も多く、ちょっと聞き耳を立てると、それらしい(まあちょっと文学チックな)話をしていた。たまたまかもしれないが。
 編集者と思しき人が打ち合わせをしている姿も見えた。しばらく雰囲気に浸っていると、そういえば大学生の頃に来たことがあるような気がすると思った。学生のころは、あまり喫茶店でコーヒーを飲む習慣がなかったので、ここには来たことがなかったと思っていたのだが、どうも店内に見覚えがあった。ただのデ・ジャブかもしれない。
 ここにいる間とても心地が良かった。やはりここは、少し大人になってから神保町で発掘した古書を片手にふらっと入るのが良いように思う。そうしてみたい。

ディープな空気感がある。何時間でもいたい。

思い出の古書店へ

海外のブックストアーかと見まごう

 さぼうるを出た後、妻がいろいろ見たいというので、古書街を一通り見ることにした。娘も興味があるらしい。
 私はここに来る時はあまり目当ての店がない。様々な古書店を訪ね歩き、ふと気に入ったところに入る感じである。古典やまたあまりにも高い本には手が出ないので、自然と単行本や平積みの本を見ることになるが、中には、明らかな怪しい雰囲気を纏って誘惑してくる本がある。
 買えないと分かりつつも、手に取ってみたくなる本がある。そうした雰囲気をたっぷり吸い込み、五六店舗を回った。
 途中、海外の書店風の外観を備えた新刊書店があり、そちらにも立ち寄った。雰囲気が良かったので、ここには二日目の昼に改めて立ち寄った。 何軒か巡っているうちに、だんだんと昔の記憶が蘇ってきた。この神保町に長時間滞在するのは、10年以上ぶりである。いくつかの店がなくなったような気がするが、大半の記憶の中のお店は残っていた。
 そうして思い出した古武術の品ぞろえが充実している書肆高山本店と店内が整然としている北沢書店向かった。
 高山本店では、毎回武道関係の本を眺めて、手にとっては小一時間浸ってくる。ここは神保町来訪の度に必ず短時間でも立ち寄る。今回も購入はしなかった(笑)。
 続いて、北沢ビルの北沢書店に向かった。ここは本のディスプレイが美しく素敵である。この二階は洋書専門の空間であり、そこはもう映画の中でしか見たことのないアンティーク本の世界である。魔法のようだ。
 実は、私はそこまで英語読めるわけではないが、武道関係の本には掘り出し物があるため向かった。と言うのは、日本では絶版となっているような本が海外向けに刊行されていることがあり、それが逆輸入され、日本の古書価格と比べ、格安で手に入ると言うものである。
 実際、今回そのような本が二冊ほど見つかり、購入してしまった。日本で買おうと思えば数万円はする本が、その半額以下で買えたのである。

長くなるので、今回はここまで。


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