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すぎやまこういち 妻が唱えた「ふっかつのじゅもん」
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「復活の呪文」をメモした紙がない!顔面蒼白。週末の12時間の苦労が全てパー。今と違い、ゲームにセーブ機能がなかった時代の話。ドラクエシリーズの初期に使われていた、ゲームを同じ場面から再開するためのパスワードだ。必死に部屋中を探しても見つからない。
突然、母が部屋に入ってきた。「今朝のゴミ袋に入っていたよ。あんた、これ大事なメモなんでしょ?」
神降臨!こんな経験をした人も多いと思う。
作曲家すぎやまこういちにとってのそれは、将棋ゲームのアンケートハガキだった。
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指揮者になることを志した彼は、音大に進学できず、その夢に挫折した。歌謡曲の作曲をしていたすぎやまに、昔の夢を実現させたのは彼の妻だ。書きっぱなしで放置されていたアンケートハガキを投函したのだ。宛先は、エニックス。それがプロデューサーの目に触れ、ドラクエの作曲依頼につながった。
ロック調での作曲を要求されたが、クラシック調の曲を書き下ろした。プレーヤーが繰り返し聞くことになるゲーム音楽には、その方がふさわしいと、自身ゲーム好きのすぎやまには確固たる自信があったのだ。全8曲を、1週間で書き上げた。東京五輪の開会式で流れたあの序曲は、5分で書き上げたという。
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ゲームは大ヒットし、音楽も好評を博した。
ドラクエの曲をオーケストラで演奏するコンサートが、ゲーム発売の翌年から毎年開催されている。指揮者は、もちろんすぎやまこういち。一度諦めた夢が現実のものとなった。妻が捨てなかった「復活の呪文」によって。
ゲームのような、ホントの話。
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