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コードと向き合い組織と向き合い自分と向き合うこと (あるいはノハナからLayerXへ転職のご報告)


インターネットにあこがれた何も知らない若者が東京に出てきてWebベンチャーに飛び込みもがきながら仕事をして経験したこと。思わぬ形でCTOになり、手探りでプロダクトと向き合い、ソフトウェアアーキテクチャと向き合い、組織と向き合い、人と向き合い、最後は自分と向き合う必要があることに気がついた。そして今は社会の大きな変化を感じ、今チャレンジしたい領域に思い切って飛び込んだ。

tl;dr



こんにちは。エンジニアの武市融紀と申します。これまで株式会社ノハナでCTOをしておりましたが、この度1月末付で退職し3月1日にLayerXに入社しました。今日はこの場をお借りして少しだけ僕のこれまでのキャリアと今考えていることについて書こうと思います。

Webアプリケーションとインターネットに熱中した学生時代

キャリアの始まりは、小4のとき家にISDN回線が引かれたことでした。HTMLとJavaScriptの本を買ってきて、それを読みながらホームページを作って公開して遊んでいました。中学校ではperlのBBSやアクセスカウンタを設置しWeb1.0時代を謳歌、高校時代はPHPで球技大会向け業務Webアプリを作るなどして遊んでいました。大学生は大学生活の傍ら、地元名古屋でたまたま募集のあったバイトでiPhoneアプリ開発に熱中していました。インターネット上で提供されるプロダクトに可能性を感じて、Webベンチャー界隈の会社をいくつか受け、そのなかでも国内最大手SNSミクシィが業界の中でも得異な存在に見え入社。1ヶ月研修を終えての配属先が、社内スタートアップとして立ち上がった子会社のノハナでした。

新卒mixiで社内スタートアップに配属され、事業立ち上げの楽しさと成長痛を経験

当時のノハナはテレビに取り上げられてMAUが急拡大。嬉しい反面、成長痛に苦しんでいた時期でした。最初はAndroidアプリの開発などを行い、その後は決済に新たな支払手段やオプション商品を追加する改修などに従事しました。その傍ら、カスタマーサポートへの問い合わせを減らすための各種不具合の原因調査や手作業の自動化などをチームで取り組み、データ分析のための基盤を整備するなどしました。

入社し2年が経ったころ、ノハナが機能のほとんどを依存していたParse.comというMBaaSが1年後に終了するというニュースが突然飛び込んできて、1年掛けてインフラの移行に取り組みました。その時のことは別の記事に書いているのでよければ読んでみてください。

移行が終わり一息つこうとした矢先、私を含む複数の出向者は親会社の人事的な背景で、出向終了もしくはノハナへの再入社という選択を迫られることになりました。インフラの移行が完了し自社のコントロールが増え、プロダクトをより良くする土台が整ったところだったのと、サービスへの思い入れがありコミットしたいという強い気持ちがあったため、ミクシィを辞し出向先のノハナに入社し直すことにしました。その後、CTOを打診され就任の運びとなりました。

いいプロダクトをつくるために組織と向き合う

まず多数が出向解除となったエンジニア組織を業務委託の方に参画頂きながら立て直し、並行して採用活動を進めました。結果としてとても優秀で会社のビジョンに共感するエンジニアの方に参画いただくことになりました。

ノハナにはネイティブのiOS/Androidのコードベースがあり、サーバー側はParse.comに依存する形でPerl, Ruby, Golang, Node.jsなどの実装がありました。また、決済導線はWebViewとなっておりjQueryで動いていました。サービスインから4〜5年ほど経ち、コードベースが古くなっていく中で、ネイティブはSwift / Kotlinへの移行、WebViewはReact.jsへの移行を進め、バックエンドは不要なサーバーコンポーネントの整理やコンテナ化・FaaS化するなどして皆で陳腐化と戦いました。

事業にはフェーズがあり、トラクションがつくかつかないかぐらいのタイミングだと赤字でもエンジニアリソースを大胆に投下できますが、サービスが安定して売上を出し始めると逆にリソースを投下しづらくなります。後者にあって、さらに動いているものを壊さないように技術的負債を直しながらプロダクトを改修していく難易度は、0から作るのとは全く違う難しさがありました。(これはビジネスモデルそのものにも当てはまるかもしれません。)

ノハナの人事制度や組織形態は、ミクシィの子会社ということもあり親会社に倣ったものでしたが、会社の人数規模や望ましいスピード感からすると馴染まないところがありました。また、頻繁にprivate channelでやりとりがされていたり、重要な会議の議事録が公開されていないなど、情報の透明性が低い状態でした。情報の公開を急ぎ進めると共に、会社-チーム-個人の三段階のOKRツリーを組織に導入し四半期ごとに目標の合意形成を行うビジネスサイクルを導入することで、中間マネジメントコストを下げ組織のスピードを高める取り組みを行いました。

その後、経営層による様々な議論の末、ノハナは長年お世話になったミクシィからMBOという形で独立することになりました。もともとノハナはバックオフィス機能の大半をミクシィに依存していたため、独立の過程で主に社内システムの構築のディレクションなどを行いました。

組織と向き合う経験をして得た学び

就任当初はともかく組織を立て直すことに必死でしたが、徐々にジョインしてくれるメンバーが増えていくにつれ、自分が開発タスクを抱え込みすぎてボトルネックになっていました。メンバーから率直な指摘を受けたことがきっかけで目が覚め、それ以降は開発タスクや設計などの権限移譲を意識して進めていきました。完璧を求めず(そもそも自分が思う完璧が真に正しいかどうかなんてわからないですが)、多少自分の意向と違ってもそれを受け入れ大胆に権限移譲を進めていくことにしました。性善説にのっとり、重要事項の共有はしっかりお願いして、本当にまずいことが起こっていないかだけはチェックするようにしました。そのようにマインドセットを変えたことで、自分がボトルネックになることは少なくなりました。

OKRなどのマネジメントフレームワークはいわゆる「組織をメンタリングする」ためのツールで、どこにコミュニケーションの不全や非効率性が眠っているかを炙り出すことができます。組織を変えるには、自らを律するルールを作りそれを組織に習慣として根付かせ、個々の小さな行動の変化を積み重ねよりよい方向に変化させていきます。そのようにして、組織に対して改善策を打っていったら、結果、自分の行動も矯正されていることに気づきハッとさせられる瞬間がありました。組織をメンタリングしたら、メンタリングした組織によって自分自身の背筋も正されたという稀有な経験でした。

1on1やランチや飲みの場などで、一緒に働く仲間と様々に話しお互いを理解しようとしたことはとても有意義な経験でした。何がしたくて今ここで働いているのか、抱えている簡単には解消できない苦しみはなにか。背負い込みすぎて辛くなることもあり、また逆に感情的にぶつかることもありました。今振り返ると、自分がメンバーの皆さんから学んだり教えてもらうことの方が多かったように思います。

Webが重い産業を侵食していく気配を感じた

盲目でこの業界に飛び込んだ6年前と比べてインターネットが大きく変わったことがキャリアを変えてみようと思ったきっかけでした。Web1.0時代からするとインターネットはだいぶ資本主義の波に飲み込まれ、その雰囲気も一変したと思っています。しかしインターネットで増幅された資本のウェーブが、ここ最近は逆に既存の重い産業をどんどんと飲み込んでいくようなトレンドが見えてきて、潮目が変わったような感覚を抱きました。

もともとプロダクトの体験向上と営利企業の利潤追求を両立させることへのジレンマに悩み、お金ってなんだろうともやもやしていたのですが、気がつくと経済や金融の本を読み漁っていました。特に「反脆弱性」「負債論」などは学びが多く、大きな影響を受けました。そして仕事をしていく中で、この社会の仕組みをより一層知りたいと思いました。それは単なる好奇心だけでなく、仕組みを改良して様々な問題をうまく解決できないか、ソフトウェアエンジニアとして携われることはないか。そんなことを日々考えながら仕事がしたいと思いました。

LayerXに入社し中の人になってみて

そのようなことを考えていたので、金融系スタートアップを中心に何社かお話を伺いました。その中でも金融のしかも重い領域にスタートアップという特異なポジションで、大手企業と手を組みながら技術力を駆使し事業を作っていこうとしているLayerXに、エンジニアとしての面白さややりがいを感じ、また事業ドメインが大きく変わることで自分にとって実務においてもチャレンジすることが多くあるだろうと思い、思い切ってjoinしました。

LayerXは、中から見ると優秀なBizDevとエンジニアが集まり、事業を作り上げようとしている集団です。入社して3週間ですが、BizDevとエンジニアの垣根が全然なく一人ひとりの興味の幅が広いと感じています。社内勉強会ではビジネストピックでも技術トピックでも、職種に関わらず質問や意見が多く出ます。またプロジェクト間の垣根が低くチーム外の方からアドバイス頂くことが多くあったり、複数のプロジェクト間で横断的に活躍されている方が何人もいます。あと(前職もそうでしたが)皆バリバリアウトプットを出しているのに、slackに速攻でreactionがつくなどして楽しいです(笑)

LayerXには立ち上げようとしている未知なるビジネス上の仮説があり、さらにそういった未知の領域のなかで、中央機関なしでの企業間のデータ共有という目的がブロックチェーンによってリーズナブルに達成できるかどうか。そういった2重の仮説をスタートアップとして検証しに行く企業だと今の自分は理解しています。

LayerXは「すべての経済活動を、デジタル化する。」というミッションを掲げています。個人的には、理想論ではありますが、個々が自分だけ生きやすい世界を作るより、皆が社会の中で自分の能力を発揮して、クリエイティブで人間らしく、自分とお互いの幸せのために行動し、生きることのできる世の中になるといいと思っています。資本主義が行き詰まりを見せるなかで、お金は目的ではなく手段になってほしい。より不確実で、より良い人類の未来を結実させるべく、我欲なく挑戦する人の元に集まってきてほしい。そんな未来を作りたいというのがここで働くモチベーションのひとつです。

We’re hiring!

日本は少子高齢化が止まらない。家計に預貯金は大量に眠っている一方で、社会保障で政府債務は膨れ上がってる。でもどうすればいいのかわからない。ピケティはr > gっていうし資本家最強じゃん、一発当てたいし5000兆円ほしい。けどお金持ちになることが本当に幸せなんだろうか。そう言ってるうちに仮想通貨バブルは起こるわ、中国がCBDC構想をぶち上げて将来的に日銀も電子マネー発行?ソフトバンク・ビジョン・ファンドは曲がり角に差し掛かっているし、オリンピック後に不況が来ると思いきやまさかの新型ウイルスでリーマン級かそれ以上の世界恐慌に!?世界は、日本は、この先どうなるの???

そんなことを考えて日々過ごしているエンジニアやBizDevの方々と一緒に働きたいです。

参考までに、LayerXがどんな未来を作ろうとしているかご紹介します。

LayerX、MUFGとブロックチェーンを活用した次世代金融取引サービス提供に向け協業

LayerXが三井物産、SMBC日興証券、三井住友信託銀行と合同で新会社を設立。ブロックチェーン技術を活用した次世代アセットマネジメント事業で協業

もしご興味を持って頂けたら以下よりご応募頂けると嬉しいです。

LayerXでブロックチェーン領域にコミットしたいエンジニア募集

LayerXのブロックチェーン事業を加速させるBizDev(事業開発担当)募集!

ちょっとそこまでは気が引けるけど気軽に話は聞いてみたいという方、是非ランチご一緒させていただければと!自分のTwitterにメンション or DM頂けると嬉しいです。

最後に

プレイヤーだった自分の権限を移譲していくなかで、マネジメントは自らだけでは何もできない無力な存在だと改めて気付かされました。手探りで至らぬ点ばかりだったと思いますが、大森社長をはじめ、一緒に働いたノハナの皆さんに感謝申し上げます。

それでは。

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