お父ちゃん~スピンオフ🥊
お父ちゃん①~④までを読んで頂いた方が思われる印象は、とんでもない親だな最悪な父親だな、というような印象を持たれる方が多いと思うが、立て続けに父が酒を飲んで暴れるだけのことを書いても、書く方も読まれる方も面白くなく疲れると思うので、前回の最後で書いた尊敬する部分と付随して、僕が父との晩酌に同行した事を切っ掛けに、出合い憧れ、崇拝した上にアマチュアではあるが選手としてリングに上がった”ボクシング”の体験を、この回と次の回で書いてみたい。
僕は小学校5年生の時に、自分が欲しいと思う買い物のお願いを初めて父に告げた。
それがボクシングのサンドバッグだった。
父は、「お前が何かを買ってくれと自分から言った事はこれが初めてだ買ってやる」と、こちらの不安をよそに快く買ってくれたし、庭なんか無い玄関前の狭いスペースだが、そこに大工の腕を発揮し上手に吊してくれた。
この家族を見た時に陰で支えてくれているのは間違いなく母なのだが、そういう経済力や、男の力が無いと、こういう頼み事が実現しにくいという事は幼いながら薄々感じていた。
そんなところが父への尊敬の部分に繋がっているのかもしれない。
それはそうと、このサンドバックを買ってもらう前の、僕とボクシングという格闘技(スポーツ)との出合いから書いてみよう。
前回の話で父との晩酌タイムの話があったが、それはだいたい19:00台なので殆どは野球のナイター中継だった。
でも、ある時そうでない日があった。
僕が小学校2年生くらいだったと思う。
スポーツは、ほぼ野球しか見た事の無いその時間帯に、僕はそれを初めて見て衝撃を受けた。
周りは真っ暗で黒く、テレビに映った真ん中にあるその四角い真っ白な白だけが煌煌と光るそれがあった。
ボクシングのリングだ。
その中で、白いトランクス、幾つか編み上げられたスマートなシューズ、そして赤いグローブ。
そんな装いの男二人が真っ白いリングの中で精一杯の殴り合いをして、真っ白なリングやトランクス、選手の顔や身体がグローブの赤にも負けないくらいの真っ赤な血に染まっていく。
それを、いつもの父との晩酌タイムに初めて見た時、僕は父に聞いた。
「お父ちゃん、これ何ていうスポーツ?」
「こりゃーボクシングよ」
勿論、野球では流血するシーンなど無いし、当時プロレスもよくTV中継されていたが、流れる血の種類が、僕の個人的な感覚だが、はっきりと違う、とそう思ったのだった。
こんな神聖なスポーツ・格闘技が存在したんだ。。
殴り合うことで、相手に勝つというだけでなく、そこに自分が存在しているということを強く証明している。
そんな風に思ったのだった。
それを知れる切っ掛けをくれたのも父だし、後に私立高校に通わせてくれ、ボクシングを選手として経験させてくれたのも、父の男の力無しには叶わなかった事だと思っている。
スピンオフ②に続く
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