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野球の映画 〜フィクション編〜

前回までノンフィクション野球映画をご紹介してきましたが、今回はフィクションの作品をご紹介いたします。

実話に沿ったストーリーを描がなければならないノンフィクション作品に比べて、フィクションは当たり前ですが、その内容を作者が自由に表現出来ます。とは言っても、その多くは過去の実話からヒントを得たものが多く、私たちはフィクションからも多くのことを学べます。

そんな数あるフィクション作品の中から、今回は「メジャーリーグ1,2,3」や「フィールド・オブ・ドリーム」など、みなさんがよくご存知だと思われる作品については割愛させて頂きます。

最初にご紹介するのは、「Mr.3000」(2004年/チャールズ・ストーン3世監督/タッチストーン・ピクチャーズ)です。

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アメリカにおいて野球殿堂入りの条件のひとつとして野手の場合3000本安打という目安があり、これを達成するとほぼその選手は殿堂入りします。

今作品の主人公、ミルウォーキー・ブルワーズのメジャー屈指の強打者のスタン・ロスは、この殿堂入りのためだけにMLBでヒットを重ねていきます。そして、ついに3000本安打を達成し、殿堂入りの切符を手にします。すると彼はシーズン中、主力であるにも関わらずさっさと引退をしてしまいます。

その後、Mr.3000というニックネームをキャッチフレーズにし、ビジネスを展開し成功させていきます。37歳で引退し10年が過ぎ、いよいよ殿堂入りかという時にある事が判明します。それは、成立していない中断になった試合のヒット数3本が加算されるという、記録ミスが発覚したのです。つまり3000本だと思い込んでいた安打数は2997本だったのです。

そこでスタン・ロスは、なんと47歳にして、残りの3本を打つためにブルワーズにカムバックします。この映画では、トレーニングのシーンもふんだんに出て来ます。私と同じコンディショニングコーチが自己紹介するシーンがあるのですが、自身コンディショニングコーチと言っているのに、日本語訳ではトレーナーとなっていました。まだ日本ではコンディショニングコーチの名前に馴染みがないのかなと思いました。また、この映画の中にも、少し我がままな若き主砲が改心し、映画の後半チーム全体を励まし鼓舞するシーンがあります。

この映画本当に面白かったです。特典映像でも、この映画にエキストラで出演するための野球のトライアウトの様子も紹介されているのですが、みんな真剣でそこだけでも観ていて楽しかったです。このトライアウトには500人もの野球の腕自慢が集まったそうです。アメリカ野球映画の役者のリアルな動きは、こんなトライアウトもあるからなのですね。さてスタン・ロスは3000本安打を達成するのでしょうか?

次はアメリカ大学野球の映画をご紹介します。この映画は、ノンフィクション映画と言っていい程、実話に近い内容です。「サマーリーグ」(2001年/マイケル・トリン監督/ワーナー・ブラザーズ/)

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私がプロ在籍時アメリカの選手にサマーリーグ観た?と聞いても理解してもらえませんでした。それもそのはず、原題は「サマーキャッチ(Summer Catch)」という名前で広く人気があったようです。

ここで登場するリーグは、実在するリーグで、全米各地のドラフトにかかるか、かからないかの選手や、少しでも指名順位を上げたい選手、また上位指名確実だが少しでも契約金を上げたい選手たちで構成された選ばれしエリート軍団のリーグです。

舞台は夏のリゾート地ケープコッドで、夏の間10チームで約2ヶ月間行われます。選手たちは野球好きの人の家にホームステイしながらプレーします。事実、このリーグから実際に多くのMLB選手が誕生しています。もちろんチームも実在し、ユニホームも同じ物を使っています。特典映像で後から知った事ですが、この作品を作り上げるのにあたって、本当に多くの取材や調査が行われており、ほぼほぼフィクションと感じました。実際の球場や、選手たちが集まるバーもほぼ同じ物を作り、また過去にこのリーグを経験した選手や関係者やMLBのスカウトまで徹底的に取材したそうです。

この映画の中で、これは「アウト?」いや「ホームラン?」というシーンが出てきます。答えは特典映像で確認してください。

この映画でも、励まし励まされるたくさんのシーンがあります。監督が主人公の投手をブルペンで励ますシーンは、1972年36歳でアメリカ殿堂入りした伝説のサウスポー、サンディー・コーファックスが口にした事を参考にしたそうです。

そして、この映画も絶対エンドロールが始まっても、しっかり観てください。とんでもないMLBのスーパースターが現れます。最後のシーンは主人公にとって嫌な事が起こるのですが、マウンドでなぜか笑顔です。何となく私もその気持ちはわかりました。

次にご紹介するのは1994年映画「スピード」で一躍世界的な俳優になり、そして1999年の「マトリックス」でその人気を不動の物にしたキアヌ・リーブスの映画です。彼がその「マトリックス」の2年後2001年に主演を演じた「陽だまりのグラウンド Hardball」(2001年/ブライアン・ロビンス監督/松竹)です。

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キアヌ・リーブスと野球はあまり馴染みのない役所ですが、マトリックスとは全く違う人間臭さを見事に演じています。この映画も楽しかったです。

酒とギャンブルに溺れて、落ちるところまで落ちたキアヌ・リーブス演じるコナー・オニールと、シカゴの貧困層地区のユニホームも道具もまともに揃わない少年野球チーム、キカンバス。オニールは借金の肩代わりにこのチームの監督をやらされることになります。

嫌々始めたコーチ業ですが、子供達の野球への情熱がオニールを大きく変えていきます。そして、お互いの信頼を深めて行きます。この中の登場人物G・ベイビーはとてもかわいいです。恐らくみなさんも好きになると思います。

この映画の中でも、凄いMLBのスーパースターが登場します。ちなみにですがキアヌ・リーブスはNFLの映画「リプレイスメント」に主役のクォーターバック役でも出演しています。これも野球ではありませんがお勧めです。

野球の映画と言えば、キアヌ・リーブスよりもやはりケビン・コスナーでしょう。学生時代には野球に明け暮れていたという事で野球選手としての動きは本物で、ちょっとした仕草も野球選手らしさを醸し出します。ちなみにメジャーリーグ 1・2で主演を演じたチャーリー・シーンも高校時代は名の知れた投手でした。

ケビン・コスナー主演の野球映画は上記した「フィールド・オブ・ドリームス」を始め3作あります。その中から「フィールド〜」を除いた2作品をご紹介します。

まずは「さよならゲーム」(1988年/ロン・シェルトン監督/ワーナーブラザーズ)です。

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アメリカノースカロライア州ダーラムに本拠地を持つ、実在するマイナーリーグのダーラム・ブルズを舞台に映画は進みます。

このブルズのユニホームの胸の牛のマークは、オリックスバファローズの濃紺に縦縞のサードユニホームの牛のマークと少し似ています。ちなみに、このチームには、2012年、一時期松井秀喜選手が所属していたのでご存知の方は多いのかもしれません。また前回お話しした映画オールドルーキーにもこのチームが、主人公のメジャー昇格前の所属チームとして登場しています。

物語は、ノーコンだが豪速球を投げる若い投手と、この投手を育てるためにブルズにやって来た21日間だけメジャーに在籍していたケビン・コスナー演じるベテラン捕手。そしてある女性が中心に話は進みます。野球映画には、サマーリーグでも出て来たように、いろんな意味で若い選手の世話を焼く、この手の女性がよく登場します。さてこのベテラン捕手はいかにこの投手を育てるのでしょうか?また恋の行方は?

2作目は、「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」(1999年/サム・ライミ監督/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)です。

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上記したさよならゲームとは、うって変わって無名のマイナーリーグの捕手役から、この作品ではMLBのデトロイト・タイガース一筋の40歳の超一流投手役です。恋のストーリーもさよならゲームでは若干ハチャメチャな感じでしたが、落ち着いた大人な感じで、ストーリーに引き込まれていきます。ストーリーはさておき、見所は撮影当時44歳のケビン・コスナーの投げっぷりです。中でもパーフェクトゲームを継続中のケビン・コスナー演じるビル・チャペル投手に対して、ヤンキースのある選手がセーフティバントを試みるのですが、その時のケビン・コスナーのスライディングキャッチからの一塁へのスローイングは圧巻です。このシーンは是非とも観て頂きたいシーンです。

ちなみに、ケビン・コスナーがプロゴルファーを演じた「ティンカップ」も楽しく観られました。

さて、ビル・チャペル投手は引退するのか?パーフェクトゲームを達成するのか?恋は取り戻せるのか?

次は、1952年の小説を基に1984年に作られた「ザ・ナチュラル」(1984年/バリー・レヴィンソン監督/コロンビア映画)です。

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ナチュラルというと自然という意味で捉えがちですが、「天性の才能の持ち主」という意味もあるようで、この作品は、野球の天才と言われたひとりの男の波乱万丈の人生を描いています。

シカゴ・カブスにスカウトされたロバート・レッドフォード演じる野球の天才ロブ・ハブス。彼は入団直前に事件に巻き込まれ、16年ものブランクを経て35歳でメジャーに挑戦します。時は1920~1930年の野球界の物語で、当時の様子がよく伝わってきます。スタジアムの造りやユニホーム、そしてそのユニホームの着こなし、グラブ、スパイク、また当時の生活様式など、野球の歴史の勉強になります。

また、この映画は、主人公と父親とのキャッチボールのシーンに始まり、主人公とその息子とのキャッチボールのシーンで終わります。私も子供の頃、父とキャッチボールをした事、そして大人になって息子とキャッチボールボールをした事を鮮明に思い出します。父とのキャッチボール、そして息子とのキャッチボールを同時に思い出すことが出来て、なんか素敵な気持ちになれます。この映画を観て私だけでなく、こんな感情になる人が、多いのであればそれは嬉しいことです。

さて、このロブ・ハブスは、子供の頃、自分の家の庭にあった大きな木に雷が落ち、その木で自ら作ったバットでボールをかっ飛ばします。彼の野球人生はどうなっていくのでしょうか?
 
次の作品は、アメリカの元野球小僧だった大人が観ると、子供の頃を鮮明に思い出す人が多いといいます。組織だった野球ではなく、連盟にも加盟していない、ユニホームもなく、グランドというより空き地でする野球のことを、サンドロット・ベースボール(sandlot baseball)と呼ぶそうです。sandlotとは、砂場のことを指します。この野球少年たちを描いた映画1993年に「サンドロット/僕らがいた夏」が一作目で、2005年に「わるわる探検隊/The Sandlot2」が2作目。そして、2007年に「チャンスボール/The Sandlot Heading Home」が3作目として続きますが、続編ではなく、各々が前作をリメイクをした内容になっています。どれも子供の頃を思い出し、何か懐かしい気持ちで楽しく観られますが、今回はこの中で一番新しい「チャンスボール」(2007年/ウィリアム・ディア監督/フォックス)をご紹介します。

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ドジャースの引退間近の超自己中心的で傲慢なスーパースター選手がデットボールを頭にくらい気を失い、目が覚めると12歳の自分にタイムスリップしてしまうというお話しです。誰しも自分もあの頃に戻りたいという感情が生まれてくると思います。私ももう一度、少年野球チームに入る前の近所の仲間と、近くの空き地でする野球、まさにサンドロット・ベースボールの時間に戻ってみたいです。この映画でもストーリー上、ありえないちびっ子がチームを励まし喝を入れます。

次の作品は少し違う観点で野球を描いています。彼女にとって彼が最愛、一番の存在なのに、彼にとって私は二番目、一番大切なのは野球というよりレッドソックスというストーリーです。「2番目のキス」(2005年/ファレリー兄弟/東京テアトル)です。

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なんと彼女の恋敵はレッドソックスなのです。私は、近鉄時代からいくら頑張っても人気は、阪神には敵わないと思っていました。むしろ思い知らされていました。阪神ファンの阪神愛はえげつないです。そんな阪神ファンを彼氏に持つ女性の気持ちを表したと言えばわかりやすいかもしれません。野球が一番、私は2番という女性(いやその逆の女性が野球好きもあり得るでしょう)そんな方は必見です。

次は、特に元高校球児の方は、ご覧になって欲しい作品2作です。一作目は、リアルな高校野球を描いた「ひゃくはち」(2008年/森義隆監督/ファントム・フィルム)です。

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実際高校野球を経験した人は、知っている綺麗事だけではない高校野球の表と裏を描いています。

エースや4番打者にスポットを当てるのではなく、主役は最後の夏、なんとか背番号19,20番を、あの手この手で狙う選手たちです。元高校球児の方にとっては、何度もあるあると思うシーンがあります。そして、この高校の鬼監督役は、「ミナミ帝王」萬田銀次郎こと、竹内力が演じています。あまりにも適役過ぎて、この監督のセリフを聞く時、私まで緊張しました。

2作目は、「アゲイン〜28年目の甲子園〜」(2015年/大森寿美男/東映)です。

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高校時代に甲子園に出た人も、出られなかった人も、もう一度年齢関係なく甲子園を目指す大会、みなさんもよくご存じだと思います。マスターズ甲子園を題材にした作品です。主題歌は浜田省吾の「夢の続き」です。そのままあと一歩で叶わなかった高校野球の夢の続きが描かれています。この映画は、恐らく皆さん2回くらいは涙が出そうになるかもしれません。

その他にも、多くのオススメ作品があるので、一気に羅列させていただきます。

クリント・イーストウッドが主役の、セイバーメトリクスの浸透や視力の低下で行き場を失いそうになったベテランスカウトと疎遠になっていた娘とのストーリーを描いた「人生の特等席」(2012年/ロバート・ロレンツ監督/ワーナーブラザーズ)制作。

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舞台はアナハイム(現ロサンゼルス)エンジェルスで、バック・トゥ・ザ・フィーチャーの科学者ドクが天使役で別の顔を見せる「エンジェルス〜アウトフィールド〜」(1994年/ウィリアム・ディア監督/ブエナビスタ)。

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最近は聞きませんが、以前アメリカから日本にやってくる選手たちが日本の野球の情報を得るためによく観たと聞く「ミスター・ベースボール」(1992年/フレッド・スケピシ監督/UIP)。

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チンパンジーに野球をさせる「Ed〜モンキーリーグ」(1996年/ビル・コーチェリー監督/ユニバーサル・ピクチャーズ)。

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ゴリラに野球をさせる韓国映画の「Mr,Go!」(2013年/キムヨンファ監督/ギャガ)なども楽しく観れました。

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日本の少年野球映画も良いものがあります。「バッテリー」(2007年/滝田雄次郎監督/東宝)、

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「ベースボールキッズ」(2003年/瀧澤正治監督/千葉テレビ放送)

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の2作品です。これらは野球をしているお子さんがいらっしゃったら是非親子で観てください。まだまだたくさんご紹介したい野球映画があるのですがキリがないので、この辺りで終わりたいと思います。もしここから興味を持ったスポーツ映画があれば、是非ともご覧になってください。長い時間お付き合いありがとうございました。

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