100%ORENCHI 伊勢

もう5月。4月の方が暑かったような、夕方5時の伊勢駅は涼しい。人がたくさん来ることをわかってるんだろう、ベンチがいくつもおいてある。待ち合わせより少し早めに着いたので、もう何度読み返したかわからない武塙麻衣子“酒場の君2“を読んで待つ。上げる必要なんてないほどいつだってある呑み屋熱を上げながら待つ。
いつも通り仕事に追われてるであろうに、今日もむりやり終えてハネ到着。一瞬ベンチに座り、目的地の前に軽く食べようと話し歩き出す。
今日はいよいよ“100%ORENCHI“にゆく。我々が魂で惹かれている京都の“バヒュッテ“仕込みのお店がなんと伊勢にオープンしたのだ。系列という感じではなく、ただバヒュッテが好きな店主がバヒュッテみたいな場所を作りたいと思いできた店という感じ。もちろん公認で、開店の日にはバヒュッテの店主“イクミさん“が手伝いにいらしたそうだ。
古道具や子供古着、本などが売っている変わった立ち飲み屋さんで、メニューは洗濯物干しに挟んであるお菓子と、クラフトビールやお酒やコーヒー。ご飯を食べるお店ではない。
なのでORENCHIの少し手前にある“驛亭“という老舗の焼き鳥屋さんでちょっと食べてちょっと呑むことにする。ここの店主は人一倍おしゃべりなので、ORENCHIの閉店時間までに出れるか心配だったけど、どうやらORENCHIの店主もここによく来るみたいでチラシが貼ってあったので、「あ、これから私たちここに行くんですよ!あ、もう時間やばいね!」と言いながら出発。成功した。驛亭もいい店だ。またすぐ来てしまいそう。もう一本串を食べたい気持ちを抑えていざ。
ここから歩いてほんとすぐ。美容院の2Fにある。
螺旋階段を上がり見えた空間は、スペース全体に広がるオモチャたち。ちょうど商品の撮影中だったようで、突然現れた陽気な我々にバタつかせてしまう。「どうぞそのままで。」と言ってみたけどそうはいきませんともてなしてくれた。ハネは一度バヒュッテでこちらの店主と会っているらしく、お互いに覚えてますか?と笑い、一息つく。オモチャゾーンを抜けた先に立ち飲みゾーンがある。ショーケースから好きな飲み物を出し、立ち飲みカウンターで飲む。見たことないクラフトビールは京都のものらしい。柑橘系のものとかIPAとか。おいしい。物干しから紅しょうがスナックを選びつまむ。バヒュッテの話やら仕事の話をする。店主とハネは同業っちゃ同業なので楽しそう。この日は奥様もいらしてて4人でワイワイ。そうこうしていると店主のお兄様と姪っ子さんが来て、家にお邪魔してるみたいで一層楽しくなる。オモチャに囲まれた空間で家族の中でお酒を飲む。でもみんな立っている。地域の集会みたいでもある。自然すぎて滑稽だった。
1時間ほどお邪魔して、そろそろ閉店時間なのでお暇する。いつも通り調子がいいので初日から危なかったがギリギリセーフ。帰ろう帰ろうと外に出たけどまだ7時。今日は早く帰ろうと決めていたけどさすがにまだ7時。“もう一杯だけ行こう。“と少し前に立ち寄って楽しかった店に寄る。こうやって夜は更けていくんだけれども。

目的地だった100%ORENCHIはもうこの町のハブというやらになっている、少なくとも私が来るたびのこの町の。確実に光っているのに眩しくないこの場所が、ここの人たちが、愛されないわけがない。歴史ある、今もなおここに何かを求めてやってくる人々の、なにかしらにはきっとなってくんだろうな、っていう曖昧な笑 なにが言いたいかなんて私がいちばんわからないけど、いつの時代も、どんな場所にも、こういう人がいて、丸くなる。そういう感覚。

いい店だった。頭から花が咲きそうなくらい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?