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犬はどこまでも飼い主に忠実である

2024/04/16

私、タレントになりたい。

当時中学1年生だった安達祐実さん主演で、野島伸司さん原作のドラマ『家なき子』をご存じだろうか。
私と安達祐実さんは同い年なのだが、中学生になっても小学6年生の役を演じていることが、当時の私は不思議だった。

その安達祐実さんがどんどん大人になっていき、キレイになっていくのを見て、まるで我が子をみているように感じていた。
あの頃はファンレターを出すほど憧れていたんだ。

子どもの頃から読んでいた雑誌に、子役募集の広告が打たれていた。
そこにはサンミュージックの文字と、安達祐実さんの笑顔が大きく載っている。

私は小学1年の頃から、それを見て母親に、
「私、タレントになりたい」と、幾度となく言ってきた。
母の答えは決まって
「バッカじゃないの? なれるわけないっしょ」だったので、どうしてなれないのか聞いても、そこから先は答えてくれなかったものだ。

私が田舎に住んでいて、東京とは無縁だと決めつけていたのだろう。
それに、うちの両親は子離れが未だにできていないので、離したくなかったのだろう。

私は演技をすることが好きだ。
他にも好きなことはたくさんあるが、演技をすることも好きだ。
演技が上手いと言われたことも数えきれない。
部活は掛け持ちができなかったので、天秤にかけた末、マーチングバンド部に入部した。
その新入生歓迎会で劇を披露することに、私の隠し芸のような感じで全ての演技力とシナリオライターセンスを発揮。

別に人気者ではなかったけれど、その演劇を披露している間はとても楽しかったのを覚えている。
男子部員にビンタをするシーンがあったので、今ではコンプライアンス的にアウトだ。
不適切にもほどがある!

大人になって思うことは、芸能界という闇に足を踏み入れなくて本当によかったなということ。
きっといいこともあっただろうが、私のような心が弱い人間は、きっとすぐに死んでいた。

「同情するなら金をくれ!」

幼い頃から憧れていた安達祐実さん主演で、野島ドラマが一世を風靡する中放送された、『家なき子』を覚えているだろうか。
野島伸司さんはそれから数年間、様々なドラマのシナリオを書き、ドラマは大ヒットの中にも批判があったが、私は野島ワールドが大好きな人間だった。

『家なき子』は、家が貧乏なすず(安達祐実さん)が病気で入院中の母親(田中好子さん)の手術費を稼ぐため、窃盗や売春まがいなこと、靴磨きなど、悪いことをたくさんしながらお金を集めるドラマ。
名セリフは「同情するなら金をくれ!」だ。
これは覚えている人も少なくないだろう。
子どもの口から、涙とともにこのセリフが幾度となく吐かれるのだ。
担任の先生(保坂尚輝さん)も困っただろう。
ちなみにすずの父親(内藤剛志さん)はろくに働きもしないですずに稼いでこいと言う、最低な親だ。

ドラマのテーマはいじめで、今では再放送ができないくらいのいじめシーンがたくさんあった。
それに立ち向かうすずをいつも隣で応援していたのが、犬のリュウ。
本当は女の子だったはずで、役柄では男の子。
いつもすずを守ってくれる、可愛い犬だった。

『空と君のあいだに』by 中島みゆきさん

そのドラマの主題歌が、中島みゆきさんがドラマのために書き下ろしたという『空と君のあいだに』だった。
私は中島みゆきさんが好きで、他の曲やアルバムも集めていた。
声質が合うのでカラオケでも歌いやすい。

この歌詞の意味を知ったのは、最近だった。
糸井重里さんが対談した時に聞いたという歌詞のエピソードにものすごく感動して、それを読んだだけで胸が震えた記憶がある。
犬が好きな人は覚えておくといいと思う。

『空と君のあいだに』
これを書いた当初、与えられた情報は「ドラマの主題歌」ということと、「女の子と、いつも一緒にいる犬が主人公」という話だけだったという。
それを元に想像を膨らませて書かれた歌詞が、あの有名な歌詞だ。

君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた
引き止めた僕を君は振り払った遠い夜
〜(略)
空と君との間には今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる

https://lyrics.lyricfind.com/

当時、中学生の私にはこれを理解することができなかったのだが、糸井重里さんとの対談で、中島みゆきさんはこう答えていた。
「あれは、犬から見た目線なんです。女の子と犬ということしか情報がなくて、あの歌詞になりました」
あの笑顔でお答えになったのでだろう。

それで全ての合点がいった。

すずをいじめたやつの正体をリュウは知っていて、すずにはいつも笑っていてほしい。
すずが笑ってくれるなら、僕は悪にでもなるよ──

なんて従順なのだろう。
人と犬との歴史は古いが、私が犬好きなのはこういうところなのだ(今はうさぎも大好きだけど)。

友達がゼロになっても味方でいてくれる犬。
私の精神がおかしくなってもじっとそばで見守っていてくれた犬。
人間は、
「頭がおかしくなったんだ」
「キチガイ」
「鬱なんて甘えだ」
「風呂に入りなさい」
と、叱ることしかしない中で、愛犬はじっと、大好きなタオルを咥えて、
「このタオルで遊ぶときは、唁ちゃん笑ってくれるよね! 楽しいもんね! だから遊ぼうよ!」という無垢な顔で尻尾を振って座って待っているのだ。

私の1番の理解者

私は人間のためじゃなく、この子のために生きなきゃいけない。
死を選ぶことはいけない、と、愛犬に何度も助けられた。

「私が笑うためなら、悪にでもなるなんて言わないで。一緒に笑って遊ぼうね。」
そう言って、愛犬と遊んでいるうちに、嫌なことを少しだけ忘れられた。

犬は、飼い主を守りたい。

人間の場合は頭がいいのでさまざまな感情が渦巻いて人間関係がうまくいかなくなることがある。
でも、動物は「今」しか考えない。
だから、動物は死ぬことが怖くないという。
今を生きるために狩りをして、今を生き延びて成長していくのだ。

「今、遊ぼう!」という愛犬の言葉を、
「今辛いから後で」なんて返すようでは、それは言ってしまえば虐待だ。
人間より先に亡くなる動物にとって、「今」はとても大切だ。
「あとで」はもう30日後くらいになっているかもしれない。

こんなにも人間を慕ってくれる動物を、大切にしたい。

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