見出し画像

お日様の詩(2021)

お日様が死んだ
実感など無いのだ
友の声が電波にのって
週末の夜を埋めてゆくが
私も友も笑っているのだ
友の穏やかさに眼球が震えるが
泣けずにいる
お日様の佇まいの
沸いた歓声ばかり
細めた目ばかり
笑い皺ばかり
思い出すのだ

隣町のデパートで喪服を新調した
お似合いです 綺麗に着れています
透けないですし 衿元も明きすぎなくて
夏は涼しく 冬はあたたかい下着を入れて
これから寒くなりますから
そんな日はコートを羽織って

販売員は母親と同年代だろうと
お日様と同年代だろうと
まだまだ若くて お元気で
お子さんたちも自立されて
まだまだ凛と働いて
こうした悲しみも
続く日々の喜びも
若い人たちの葛藤も
歳を重ねた人たちの躊躇いも
やわらかく受け入れて
ねぎらって 背中を押して 見送って

悲しいことがあっても 朝の珈琲は美味しい
ごめんなさい ありがとう
でも ごめんなさい

嗚呼 でも 命を呼ぶのだろう
痛いほどに生を噛み締めるのだろう
お日様が消えた色やにおいをうつし合いながら
どこへもゆかないで
からだをだいじにして
あたたくしてねむって
嗚呼 でも いかないでお日様
まだいかないでよ
また笑ってよ
お日様の詩
お日様の詩


*+*+*+*+*+*+*+*+*

20211023

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?