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着彩制作過程

こんにちは、日本画科です。

日本画科では、主に石膏デッサンと静物着彩を毎日制作しています。芸大の一次試験がデッサン、二次試験が着彩(静物や人物)なので、その対策として行っています。しかし、構成課題等が出題される私大入試でも、描きたいものを表現するためには基礎的な描写力が必要です。的確な形がとれる力、しっかりとものを観察する力、それらを身につける上で石膏デッサンや静物着彩は私大を目指す人たちにもとても大事な課題です。今回は、その着彩の進め方をご紹介しようと思います。

今回使う道具

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・透明水彩セット。ホルベインの基本色セットに、鮮やかな色はクサカベの絵の具を足しています。パレットの色数や種類は人それぞれ。
・筆。タチビでは水含みが良くて筆先のきく削用筆(さくようふで)をおすすめしています。
・チューブ胡粉。ハイライトの白など、描きおこす時に使います。また、混色に使うとやわらかい色が作れます。

1.あたりどり

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・筆圧は弱く、やわらかく描きます。形が違った時にすぐ消せるようにするためです。
・大きな明暗をつけて光の方向がわかるように描きます。
・大小関係、構図を確認しながら進めます。
・描きだしの鉛筆は3Bくらいが良いと思います。鉛筆が濃すぎると絵の具に響いて黒ずんだりしやすいので、少し明るめ(硬め)の鉛筆で描き進めるのをおすすめします。

2.質感を描く

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・鉛筆は2B~2Hくらい。紙風船は軽くて薄いものなので、絵の具は薄塗りで描くと良いでしょう。そのため、デッサンをしっかりしておくと質感が表現しやすいです。紙のしわの形などしっかり表現していきましょう。
・カラーボールのように黄色いものは鉛筆の粉で絵の具が濁ってしまうことがあります。そのため、鉛筆は硬めのものを使って明るく描くときれいに描けます。
・影にあたる部分は、ティッシュなどでこすって鉛筆の粉が浮かないようにしておきましょう。
・接点の濃さの違いや、影の付き方も良く観察しましょう。

3.塗り始め

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・塗り始めはざっくり。全体を見ながらバランスよく塗っていきます。強く見える部分、弱く見える部分のバランスを崩さないように。
・質感によって絵の具の強弱をはじめからつけていきます。紙風船は薄く塗り重ねていくイメージ。カラーボールは透けないモチーフなので、しっかり絵の具を溶いて紙の目をつぶすように塗ります。この時影側の色が濁らないように、暗くするというより、にぶくするイメージで色をつくると良いです。胡粉や白っぽい絵の具を混ぜると、彩度(鮮やかさ)が落ちてにぶく(やわらかく)なります。デッサンの時にティッシュでこすった部分が彩度の低い部分にあたることが多いです。
・紙風船は反対側の色がうっすら透けているので、よく観察して色をのせましょう。白い部分は思ったより白くないので、明るく見すぎないように。モチーフの中で一番白いところは、だいたいの場合ハイライト(このモチーフだと青い石の光っているところ)の白です。

4.描き込み

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・モチーフによって絵の具の濃度(水の量)を変えたり色々と工夫しながら質感を描き分けていきましょう。
・カラーボールや石のハイライトは、後で胡粉の白で描きおこすことが出来るので、いったん塗ってしまって構いません。逆に、紙風船は白で描きおこすとビーチボールのような質感になってしまうので、明るいところは慎重に、紙の地を残しながら丁寧に進めてください。
・全体に色がのったら、この段階で鉛筆の線(画面の汚れや輪郭に残った線)を消すのをおすすめします。そうすると、輪郭線がシャープになったり、白い背景とのぶつかりもきれいに見えます。

5.完成

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・仕上げに、石やカラーボールのハイライトの白を胡粉で描いていきます。
・モチーフの見え方が本物と合っているか最終確認しながら進めましょう。一番強く見えるもの、弱く見えるもののバランスが合っているかどうか。白い背景に対してのシルエットの見え方もよく見比べましょう。
・画面の汚れを再度消して完成です。

最後に

着彩は、デッサンも含め人それぞれやり方が異なります。色に入った時に、自分が塗りやすいデッサンをすることが大切で、デッサンのやり方に正しい正しくないは無いと思います。まずは一つの参考としてこちらを見てもらい、最終的には自分の描き進めやすい描き方が見つかるように沢山経験を積んでいきましょう。
そして、一番大切なのは描き方よりも観察です。じっくり観察し、モチーフの良さを自分なりに沢山見つけて、それを画面に表現していきましょう。


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