見出し画像

犬と少女

 往年のロリ写真集のタイトルみたいだな。残念ながら、内容はそういうのと違う。期待させてすまんね。

 コロナ禍の以前の話である。
 当時、犬の散歩は、毎度同じルートではなかった。思いつくままに歩き回り、時間もかけていた。かなり遠くまで出向くこともあった。

 そんなある日、バイパス沿いの広い歩道を犬と歩いていたら、脇から同じく犬連れの少女が現れた。時間は午後の3時ぐらいだったろうか。彼女は学校から帰ったあとらしく制服姿で、中学生か高校一年生ぐらいに見えた。

 散歩中に犬の飼い主と出会うことはけっこうある。そういうとき、高い確率で挨拶をされる。みんな優しそうだし、犬好きに悪いひとはいないというのもうなずける話だ。但し、プーチンは別。

 犬を散歩させているのは、中高年以上がほとんどである。職業柄、綺麗な人妻と出会えたらなどと妄想し、書きあげたのがこの作品。

 

 と、ちゃっかり宣伝。

 さて、くだんの少女であるが、飼い犬は小型犬で、パピヨンとかそんな感じの犬種だったと思う。そして本人は、思わず足を止めてしまったほどに可愛らしかったのである。

 制服姿の美少女が犬を散歩させるなんて、漫画や映像作品でなら目にしても、現実には存在しないと思っていた。実際、散歩で出会うのは、オジサンオバサンばかりだったし。
 ところが、意外にも実在したのである。夢か幻か、はたまた地上に降りた天使かと思ったね。いや、マジで。

 その子の犬とウチの犬が、鼻を突き合わせて匂いを嗅ぎあう。それが縁で、私は少女と言葉を交わした。何を話したか忘れてしまったが、彼女はずっとニコニコしていて、性格も抜群にいいと感じられた。
 別れたあと、私は何度か振り返った。少女と犬はすぐに見えなくなったけれど、妙に名残惜しかったのである。

 その後も、同じルートは何度も歩いた。しかし、少女と再会することはなかった。あれは1回こっきりの、至福のひとときであった。

 あの子は本当に天使だったのかもしれない。そんなことを考えながら、今日も私は犬の糞を拾う。