Intellectual Giftedness - 才能についての科学 #7

過度激動 - 嵐のような内的宇宙

 天賦のギフトが高度になればなるほど、その人生は試練に満ちたものになると言えるかもしれない。普通の人にとっては気にも留めないような小さな刺激に対して、ギフテッドは時に大げさなくらいの大きな反応を示す。このような、高知能の子供たちがしばしば示す、刺激に対する並々ならぬ鋭敏な反応を「過度激動 (Overexcitabilities: OE)」と名付けたのが、ドンブロフスキだ。

 ドンブロフスキは、OEを次のように5つに分類した。

精神運動性OE:

 精神運動性OEは、並外れて興奮しやすい神経系から生じる。この性質を強くもっているギフテッドは、非常にエネルギッシュで活動的である。一か所に留まってじっとしているよりは行動することを好み、情熱的で、早口で話すことが多い。学校や家でも落ち着きがなく、常にお喋りをしているような子供である。感情的に昂っているときには、衝動的な行動や、まるで強迫症のように「やり過ぎてしまう」ことがある。仕事に対してはワーカホリックと言われるほど集中する。体系立てて業務をこなすことを好み、同僚に対しては競争心を抱きやすい。ギフテッドに対する理解に欠ける教師や心理士などからは、ADHD (多動性注意欠陥性障害) と誤診されやすい特性である。

感覚性OE:

 感覚性OEを持つギフテッドは、五感 (視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚) からの刺激に対して際立った繊細さを示す。感覚を伝える神経系が発達しているために、普通の人が気にならないような刺激に対して、快や不快といった反応を強く示す。絶景に涙し、誰も気に留めないような路傍の小花を愛で、風の声を聴くような感性とでも言おうか。音楽、文学や美術などの才能を示すことが多く、いわゆる「芸術家肌」の持ち主を言う。このOEの持ち主にとって、世界は驚嘆すべき刺激に満ちたものであるが、しばしばその刺激は強くなり過ぎ、彼らを圧倒してしまう。そんな時には、自室で好きな音楽や芸術に一人で没頭しているのかもしれない。

知性OE:

 知性OEを持つギフテッドは、真実を理解することに対する情熱や知識欲が強く、物事を分析することを好む明晰な頭脳を持つ。欧米などで選抜されるギフテッドは、この知性OEを指していることが多く、いわゆる「賢い子」と捉えられる性質である。好奇心が強く、よく本を読み、優れた記憶力をもつ。また、ひとたび興味をもったものがあれば、粘り強く、解決に向けて長期的に努力することができる。もちろん、そのアプローチもよく洗練されている。周囲の出来事に対する鋭い観察眼を持つのみならず、「考えること」それ自体について思いを巡らせたり、世界の成り立ちや道徳といった根源的なものに対して執着したりする。年齢不相応にも、「戦争」や「実存」といった社会問題や哲学に関心を示すような、大人びた子供がいたら、それは知性OEのためかもしれない。知性OEの強いギフテッドの思考回路は非常に自立していて、彼らの「頭の回転」に追いつかない周囲の人々に対して、しばしば否定的で不寛容な態度を示すことがある。また、自分が考え事に没頭しているときに、それを邪魔されることに耐えられない。

想像性OE:

 想像性OEの持ち主は、「おとぎの国の住人」と揶揄されるような想像力を示す。物語を創作したり、隠喩を用いたりすることを好む。前日に見た夢の内容をよく覚えており、時に現実と想像の区別を間違える。仮想の世界に対する強いリアリティを感じているため、しばしば現実の世界から逃避し、空想に籠ってしまうことがある。創造性OEに富んだギフテッドにとって、学校は何事もきっちりと決められすぎており、単調な授業は非常に退屈である。授業をそっちのけで物語を創作したり、絵を描いていたりする子がいたら、それは想像性OEのためかもしれない。また、彼らの枠に囚われない発想力は賛美され得る能力であるが、それを上手く他者に伝えるためのコミュニケーション能力が不十分にしか発達していない場合には、社会生活に対してフラストレーションを抱きやすいといった問題がある。

感情性OE:

 感情性OEは、両親によって初めに気づかれることが多い。感情の振れ幅が大きく、何事に対してもドラマチックなほどの反応を示す。ちょっとした出来事に対してすぐに赤面し、ストレスに対して腹痛などの身体反応を引き起こすことが多い。癇癪持ちで扱い辛い反面、実のところは他者に対して強い愛着や共感を抱いている。このOEが特別に強いギフテッドは、他人の感情をリアルタイムに読み取ることも出来るという。彼らにとって宿題や家事手伝いなどはあまりにも些末なことであり、子供時代は自分の感情をコントロールすることで精いっぱいかもしれない。

 このようなOEのうち、どれをより強く持つかについては個人差が大きい。また、強いOEを持つギフテッドほど日常生活は強烈な体験となり、感情の起伏が大きく、浮き沈みの激しい毎日となる。それでは、このような嵐のような内的な宇宙は、ギフテッドの人生に対してどのような作用を示すのか?次章では、ドンブロフスキが提唱した積極的分離についてみてみよう。

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