或る先導たち―三輪山 登拝記―
旅に先導があるのは、心安まるものだ。
数年前、奈良へ行った。修行のためだ。
春日大社を詣で、神様やご神木と会話を交わし、
「明日、三輪山を登拝させていただきます。」
登拝の無事をお願いした。
地図はあるものの、初めての三輪山である。
加えて、御年六十うん歳の母も共に登る。
登拝の途中、母がくたびれやしないか。怪我はないか。
山中で迷い、遭難したらどうしよう。
不安要素はたくさんあったが、その晩は三輪駅近くのゲストハウスに宿をとった。
焼き鳥屋のカウンターで夕飯を済ませていると、隣に女性客が座った。
聞けば彼女も明日、三輪山へ登るという。
「奈良に来る予定はなかったんです。でも、なぜか今日予約していた所がキャンセルされていて。」
とんぼ返りも癪だから、三輪山を登拝して帰ろうと思った。
あすこは本当に良い山ですよと、彼女は語った。
登拝経験ありという女性に不安を打ち明けると、なんと同行してくれるという。
ここから先は
822字
/
2画像
¥ 300
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?