TAWの事業内容を見て、率直な感想と僕の思い

まえがき

以前、こんな記事を作った僕だからこそ、語らなくてはいけない内容であると思っている。

TAWのHPと、前回の記事見て、それを今回の記事で擦り合わせて現時点での結論を出してみたい。

TAWのHP

事業内容

1.引退競走馬の利活用促進や養老・余生の機会拡充等に関する事業
2.馬術や乗馬の普及、馬文化や馬事の振興及び馬の多様な利活用促進等に関する事業
3.引退競走馬の一時受入れ施設等の運営等に関する事業
4.引退競走馬を始めとする馬のウェルフェアの促進等に関する事業
5.馬のいる場所づくりや馬産業の人材養成等に関する事業
6.引退競走馬に関する海外の活動の情報収集等の事業
7.前各号の取組みに資する競技会等の開催及び施設の運営等に関する事業
8.その他この法人の目的を達成するために必要な事業

TAW HP 事業内容 より

こんな風に記載されている事業内容。
もちろん書かれていることの全てが思いどおりに出来るならば良いけれど、世の中そう思い通りにはいかない。この事業内容のなかで、僕が疑問に思うことを書いていく。

引退競走馬の利活用促進について

引退競走馬の利活用促進や養老・余生の機会拡充等に関する事業を行うと記載されていて、HPにはこの文章がある。

TAWでは、引退競走馬に関わる事業として、養老・余生環境の拡充と乗用馬への転用を中心としたセカンドキャリア促進を2本柱とし、日本で馬たちがいる場所が限られていることを踏まえ、引退競走馬を始めとする馬たちの多様な利活用を支援しています。

TAW HP より

回りくどい説明は抜きにして、本音を言ってしまうけれど、引退競走馬が肥育場へ行き、食肉処理されているのは事実だ。

もっと正直に言えば、恐らくファンが知りたいのはセカンドキャリアどうこう言われる馬よりも、そう言われない馬。すなわち「行方不明となった馬」のことを知りたいはずだ。

そして、僕は「食肉処理」というのも「多様な利活用」に分類されると思っているので、この機会に「引退競走馬は食肉処理されている場合もあります」と、伝えることも必要だと考えている。
そう伝えないでセカンドキャリア拡充を訴えていたら、事実上今の生産頭数で全ての馬の余生・セカンドキャリアは保証出来ないからこそ、生産頭数の削減を求められる流れになるのは明らかで、そうなったならば競争力の低下に繋がると考えている。

今、日本競馬の馬が国際的なレースで勝って強さをアピールしているが、その理由はアメリカやイギリスのサラブレッド生産頭数が減少しているからかもしれない。
この辺りは結論が出ないからこそ、悩ましいところではあるけれど、この問題における僕なりの結論としては

セカンドキャリアや養老を支援すると言っても、どこまでやるの?」という話。
それが全く見えてこないし、全ての馬の余生は保証出来ないはずだ。繁殖に上がっても成果が出ない馬は牧場から出されるケースもある。何をどこまでやるか?が見えてこない。
そして、肥育・食肉利用に悪い印象が付くような情報操作は辞めてほしい。今までマトモに触れようとしてこなかったからこそ、こういう団体を作ったのならば、触れてもいいはずだ。情報を明らかにしたその上で、皆に選ばせる・考えさせるやり方だってあると個人的には考えている。

引退競走馬の一時受入れ施設

引退競走馬の一時受入れ施設として、栃木県・宇都宮市にTAW宇都宮事業所を開設いたしました。この施設には、セカンドキャリア(乗用馬への転用等)となる次の活動場所に移動・移籍する前に「30日から50日程度」、休養や体調管理を目的として、引退競走馬たちを一時的に預け入れることができます。また、馬のコンディションや心身の状態などを確認のうえ、簡単な初期のリトレーニングを行うことがあります。
施設・設備面や馬房数などから、当分の間、受入れ頭数の上限は調整させていただきますが、中央競馬・地方競馬いずれの引退競走馬も利用でき、競馬サークルの支援のもと、飼養管理費等はTAWが負担いたします。(入退厩の際の馬輸送費は、利用者負担)
また、引退競走馬たちの受入れ先について、乗馬クラブや大学馬術部等に関する情報提供などの対応を検討しております。
宇都宮事業所には、緊急時のシェルター的な役割もあるため、上記の利用可能日数内に次の場所に移動が可能な引退競走馬たちが受入れ対象(利用対象)となっており、長期の治療が必要な場合、本格的なリトレーニングを行いたい場合などには、他の施設のご利用をご検討願います。なお、施設利用等に際しては、利用の申込み手続きや利用条項などがありますので、詳しくはTAWまでご連絡いただきますよう、お願いいたします。

TAW HP より

「宇都宮事業所には、緊急時のシェルター的な役割もあるため、上記の利用可能日数内に次の場所に移動が可能な引退競走馬たちが受入れ対象(利用対象)となっており、長期の治療が必要な場合、本格的なリトレーニングを行いたい場合などには、他の施設のご利用をご検討願います。」

と、掲載されている文章を見て気になったのは「宇都宮営業所には」という言いまわし。もしかすると、他の場所にも事業所が出来る計画があって、そこでは事業内容の一部でもある「馬のいる場所づくりや馬産業の人材養成等に関する事業」と並行して、引退競走馬の受け入れ体制を作るのかもしれない。
人手不足はどの業界にも共通して言えることで、馬の仕事も特殊な一面がある。車を運転して公道を走らせるためには免許が必要なように、馬の仕事をやる前に多少なりとも学ぶことが出来れば、人にとっても馬にとっても良いことだと思うし、その為に引退競走馬を使うことは、使える場所を増やすという意味で言えば、決して悪いことじゃないように考えている。

さらに、動物愛護法やアニマルウェルフェア関連の諸制度への対応を踏まえ、馬のウェルフェアに関する理解促進、普及活動等についても、馬に関わる公的な団体等と協力して、新たな資格制度なども視野に入れて、取り組んでまいります。

TAW HP より

その取り組みが、この文章内にある「新たな資格制度なども視野に入れて」に繋がってくるのではないか?と思っている。
一体どうなるのか?は分からないけれど。

ただ、読んで思ったのは「引退競走馬たちの受入れ先について、乗馬クラブや大学馬術部等に関する情報提供などの対応を検討しております。」とあるけれど、情報を提供して受け入れ先が決まった場合、その後どうなるのか?までTAWは責任を持つのか?持たないのか?というところ。
TAWが紹介して、乗馬クラブや大学馬術部などに行った馬は、例えば報告義務があったり、年に1回はTAWの職員による実馬検査があります(競技会に参加した馬はその際に確認する)。とかならば「乗用馬への転用を中心としたセカンドキャリア促進」という理屈も分かるけれど、それがハッキリと決まってなければ、扱いにくいので売却しました。後は知りません。ってことにもなりかねない。
例えば、TAWに入厩したものの受け入れ先が見付からなかったケースを想定してみる。金銭のやり取りが発生しないならばそこに出さないというやり取りが馬主と乗馬クラブ等のやり取りで存在し、じゃあ肥育業者に引き取って貰うわ。というのが起きる可能性もゼロでは無いと考えている。もちろん、大事に使ってくれるならば無償提供しますよという人もいるはず。だが、無償提供されたとしても、売却されるケースというのも想定しなくてはいけない。

もちろんこの辺りは、表に出る話では無いだろうから何かしらの規制を設けるんだろうけど、果たしてどうなるんでしょうか。

この件について現段階の結論は、前回のnoteで僕は「TAWの取り組みは引退競走馬に関する諸課題の解決にならない」と書いたけれど、評価は一旦保留にする。ただ、前項でも書いているが「どこまでやるの?」と思っていることは変わらない。詳しくは最後で触れるが、将来的なビジョンが今は見えてこない。実際に利用する人がいないと分からないけれど。

馬のウェルフェアの促進

すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。

環境省 動物愛護管理法の概要 基本原則 より

アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながる。

農林水産省 アニマルウェルフェアについて より

こう定義されている文章を見ると、競馬は非常に曖昧な立ち位置であるように思う。
だからこそ「みだりに動物を虐待することのないようにする」の、みだりという言葉が示す範囲には個人差がある。だからこそ、競馬を含めて馬のウェルフェアを普及させるという取り組みはいいと思う。
今の時代は、競馬は動物虐待だと言われてしまう世の中だと思っているし、馬の順致も虐待になるのではないか、そう考える人が増えていてもおかしくはないので、出来る限りの情報を提供し、クリーンさをアピールしなくてはならないと感じている。
そういう意味ではこれに反対するつもりはない。

まとめ

以前書いた記事でも触れているが、全ての馬にセカンドキャリア・余生を過ごさせることは事実上不可能だと僕は思っている。
それは何故かと言うと、馬は肉として人間や動物に利用されている一面もあるから。肉以外でも、化製利用がされているのは事実だ。
その需要が無くならないのに、セカンドキャリア・養老を支援するということは、馬の食肉利用・化製利用を否定していることになり、馬を食べる・馬を利用するのは変だという価値観を大衆に植え付けるような気がしている。
セカンドキャリア拡充の支援をするならば、それと同じように、食肉利用・化製利用されていることにも触れて、そういう道もあることを広く示す必要があるのではないかと考える。そして、食肉としての利用が否定されるものであってはいけない。これを強く望む。

馬のいる場所づくりや馬産業の人材養成等に関する事業については、反対しない。
人材養成は、現在だとひだかホースフレンズや、BTC、JBBAの研修コースがあるけれど、全て北海道。そういう意味では各都道府県は無理だと思うが、地域ごとに馬のいる場所を作って、そこで馬について学ぶことも出来れば、馬の利活用に繋がるし、結果的に競馬の普及にも繋がると考えている。

ウェルフェアの促進についても、反対しないけれど、競馬の置かれている立場を明確にする必要があるように思う。動物愛護法では産業動物に区分されている馬だからこそ、産業動物としての認識を世間に植え付けていかないと、競馬が嫌われる理由になってしまうと想像する。それがウェルフェアの促進という意味でもあると個人的には思っている。

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