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薬を上手く使うための考え方

多くの方にとって、”病気になる”、のイメージは”風邪をひく”のとほぼ同じではないでしょうか。

そして、薬は”病気を治すためにあるモノ”ではないでしょうか。

普段の健康な状態があって、何らかの症状が出たときに病気になった、と感じる。その代表が”風邪をひく”だと思います。

そして、その症状を治すために薬を使う。

でも、もしそうなら、もっと薬を活用するために、少しだけ考え方を変えてみて欲しい。

今日はそんなお話をしようと思います。

病気と症状

風邪をひいたときをイメージしてください。のどが痛い、咳、鼻水が出る、頭痛がするし、熱も出てきた…

どの程度の症状が出たら受診するか、というのは人によって違うと思いますが、おおよそ上記のような症状が出て、つらいと感じたら受診しますよね。

風邪といっても感染症、甘く見てはいけません。無理を続けると気管支炎や肺炎を起こすこともあり、そうなると、より症状が重く、回復までに時間がかかるようになります。

このように症状が出てつらい状態、これが病気のイメージだと思います。
だけど、症状が出ない病気もある、というのをご存じですか?

例えば、有名なところでいくと、がんです。がんを取り上げた物語は沢山ありますが、その多くが、『なんだか体調が悪い状態が続いていて、受診してみたらがんだった。検査してみると、すでに体中に転移していて余命数か月』という設定です。

これは実際にそうで、がんは症状が出るころにはかなり進行している場合が多いのです。逆に、初期には症状はほぼないため、がんを初期段階で見つけるためには定期的な検診を行う必要があるのです。

また、日本ではあまり身近には感じないかもしれませんが、エイズのようにウィルスに感染した後、10年くらい症状が出ないという病気もあります。発症すると免疫不全に陥り、治療しなければ死に至ります。

これらはいずれも死に至る病気ですが、症状がでないことがある病気です。

正確には症状が出ない病気、というより、症状がなくても病気であることがあるので、病気=症状があること、ではない、ということです。

実は沢山ある不治の病

医療が発展した現在では、一般的に馴染みのある病気の多くは治療薬があって、受診して薬をもらえば治るものと思われがちです。

だけど、実際には一時的に薬を服用するだけでは完治しなかったり、使い方を間違えるとむしろ悪化を招いたりすることがあります。

例えば喘息という病気。気管支という空気が通る管に炎症が起こり、管が腫れて狭くなることで、呼吸がしづらい、咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューいう音)などの症状が起きます。

この治療には炎症を抑える薬と、気管支を広げる薬が組み合わされた吸入薬が主に使われます。

薬の効果で一時的に症状が楽にはなるのですが、症状がなくなった後、薬をやめると炎症が徐々に進行し、場合によっては最初よりもひどくなってしまうこともあります。

そのため、症状がなくなっても薬を続けて炎症を抑える必要があるのです。
(※医師が症状などを考慮して、休薬となる場合もあります。)

また、飽食の時代に現れた生活習慣病。例えば高血圧の方なら、薬を飲みながら毎日血圧を測っている方も多いかと思います。

血圧は基準値内に入ったのに、薬をまだ続けなさいと言われ、おかしいな?と思ったことがある方もいるかもしれません。

高血圧の状態が続くと、脳や心臓、血管といった循環器系に負担がかかるので、血管が詰まったり破裂したり、臓器が障害を受けたりしやすいことがわかっています。

そこで、血圧を下げる薬を服用します。血管に作用して血管を広げたり、血圧を上げる指令を出す部位に働きかけて指令を止めたりします。

薬の服用をやめると、薬はいずれ身体から出ていくので、いつの間にか血圧が高い状態に元通りになってしまいます。だから結局、続けなくてはならないんですね。

こうした病気は、実は何故起こるのか、原因が正確にわかっていないことも多く、根本的な治療薬がない場合も多いのです。

完治が難しいという意味で、これらの病気は”不治の病”といえるでしょう。

薬というサポートアイテム

ここまで、症状がない病気もあり、薬を服用しても治らない病気もある、ということをお話しました。

ではそれを踏まえて、薬って何なんでしょうか?

あくまで持論ではありますが、私は薬を生活をサポートするためのアイテムであると思っています。

例えば、どんな仕事でもPCが必需品となった昨今、長時間同じ姿勢を維持することで起こる肩こりや、それに伴う頭痛、目の疲れといった症状に悩まされる人は少なくないと思います。

大きな病気でなくても、痛みや疲れが引き起こす症状は、生活の質を著しく低下させます。

集中力が低下してやる気も低下。仕事の能率も下がるので、もっと頑張ってさらに無理をして…といった悪循環に陥ることもしばしば。

そんな時、薬を使えば疲労の回復を手伝うこともできます。症状を改善するだけではなくて、症状がひどくならないようにもできるわけです。

また、例えば先に挙げた喘息では、症状が出なくても薬を続ける必要があると言いました。

確かに、一見、受診する手間や毎月の医療費を考えると、症状がないのに続けるのはなかなか大きなコストです。

だけど、放置するとひどくなるという前提があるとどうでしょう?

薬を服用していないと、次にいつ大きな症状がでるかわからない。次に症状が出たときは、もっとひどいかもしれない。

…ちょっと不安になってきませんか?(笑)

でも逆に、正しく薬を服用していれば、症状がでない状態は症状を抑えている状態と捉えることができます。

仮に悪化しても、悪化を最小限に抑えることができるし、早めに対応もできる。

そう、薬を正しく服用することは、安心を買うことにも繋がるんです。

だから、薬は病気の時(=症状がある時)だけ使うモノ、ではなく、ちょっと考え方を変えて、サポートアイテムとして上手く使いましょう。

もし、「ずっと使ってると副作用が心配」とか、「こういう時に使って大丈夫?」とか、不安なことがある人は、薬剤師にご相談ください。

持てる知識のすべてを尽くして、サポートしてくれますよ。



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