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元ボンボンの地団駄vol17

結局、シューズメーカーとは何の交渉も出来ず、150万円は水の泡となり、うつむき加減の毎日が続いた。

そんな僕の会社もとりえず輸入販売で食いつなぎながら、また父の会社に助けてもらいながら(どこまでもボンボンなのだ。。。そうバカボンなのだ)、なんとか回していた。そんなある日、ビッグチャンス到来!

僕はこの先、この「ビックチャンス到来!」を何度か経験する。その第1回目と言っても過言ではない神様からのプレゼントを手にする

ある日、会社にスーツを来た男性と女性が訪ねてきた。

某百貨店の営業マン。どうやら、某プロ野球球団との話で関西の小学校に野球のグローブをプレゼントする企画があるというのだ。そして、ある方から紹介されてここに来たというのだ。そう、本当は父を訪ねてきたのだ。そして、偶然にも対応したのが僕だった。

子供用のグローブですね。何校ぐらいですか?

「約1200校です。」

ギョギョギョである!グローブ1200個!!

もちろん、日本で作るとなるとかなりの時間とコストがかかるので海外の工場で作ることになる。1個数千円で卸せたとして数百万円の売上!!いくらで仕入できるか??うまく行けばあの150万が戻せる!!!とテンションが上がるバカボン。するとスーツマンが、、、

「いや、1200校で1校あたり低学年用9個、高学年用9個の18個です。」

目が点。バカボン目が点。。。

ん???1校18個で1200校分???1200x18???1200x18=

21600個。

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!でも、僕は至って冷静に、、、

なるほど、、、と。

あかん、笑ったらあかん!ここで笑ったらあかん!と思えば思うほどにやけてしまう。。。

そらそうです。21600個です。これを1000円でつくって1500円で卸したとしても利益が1000万円です!!!!!!!これを笑わずに話を進める。そう、これが出来る男!!

分かりました。とりあえず、工場にも確認を取ってご連絡させて頂きます。

お任せください!と

スーツマンとスーツウーマンが帰った後、僕のニヤケは止まらない。ただ、肝心な事をバカボンは忘れている。

どこに20000個を超えるグローブを作ってもらうの?勿論、ツテは無い!とりあえず関西風中国人に相談。。。すると、ん?台湾に社長の知り合いがいてて、そこは日本でも有名な某野球メーカーの工場を中国やタイで展開しているというではないか!!早速、父に詳細を伝えると、、、

「ピーターに言えばいい。アメリカで会ったことあるやろ」と

ピーター?ん?ピーター???

そう、僕はアメリカ留学時代に何度か展示会に同行したことがある。そこで出会った、中国人が漫画とかでしゃべりそうな感じの日本語をしゃべる台湾人がいた。それがピーターだと思いだした。ピーターは父の古くからの友人で昔よく父が出張で台湾に行っていたのはこのピーターとの商売の為に行っていたのだ。

バカボン、ラッキー!

早速、ピーターに連絡をすると、

「アーー、タカシさん、オゲンキ?グローブ?ダイジョーブよ。モンダイナイよ。オトーさんもオカーさんもゲンキ?」

なんやろ。。。全然信用出来へん。。。ほんま大丈夫か???そんな不安を抱きながら、話はトントン拍子で進んでいく。なんせ僕は初めての商売で約200万円を一瞬で無くした男である。でも、あの経験が僕に海外企業との商売をする時のリスクや慎重になる事を学ばせてくれた。でも、今回の商売は父の旧知の友人の会社と某有名百貨店との商売。おそらく慎重になるのは僕ではなく、台湾の会社と百貨店である。。。

話はどんどん進み、すでに21000個の生産が中国工場で始まっているとの事。検品がてら中国の工場に出向いた。中国に着くと、ピーターが出迎えてくれ、高級車に乗せられ、まずホテルにチェックイン。ゴルフ場に併設された超高級ホテル。これ、すべてピーター持ち。もちろん、ゴルフもしましたし、気分はバケーション。が、この時は百貨店の担当者も同行していたので、あまり弾けることもせず、工場見学兼検品作業をおこなった。検品作業といっても、いくつか抜き取りして汚れやゆがみやプリントミスが無いかの確認。

そう、ここで適当な検品作業をしてしまった事を後で後悔することになる。。。

時は進み、21000個のグローブが日本に到着した。百貨店の意向で数ケースだけ抜き取りで検針作業をしてほしいと言われたので、検針機を持っている知り合いの会社に行き、検針すると、、、

ピー。

ん?もう一回やって下さい。

ピー。

鳴るやん。。。

100個ちかく持っていき数個検針に引っかかる。。。

なんとなく、これはマズイ。。。と直感的に思った。。。ピーとなったグローブを解体すると中の芯の部分に鉄のくずというか糸のようなモノが見つかった。針という訳ではないので問題ないだろうと思い、それを伝えると。。。

申し訳ないんですが、全量検品して頂けますか。小学生に配るモノなのでもしものことがあると大問題になってしまいます。と。

こうなったら仕方ない!とは言っても検針機というのはそんな誰でももっているモノではない、、、もちろん、結構なお値段がするし、納期も押し迫っている、、、バカボンは考えた、必死に考えた。。。その結果、ハンディ検針機というモノがある事を知る。とにかく、早く検針作業をしないといけないので、知り合いに片っ端から連絡をして、ハンディ検針機を4台用意して、21000個のグローブを地道に1個づつ検品した。朝から晩まで検品した。

1週間半後、なんとか終わらせて納品完了!

翌月、会社の口座に数千万円が振り込みされ、そこから仕入代金や輸入にかかった経費の支払いをしても、まだ相当額が残った。

そう、僕は完全に舐めてしまったのです。シューズメーカーに痛い目に合わされたことなんてすっかり忘れて、、、

こんなに簡単に数千万円が入ってくる。

バカボンは商売を完全に舐めた状態で進んでいくのである。。。



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