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孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ④「形」篇 ~守りを固めろ~

形篇では、

「まずは守備だ!」

「地味に勝て!」

といったことが語られています。



孫子は、いきなり攻めることを考えたりはしません。

守りを固めることの必要性・重要性を、知っておきましょう!



守りの態勢を作れ!

「先ず勝つ可からざるを為して、以て敵の勝つ可きを待つ。」

まず敵が自軍を攻撃しても勝てない態勢を作り、その上で、敵が弱点を露呈し、自軍が攻撃すれば勝てるようになるのを待ち受ける。

まず作るべきは「守りの態勢」だ。

孫子はそう言います。



卓球をするときに、まず「攻めること」を考えちゃいがちじゃないですか。

「よーし!とびっきりのフォアドライブ、お見舞いしてやるぞー!」

みたいな。



しかし、こんな戦い方をしていては、孫子に怒られてしまいます。



相手に隙が無ければ、全く戦えません。

強い人は、相手が打ち気マンマンなのが分かると、的確に打たせない戦術を取ります。

なので、打ちたがりの人は、ちょっとでも上手くいかないとすぐに負けてしまいます。

世界ランク100位台に、強烈なフォアドライブを打つ選手はたくさんいますが、水谷選手には勝てないんです。



そう、まず考えるべきは「守ること」なのです。



守るためには、相手のコース取りを把握する必要があります。

どのコースに打ってくるかが予測できていないと、ブロックはできませんからね。



バック前に順横サーブの横上を出したらどう返してくるか。

横下はどうか。

逆横にしたらどうか。

フォア前やミドル前はどうか。

ロングサーブはどうか。



フォア前にフォアハンドでストップをしたらどう返してくるか。

バック前やミドル前はどうか。

バックハンドにしたらどうか。

フリックやツッツキならどうか。



クロスでバック側に打ったら、どう繋いでくるか。

ストレートはどうか。

フォア側、フォアミドル、バックミドルに打ったらどうか。



強打はどのコースに打ってくるのか。

フォア側から、ミドルから、バック側から、それぞれどこに打ってくるのか。

バックドライブはどこに打ってくるのか。



など、とにかくいろいろなことを試して、相手の癖をひとつでも見つけたら、それを多く使うのです。

こうして相手のコース取りがなんとなく分かってくれば、守りの態勢はオッケーです。



さて、来るコースが分かっているなら、攻撃できますよね!?



もし甘いボールが来ても、それが来ると予測できていなければ、対応が遅れて強打はできません。

逆に、フォアクロスにフリックが来ても、それが来ると予測できていれば、狙い打つことができます。



攻撃ができる条件は、

「甘いボールが来ること」

ではなく、

「なにが来るか予測できていること」

なんです。



つまり、

「守りの態勢が整う」

ということは、

「攻めの態勢が整う」

ということなんです!



水谷選手って、第1ゲームでは様子を見て、だんだん攻めに転じていくじゃないですか。

この「様子を見る」というのはつまり、相手の癖を探しているんです。

そして守りの態勢が整ったところで、攻撃に転じているんです。



水谷選手も、まずは守りの態勢を作ってから、攻撃をしに行くのです。



立派な盾があれば、それで相手を殴打できるのです。

卓球とは、盾で相手を殴るようなスポーツである。

by 星名勇太

よく覚えておいてください。



勝てるかどうかは相手次第

「勝つ可からざるは己に在り、勝つ可きは敵に在り。」

負けないようにすることは自分でできるが、勝つかどうかは敵軍によって決まる。

負けない態勢とは、守備の態勢のことです。

この態勢は、自分の努力で取ることができます。

相手のコース取りを全部予測してしまえばいいわけです。



一方、勝つ態勢とは、攻撃の態勢のことです。

この態勢が取れるかは相手次第であり、自分の努力だけでなんとかなるとは限りません。

いくら良いサーブを出しても、相手が良いレシーブをする確率がゼロにはなりません。

どんなに強烈なフォアドライブを打っても、相手がブロックする確率はゼロにはなりません。



「サーブから回り込んで3球目攻撃だ!」

と作戦を立てることはできても、それが実現できるかは、分からないのです。



なので、

「俺はドライブをガンガン打って勝ちまくるぜ!」

と攻めることばかり考えて、サーブとドライブを究めても、試合で絶対に上手くいくとは限りません。

そして、ちょっとでも上手くいかないと、もうどうしようもなくなってしまいます。



まずは守りの態勢を作り、負けないことがある程度保証されてから、攻めに転じるのが賢明なのです。



また、守備の形式が取れると、精神的な余裕が生まれます。

「多少甘くなっても、まぁいいや。ブロックすればいいんだし。」

という横綱相撲メンタルが手に入ります。



攻撃をしに行くときに、こんな精神的余裕は持てません。

「甘いレシーブが来なかったらどうしよう…」

「ブロックされたらどうしよう…」

というような心配事が、どうしてもつきまといます。

作戦は攻めでも、心は臆病なのです。



悩める現代社会。

守りの態勢を作ることは、自分の心を守ることにも繋がるのです。



地味に勝て!

「勝を見ること、衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非るなり。」

勝因が一般人にも分かる程度のことであれば、優れているとは言えない。

卓球も、素人目にも分かるような勝ち方は、決して優れているとは言えません。



パワードライブで圧倒する勝ち方は、とても分かりやすい勝ち方です。

ただ、この試合ではドライブを打てても、次の試合はレシーブが厳しく来るかもしれません。

そうなれば、パワードライブは打てなくなってしまいます。



分かりやすい勝ち方は、対策も取られやすいのです。



なので、

「自分の得点パターンを持とう!」

というのはあまりよろしくありません。

1つの得点パターンに頼ってしまうと、対策を取られてしまったときに終わってしまいます。



「俺の得点パターンは、バック前に横上を出して、回り込んでドライブだ!」



などと言って自分の得点パターンに固執してしまうと、レシーブが厳しかったときに対応できなくなってしまいます。



馬龍選手に、代表的な得点パターンは無いじゃないですか。

伊藤美誠選手に、代表的な得点パターンは無いじゃないですか。



強い選手は、あらゆる得点パターンを駆使します。

だから相手は、何が来るのか予測できず、対応が遅れてしまうのです。



得点パターンを持っている人は強そうですが、本当に強い人は、あらゆる手を使います。

パワードライブを打つ人は強そうですが、本当に強い人は、パワーは無くてもドライブでコースを突いてミスを誘います。

フットワークで大きく動く人は強そうですが、本当に強い人は、コースを予測して最初からそこにいます。



これをできるのが強い選手であり、これを実行するためには、守りの態勢が必要なのです。

派手な卓球は要りません。

地味な卓球が、勝てる卓球なのです。



戦闘を早まるな!

「敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。」

敗北する軍は、先に戦闘を開始してから、その後で勝利を追い求める。

負ける人は、まず、

「攻めるぞ!」

と覚悟を決めます。

しかしこれだと、甘いボールが来れば打てますが、来なかったときに攻められず、隙を与えてしまいます。

相手だって考えますから、いつまでも同じようなチャンスボールは来ません。

いずれ隙だらけになってしまうのです。



勝つ人は、まず守りの態勢を整えます。

そして、相手の隙を見つけて、はじめて攻撃に転じます。

根拠のある攻撃なので、成功率が高くなります。



相手の攻撃の成功率を下げて、自分の攻撃の成功率を上げる。

これが、強者の戦い方なのです。


③「謀攻」篇 ~戦わずに勝て~【後編】
⑤「勢」篇 ~勢いで攻めろ~【前編】
その0「孫子の兵法とは」

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