見出し画像

孫子の兵法を卓球にフル活用しよう! ⑤「勢」篇 ~勢いで攻めろ~【前編】

勢篇では、

「一気に攻めろ!」

「勢いとタイミングだ!」

といったことが語られています。



勢いがあると、思い切った攻撃ができますよね。

では、その「勢い」とはどうやって作り出されるのか、知っておきましょう!


スムーズに攻めろ!

「衆を治むること寡を治むるが如くするは、分数是なり。」

大部隊を統率するのに、小部隊を統率しているかのように整然とさせることができるのは、部隊編成がしっかりしているからである

大部隊をスムーズに動かすには、組織編成や情報伝達がしっかりしている必要があります。



例えば、フォア前に巻き込みサーブを出すとします。

このとき、50の兵は浮いたツッツキを待ち構えます。

残りの50の兵は、クロスのフリックを待ち構えます。

こうして待ち構えることによって、ドライブという大技術をスムーズに使うことができます。

「浮いたツッツキが来たぞ!」

となってから100の兵が向かっても、完全に手遅れなのです。



例えば、ループドライブを打ったら、ブロックやカウンターが来るので、両ハンドドライブで待ち構えます。

相手のコース取りの癖に応じて、フォアとバック、あるいはミドルに兵を振り分けます。



例えば、フォアハンドをストレートに打ったら、バッククロスを突破されないように、立ち位置をバック側に寄せます。



例えば、ミドルに打ったら、

相手がフォアハンドで打てば、空いたフォアサイドを狙います。

相手がバックハンドで打てば、空いたバックサイドを狙います。



例えば、ナックルサーブを出したら、

相手のバックスイングのラケット面が上を向いているなら、それはナックルと気づかずにツッツキをしようとしているので、スマッシュの準備をします。

相手のバックスイングのラケット面が正面を向いているなら、それはナックルと気づいてフリックをしようとしているので、両ハンドで合わせる準備をします。



このように、

「これを打ったら、次はこの技術とこの技術が配置につけ!」

という編成がしっかりしていると、まるで小部隊を動かすかのようにスムーズに動けます。

技術単体の力に頼るのではなく、連携してスムーズに動く。

これが「勢い」の元になります。



ドライブなどの大技術はバックスイングが大きいので、準備に時間が必要です。

スムーズに動いて、準備する時間が確保できて初めて、大技術を繰り出せるのです。



攻撃のバリエーションは無限大

「凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。」

戦闘というものは、正法で相手と対峙し、奇法で勝利を収める

攻撃の勢いを構成する要素は、正法と奇法の2つがあります。

これを組み合わせることで、攻撃の形は無限に広がります。

どんな相手も、無限の形の攻撃に全て対応するのは困難です。

正奇の巧みな使い分けが、攻撃を成功させるのです。


定石と奇策

まずは、定石と奇策の組み合わせを考えます。

その前に「奇策」とは何か、先に説明しておきます。



奇策とは決して、



サーブをめちゃくちゃ曲げて横入れをするとか。

背面からサーブを出すとか。

「あっ!」と言って遠くを指差して、相手がよそ見をした隙にサーブを出すとか。



そういった、「誰もが予想のつかないような奇術を繰り出せ」ということではありません。



定石でないものが、全て奇策になります。



クロスに打つのが定石なら、ストレートやミドルは奇策になります。

ツッツキが定石なら、ストップやフリックやチキータは奇策になります。



「打たれないようにサーブを短く出す」

のが定石なら、ロングサーブは奇策になりますし、

「相手はロングサーブを返すのが苦手」

なら、ロングサーブが定石で、短いサーブは奇策になります。



短いサーブを続けていて、奇策のロングサーブを使ったとします。

その次の自分のサーブの時に、相手が、

「またロングサーブが来るかもなぁ。」

と思っていれば、もうロングサーブは奇策になりません。

相手が、

「連続でロングサーブは来ないだろう。」

と思っていれば、連続のロングサーブが奇策になります。



しかし、相手の心は読めません。



「僕、人の心が分かっちゃいまーす!」

という方は存分に読んでください。



僕は超能力を持っていないので、短いサーブを出して相手を試します。



もし、相手の対応が遅れたら、それはロングサーブを待っていた証拠。

前のサーブの残像が残るタイプなので、コースをどんどん変えましょう。



もし、相手の対応が遅れなかったら、それは連続のロングサーブは無いと読んでいた証拠。

後に、9-9でロングサーブを2本出しましょう。



このように、定石を基本にして奇策で攻めるのが、ひとつの勝ち方になります。


有形が正、無形が奇

有形、つまり相手に既に見せているものは正法。

無形、つまり相手に見せていないものは奇法。

こういう分け方もあります。



バック対バックの展開が中心になっているなら、



バックハンドをクロスに打つのは、もうさんざん相手に見せているので、正法になります。

バックハンドをストレートに打つのは、まだ相手に見せていないので、奇法になります。



そして、一度ストレートに打つと、それは有形になるので、奇法の性質は薄まります。

何度もストレートに打つと、相手は両ハンドで待つようになり、どちらも正法になります。



そこで今度は、ミドルという奇法を使います。



相手がミドルをフォアハンドで打ってくるなら、それは意識がバック側に寄っている証拠。

がら空きのフォアサイドは奇法に戻ります。



相手がミドルをバックハンドで打ってくるなら、それは意識がフォア側に寄っている証拠。

がら空きのバックサイドは奇法に戻ります。



ある所が正法になると、ある所が奇法に戻ることもあるのです。



回り込んでフォアドライブを打つのも奇法であり、これが正法になる頃には、どこかが奇法に戻っているのです。



このように、相手の意識を観察し、移りゆく奇法を使い続けることで、一気に攻めることができるのです。


同質が正、異質が奇

卓球における同質とは、

「相手の想定と同じ質のボール」

とします。



例えば、相手がドライブを打つと、ブロックで返ってくることを想定します。

なのでドライブに対して、ブロックは同質の正法になります。

カウンターやカットブロックなどをすれば、それは相手が想定していないので、異質の奇法となります。

そして、カウンターを連発すれば、相手も想定するようになるので正法になり、逆にブロックが奇法になります。



同質と異質もまた、流動的なのです。



バック対バックで打ち合うとき、バックハンドはお互いに想定しているので正法であり、バックドライブや緩いバックハンドやカットブロックは奇法になります。

短い横上回転のサーブに対しては、フリックやチキータが正法であり、ストップは奇法になります。

そして、奇法を使い続ければそれは正法になり、正法だったものが奇法になるのです。



ドライブに対して、粒高のブロックは下回転になります。

粒高に慣れていない人にとっては、これはもう訳が分かりません。

粒高のブロックをいくら使っても、奇法であり続けます。

しかし、粒高に慣れている人にとっては、こんなものは正法中の正法であり、もはやカモです。

こういう人に対しては、粒高でバックハンドを打つなどの奇法を使う必要があります。


正で繋ぎ、奇で仕留める

勝ちに行くときには、奇法を使います。

しかし、なんでもかんでも奇法で行けるわけではありません。



ツッツキしかできないときもあります。

ブロックが精一杯のときもあります。

ストレートに打つのが難しいときもあります。



だからこそ、まずは正法の質が大事なのです。

その上で、相手の隙を見つけたら奇法に転じる。

こうした正奇の組み立てが、電光石火の攻撃を生むのです。


④「形」篇 ~守りを固めろ~
⑤「勢」篇 ~勢いで攻めろ~【後編】
その0「孫子の兵法とは」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?